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「誰も書かなかった日本医師会」水野 肇

本のソムリエ 2021/03/06メルマガ登録
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誰も書かなかった日本医師会


【私の評価】★★★☆☆(70点)


要約と感想レビュー

 2003年という古い本ですが,新型コロナ対応で日本医師会が話題になることが多く,日本医師会とは何なのかということを学ぶために手にした一冊です。著者は新聞記者から評論家として独立し,医療保険審議会,老人保健福祉審議会等の委員を歴任した,医療の専門家です。日本の医療は,厚生族議員と日本医師会と厚生労働省と健康保険組合連合会が綱引きをしながら作り上げてきたことがわかります。


 日本医師会はもっともなことを主張しますが,"欲張り村の村長"と言われる会員が大多数である以上,医師の収入を増やすための圧力団体でしかないという総括となるようです。もちろん会長によって,厚生労働省との落としどころを探るタイプもいれば,厚生労働省と対立するタイプもいますが,日本は民間病院が多いことを考えれば,収入を増やすことが重要であることには変わりはありません。


 面白いのは厚生省は医療費を下げるために診療報酬を下げ,ベッド数の少ない病院は潰れても仕方がないと考えており,病院側はベッド数の増床で対抗してきたということでしょう。そのために県によってベッド数の多い県は医療費が多く,ベッド数の少ない県は医療費が低いという日本国内での医療格差ができてしまったのでしょう。


 新型コロナ対応でもこの本の言葉を用いれば,医師会員の三分の一は放っておいてもコロナに対応して,三分の一は指導によって対応し,残りの三分の一は新型コロナに関わりたくないので,これはどうしようもないという感じでしょうか。水野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・「むかし総評,いま医師会」と言った自民党のある幹部がいた・・会員15万人,年間予算160億円,160人の事務局員の組織である(p11)


・役人になると夢を捨て,ロマンを求めなくなり,いつも自分が正しいと思い,反省などしないという役人は確かに多い・・・十年も勤務していると,いかにも"役人"と見えるように・・・積極的に仕事をせず,上手に人々に合わせ,局の利益を最大限に尊重するのが当たり前になってしまう(p49)


・医師会員の三分の一は放っておいても勉強して,進歩する医学についていって,それを国民に還元することのできる人である。三分の一は指導者によってどっちにも行く人たちである。残りの三分の一は"欲張り村の村長"で,これはどうしようもない(p96)


・1983年1月31日,厚生省の吉村仁保保険局長は・・全国保険年金局長会議で・・・「不正請求には医師会との事前相談,打ち合わせなしに保険当局だけで医療監査ができる体制をつくりたい」・・・医療保険制度をいま改革しなくては必ず崩壊する」と述べた(p146)


・ある課長が日医の幹部と酒を飲んだ席上,「21世紀までにいまのベッド数150床以下の民間病院は大半がつぶれますよ」・・・この発言が問題になったのは,単に軽率だったというだけでなく,医師会側にとって"真実"と思わせる要素があったからである(p158)


・医師はケチである・・・いまでこそ変わったが,戦後ずっと医師は自分の金で医書をあまり買わなかった。必要とする医書は製薬会社が買って持ってきた。飲食も,少なくとも仲間の医師同士が飲む場合は製薬会社が払った(p162)


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▼引用は、この本からです
誰も書かなかった日本医師会


【私の評価】★★★☆☆(70点)



目次

プロローグ 日本医師会の50年
第1章 戦後医療行政のはじまり―武見太郎時代の幕開けへ
第2章 反官僚・反自民―武見政権の樹立と安定
第3章 欲張り村の村長たち―武見太郎の奮闘
第4章 医師優遇税制撤廃―武見時代の終わり
第5章 医療費亡国論―花岡堅而会長時代(1982~83)
第6章 老齢医療の問題―羽田春兔会長時代(1984~91)
第7章 「家庭医」構想をめぐって―村瀬敏郎会長時代(1992~95)
第8章 医療のグランドデザインへ―坪井栄孝会長時代(1996~)


著者紹介

 水野肇(みずの はじめ)・・・1927年大阪市生まれ。大阪外国語大学ロシア語学科卒。山陽新聞社会部デスク時代に、連載企画「ガン・シリーズ」で新聞協会賞受賞。その後独立し、評論活動を続ける。医事評論家。NHK解説委員、医療保険審議会、老人保健福祉審議会、医道審議会の委員などを歴任


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