「事業創造 理論と実践」島田 直樹
2021/07/15公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(75点)
要約と感想レビュー
敗者復活戦が何度もできるアメリカ
企業の新規事業と個人の独立起業という切り口で、事業創造の基本をまとめた一冊です。まず、企業の新規事業は会社がお金を出してくれるのでリスクは小さいのですが、サラリーマンにとっては社内での出世が期待できる程度です。
一方、独立起業は成功すれば巨万の富を得られる可能性がある一方で、限られた資金や人材の中での起業となり、かつ個人保証を求められる日本では一度失敗すると立ち上がれなくなる可能性もあるハイリスク・ハイリターンの世界なのです。
起業について言えば、個人の責任が株式の有限責任に限られ、敗者復活戦が何度もできるアメリカのほうが起業の環境が整備されていると言えるのです。
アメリカでは法人の責任を個人がとることはなく、株式という有限責任の原則が貫かれている。しかし日本の場合、創業した企業の信用の代わりに創業者が個人の資産を担保にして資金調達を迫られる・・(p105)
社内にある技術から派生させるのが王道
著者のイノベーションの定義は、「既にある技術・サービス」×「ビジネスの再パッケージ」です。したがって、新規事業では、その会社内にある技術から派生させるのが王道となります。
そのため社内に事業のアイデアを発掘する仕組みを作ったり、社外メンバーと協働したりすることとなります。中にはベンチャーキャピタルを組成し社外ベンチャーに投資する会社もあります。
大企業における社内ベンチャー育成には、収益の新たな柱を育てるという意味と、経営者意識を持った尖った人材を育てるという意味もあるのです。
トヨタ自動車は・・・米の生産農業法人向けの農業IT管理ツール「豊作計画」を開発・上市している(p81)
二人で起業が成功の可能性を高める
事業創造とは、理論と過去の事例は参考にできるものの、芸術のように答えのないもののように感じました。事業創造とは良いアイデアを持った人が、自分のこうなると持った未来を自分で作り上げる活動なのです。
一つ強く思ったのは、一人で起業するよりは二人やチームで起業したほうが足りないところを補え合えれば、大きな成功の可能性を高めるのではないかということでした。例えば、アップルコンピュータは二人だし、ペイパルはチームなのです。
また、起業は若い人だけのものではありません。例えば、本田宗一郎氏が本田技研工業を創業したのは42歳、森泰吉郎氏が森ビルを55歳で設立しています。答えのない世界ですが、自分がやりたいことがあれば最悪を想定したうえで、飛び込んでみるのも面白いのではないかと感じました。島田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・起業が成功するかどうかは、突き詰めると「カネが続くかどうか」である(p23)
・のちに成功した創業経営者、起業家、企業内で新規事業を考えている人・・・圧倒的に無謀と思われるほうが多かった・・・その道の「オタク」ではないかと思われるほどの強い想いとこだわりを持った人が、事業の立ち上げには欠かせない(p218)
・アクセラレーターが少量の株式と引き換えに、事業立ち上げを集中的に指導するのに対して、インキュベーターは起業や成長にあたって、主に設備・バックオフィスの面を支援することを目的としている(p135)
・「組織」面の問題・・・具体的には、他部門とのカニバリゼーション、社内競合・圧力、承認プロセスの煩雑さ、事業に対する理解不足など(p206)
・「大企業の懐」を借りて成功している例も少なくない・・・研修サービスを展開しているプレセナは、トヨタ自動車グループで多くの研修実績を持っている(p120)
【私の評価】★★★☆☆(75点)
目次
第1章 事業創造とは
第2章 新規事業―概論
第3章 新規事業―事業発掘
第4章 新規事業―事業立ち上げ
第5章 起業―概論
第6章 起業のステージ
第7章 シリコンバレーの起業エコシステム
第8章 ビジネスモデルの構築と事業成長
第9章 事業の成長戦略
第10章 アントレプレナーとイントレプレナー
著者経歴
島田 直樹(しまだ なおき)・・・アップル日本法人、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、株式会社ピー・アンド・イー・ディレクションズを創業。成長戦略の立案および実行支援を行う。一橋大学商学部卒業。マサチューセッツ工科大学 (MIT) スローン経営大学院 (Sloan School of Management) 修了 。上場企業の社外取締役を歴任。
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