【書評】「世界を変える思考力を養う オックスフォードの教え方」岡田昭人
2021/10/05公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
ディスカッションが中心と言われる欧米の大学の授業ですが、イギリスのオックスフォード大学ではチュートリアルという個人指導が行われているという。チュートリアルとは週に1回1時間、学生1人に指導教員1人が付いて、学生が課題について文献を5冊以上読み込んでエッセーを作成して、それについて議論するというもの。
講義で一方的に教えられるよりも、自分で調べて自分の意見を述べることで学習効果を高めているのです。課題について、一日一冊以上の文献を英語で読んで、毎週メルマガを書くようなものですから、学生の力となるでしょう。
・学生は1週間当たり最低5~10点の文献・論文・資料を短期集中で読み込み、・・・かつそれをエッセイにして書くことによって、一人で「考え」「表現する」力が身に付くのです(p21)
また、別の授業では、3人が一組になり、一人が意見を述べて、他の2人がその意見を批判するワークを行っていました。日本ですと面と向かって人の意見を批判するのは、国会の野党ぐらいですから著者の印象に深く残っているのです。
欧米では議論することによって、より良い方針を導き出すという考え方を歴史的に持っています。インターネットの時代ですから、より多くの考え方が公表され、議論される時代ですので、日本人にもディベートの考え方が大切になってくると感じました。
・教育哲学の初回授業の時のエピソード・・・まず1人目が「教育は何かについて」の定義を述べ、次に2人目が1人目の述べた定義について批判し、そして3人目はその両者の定義を批判するといった形式でした(p38)
本の読み方も一日一冊以上読むわけですから、目次から読んでいって、序章と終章を中心に読み込み、全体を把握した後に、大切だと思う箇所を読むという方法を紹介しています。時間が限られる中で、本の内容を把握し自分の意見をアウトプットするためには、この方法しかないのでしょう。
私にとってこの一日一冊のメルマガは大学のチュートリアルのようなものだったのだと理解しました。自分で興味のあるテーマについて文献を10冊読んで、自分の意見をまとめる。大変ですが面白いと思いますよ。
岡田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・オックスフォード大学の教育学大学院(GES)では、・・・教育課題を取り上げ、ケーススタディとしてディスカッションする授業が中心です。学生は、事前に自分の国の事例を調査し、クラス討議に自分なりの分析、方法論、結論を用意して臨みます(p26)
・本を手にしたら、まず、目次に目を通します・・・続いて、「序章」と「終章」を丁寧に読みます・・・続いて、本全体をザッと読みます・・・全体像がわかったら、トピックだけでは意味が判然としなかった項目や自分にとって必要だと思う箇所を丁寧に読みます(p52)
・質の高いとされる論文は主に一次資料を多く使い、正確かつ多角的な分析がなされ、独自の見解を導き出したものとされます(p181)
・最も知識が定着する方法は「他人に教えた経験」であり、記憶に残る率は90%となっています(p34)
・起こったことばかりが書かれていて、君自身の解釈や批判的な議論が全くなされていないのではないか?(p21)
・常識にとらわれすぎていることは、思考停止していることに他ならない(p27)
・冒険は毎日の簡単な「実験」から・・・(p208)
【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
Prologue オックスフォードの「教え方」が、なぜ今必要なのか
Chapter1 日本にはない世界のトップ校の「教え方」
Chapter2 人と集団を成功へと導く「統率力」
Chapter3 非連続の発想を実現する「創造力」
Chapter4 チームワークで勝ち抜く「戦闘力」
Chapter5 正解のない問題に向き合う「分解力」
Chapter6 慣例や予定調和を打破する「冒険力」
Chapter7 相手に最高の印象を与える「表顕力」
著者経歴
岡田昭人(おかだ あきと)・・・東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。オックスフォード大学教育学博士。1967年生まれ。同志社大学卒業後、ニューヨーク大学大学院で異文化コミュニケ―ション学の修士号を取得。オックスフォード大学教育大学院にて日本人で初めて教育学の博士号を取得。東京外国語大学で教育学や異文化コミュニケーション学を教えている。現在、研究室は約100名の学生が在籍する人気ゼミ。
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