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「右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化」細 将貴

本のソムリエ 2021/11/13メルマガ登録
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右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化


【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

 著者は京都大学在学中、生物に興味を持ち野生生物研究会に入ります。そして、他学部の生物学の講義を聴講することがあり、生物の進化の不思議、データ解析の美しさに感動しました。その講義では、アフリカの古代湖に鱗を食べる魚がいて、その魚は鱗を食べることに適応して口が左右どちらかに曲がっているということに注目するのです。


 その魚の口がどちらに曲がっているのか10年間比率を測定したところ、その比率は左右五分五分ながら毎年、若干行ったり来たりしていたのです。この結果から得られた仮説は、少数派タイプが有利になる状況にあるのではないか。少数派になると優位に立って、数が増え、多数派になると弱者になって数が減るということを繰り返しているのではないか、というものでした。


・種分化の機構を解明することは進化生物学の永年の目標であり続けている(p14)


 この講義の影響もあると思いますが、著者はカタツムリには右巻きが多いことと、カタツムリばかり食べるヘビがいることに注目します。右巻きのカタツムリが多い環境にあれば、捕食者も右巻きのカタツムリを食べやすい進化をしているのではないか、と推理したのです。


 そしてカタツムリだけを食べるというイワサキセダカヘビの標本を調べてみると下顎の歯の本数が右側が多いことに気づくのです。さらに、イワサキセダカヘビは左巻きのカタツムリは捕獲をほとんど失敗することもわかりました。右巻きのカタツムリを効率よく食べるために、イワサキセダカヘビの右側の下顎の歯の本数が多いという仮説がほぼ立証されたのです。


・イワサキセダカヘビ・・・下顎の歯の本数が左右で異なり、右のほうが格段に多いことがわかった(p48)


 最終的にはイワサキセダカヘビの生息する沖縄県西表(いりおもて)島の現地調査も実施し、セダカヘビが分布する地域で左巻きのカタツムリが多いことがわかりました。右巻きのカタツムリを食べるセダカヘビが多い地域では、左巻きのカタツムリが多いのです。面白い!!


 大学とはこうしたことを研究して食べていける素晴らしい場所だと思いました。数学を研究している人もいれば、ヘビを研究している人もいるわけで、一見ムダに見えますが、こうしたムダに見える研究こそが、人類の叡智を高めてくれるのではないか、と感じたのです。


 こうしたムダな研究ができるのも、経済的な後ろ盾があるからできるのであって、ビジネスマンは金を稼ぎましょう。細 さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・一卵性双生児のほうが、同じ利き手になる確率が明らかに高い・・・利き手の決定に遺伝子が関係することを示す(p6)


・利き手は人間に特有の現象ではない・・・シオマネキの巨大なハサミ脚はいつも一方にしか発達していないし、カレイは・・アサガオは・・(p4)


・左ヒラメの右カレイ・・・カレイ目のヒラメ科に属する種の多くでは左の体側が上(左型)になっているのに対して、カレイ科の多くでは右体側が上(右型)」だ(p20)


・イワサキセダカヘビの歯列非対称性が遺伝する(p61)


・そこから見えてくるのは、生命の「よくできた機械」ぶりだろう。そのような精緻な物理現象がかくも多様に地球に存在するのはなぜか。この奇跡のような謎の解明を、私は生物学の目的だと信じている(p186)


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▼引用は、この本からです
「右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化」細 将貴
細 将貴、東海大学出版会


【私の評価】★★★★☆(82点)



目次

第1章 生き物の右と左
第2章 右利きのヘビ
第3章 西表島で調査する
第4章 検証・右利きのヘビ仮説


著者紹介

 細将貴(ほそ まさき)・・・1980年生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。生物間相互作用による生物多様性の創出機構について研究。日本学術振興会海外特別研究員を経て、現在、早稲田大学 教育学部 理学科 生物学専修 准教授


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