「電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術」阿佐見 綾香
2022/02/19公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
マーケティングの本を集中的に読んでいる中で手にした一冊です。電通のマーケティング担当の方が、商品開発で使っているリサーチの手法をまとめたものとなっています。商品開発とは世の中にないものを作るということですから、非常にハードルの高いものであると思います。例えば、「リサーチで新規性のある結果は出てこない」ということも言われているようです。
この本で紹介している商品開発の流れとしては、商品が抱えている問題や悩み事を整理して、仮説を立てて、その仮説をリサーチで検証していくというもの。著者の主張は、リサーチで仮説を立てるのではなく、仮説をリサーチで検証していくことで成果が出せるということです。
つまり、調べた情報から「次の打ち手」を見つけられなければ、リサーチはしなかったに等しいわけで、仮説をリサーチで検証するから効果的と思われる「次の打ち手」が見えてくるのです。
・伝説のコピーライターとして知られるデイヴィッド・オグルヴィ氏・・・クリエイティブ部門の人の多くは「リサーチに対してアレルギー反応を起こしがち」・・・一方で「しかし私の経験では、これは実際とは反対だ」とも述べているのです(p31)
まず最初に仮説ありきで、仮説に基づいてリサーチしたり、同僚やお客様やお店の人に聞いたりしていきます。このように仮説をリサーチで検証し、ブラッシュアップまたは方向転換して、プロトタイプを作っては、また検証していくのです。
この大元となる仮説をいかに引き出すのか、というのが壁が大きいように感じました。仮説を立てることができるということは、それだけ情報を持っていなくてはいけないし、日頃から問題意識を持っていないと難しいのではないかと思うのです。本書では「なんとなく」の感覚で仮説を出すと表現していますが、仮説の難しさを表現しているということなのでしょう。
著者は新商品開発を開発するときには、競合商品も含めた消費の本質的な価値を探り、仮説を立てるために、会社の従業員や関係者に対面で聞き取り調査をしているという。壁を破るためにはできるだけ多くの情報が必要ということなのでしょう。
・「なんとなくの感覚」で「ターゲット」「セールスポイント」の「仮説」を出す(p67)
商品開発リサーチでいっぱいいっぱいになって、4章以降の市場分析、顧客分析、競合分析は流して読んでしまいました。この本を読んで商品開発は、どんな天才でも、最初からヒット商品を作れるわけではなく、テストをしてみてその結果を見ながら軌道修正していることがわかりました。テストを何度も繰り返すことで天才になれるのです。
電通の仕事のやり方を知りたい方には、ぴったりの一冊ではないでしょうか。成果を求められる商品開発の大変さも伝わってきました。阿佐美さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・YouTubeは、当初は動画を使った出会い系サイトとしてサービスを開始・・・リサーチ結果から、YouTubeは「セールスポイント」を出会い系サイトではなく「動画共有サイト」に特化させるべく方向転換します(p35)
・デイヴィッド・オグルヴィ氏も、すべてをリサーチでテストせよという趣旨の言葉を残しています(p129)
・ファネル転換率を分析し、ボトルネックを見つけていく・・例えば、「商品の認知率が5%→1回は購入してくれた使用経験者が1%→リピート購入者が0.8%(p273)
【私の評価】★★★★☆(83点)
目次
第1章 売れない商品は「ターゲット」「セールスポイント」がズレている
第2章 「ターゲット」「セールスポイント」を絞り込む3つのステップ
第3章 リサーチの実践1 アイデアを形にして検証するリサーチ
第4章 リサーチの実践2 ヒットをつくる「市場分析」
第5章 リサーチの実践3 ヒットをつくる「顧客分析」
第6章 リサーチの実践4 ヒットをつくる「競合分析」
第7章 リサーチの実践5 ヒットをつくる「自社分析」
第8章 リサーチの実践6 売り続けるためのリサーチ
第9章 リサーチにつまずいたら読む章
著者経歴
阿佐見 綾香 (あさみ あやか)・・・株式会社電通 第2統合ソリューション局マーケティングプランニング部 戦略プランナー。早稲田大学卒業後、2009 年株式会社電通入社。以来、戦略プランナー。電通のマーケティング部門にて、新入社員教育プログラムの1つ「マーケティング・リサーチ研修」を毎年担当。さらに、業界初の女性マーケティング専門チームGIRL'S GOOD LAB(旧・電通ギャルラボ)に参画。電通ダイバーシティ・ラボに参画し、「LGBT ユニット」のリーダーとして、日本のLGBTQ+ の課題と、LGBTQ+を中心に広がる消費に関する日本唯一(2012 年、2015年当時)の大規模なLGBTQ+調査を実施。
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