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明治維新の裏で何があったのか「五代友厚 士魂商才」佐江衆一

2021/02/23本のソムリエ メルマガ登録
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【私の評価】★★★★☆(84点)


内容と感想

■薩摩藩出身で明治維新前後に活躍した
 五代友厚の人生をたどる映画
 「天外者(てんがらもん)」を見て、
 史実と比較しようと手にした一冊です。


 五代友厚は薩摩藩生まれ。
 幼名才助。


 14歳で世界地図の模写をする、
 18歳で長崎海軍伝習所に学ぶ、
 29歳で英国に留学するなど
 五代は時代の最先端を
 生きていたとわかります。


 生麦事件に端を発する薩英戦争では
 五代が退避させていた薩摩の軍艦3隻は
 英国に沈没させられ、五代は捕虜となり、
 横浜まで連行されました。


 当時、一撃必殺の薩摩藩士が
 生きて捕虜となるのは武士の恥。
 卑怯者として薩摩藩士から
 命を狙われていたのは事実のようです。


・薩摩藩士がすすんでイギリス艦隊の捕虜になるのは、前代未聞のこっじゃ。外国を知るお前んさァと俺じゃっで出来る。じゃっどん、戦わずして敵の捕虜となるとは、薩摩武士の風上にもおけぬ卑怯者との謗(そし)りをうけもンど。・・・私ら二人、藩内では西洋かぶれと評判が悪いから、いまさら何といわれようとおどろかんし、恥とも思わん。(p169)


■明治維新とは、薩摩藩・長州藩内部の
 西洋かぶれの志士たちが、
 徳川幕府から主導権を取り返したい
 薩摩藩、長州藩の政治力・武力を利用して、
 日本の統一国家化を実現した
 クーデターのように感じました。


 西洋の武器を手にいれた薩長藩主は
 徳川幕府を倒し、連邦制にしたかった。


 一方、志士たちは機械化・文明化した
 欧州に植民地支配されないために
 武力と科学技術に支えられた
 豊かでより民主的な統一国家としての
 日本を作りたかった。


 廃藩置県が断行されたとき、
 藩主や藩士たちは西洋かぶれの
 五代たちに裏切られたと
 感じたのではないでしょうか。


・新政府では廃藩置県の準備がはじまっているというのに、在郷の藩士は時代認識を変えようとしない。すでに今年6月、版籍奉還がおこなわれて・・藩という機構から支給されているのに過ぎないのに、いまだ島津家の家臣のつもりでいる。その彼らは藩がなくなることに怯え、憤っているのである(p354)


■映画のストーリーは
 五代の人間関係については
 本書の内容とだいぶ違う
 イメージでした。


 映画では土佐の坂本龍馬、岩崎弥太郎、
 長州の伊藤博文が牛鍋をつまみながら
 親友のように話し合っていましたが
 本当にそうなのか。


 また、遊女との純愛については、
 五代はあちこちに妾がいて
 子供を産ませている。


 もう少し五代友厚の本を
 読んでみたいと思います。


 佐江さん
 良い本をありがとうございました。



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この本で私が共感した名言

・勝という男は、かれの並みはずれた才能に惚れこむ者と、その倨傲(きょごう)な態度を嫌う者とにわかれるが、才助は自分に似たものを勝に感じ、若いながら人を見る目をもっていた(p17)


・島津斉彬が、長崎でオランダ人から入手したドイツ製の世界地図帳『HAND-ATLAS』の世界全図を模写したいといったとき、まっさきに名乗りをあげたのは才助の父の秀尭であった。秀尭はこの模写の大役を、14歳の才助にまかせた(p23)


・ジャーデン・マセソン商会は、香港の大アヘン商人ですよ(p85)


・才助は単刀直入に本題に入った。「わが薩摩藩は500トン前後の蒸気船2隻を購入したい意向である。その斡旋をしてもらいたい」・・・グラバーは、才助の目に自分と同年が年長に老けて見えたが、このとき満23歳。才助より3歳若い(p104)


・才助らはマンチェスターやバーミンガムといった工業地帯を主に視察し、バーミンガムでは小銃2300挺、騎兵銃50挺、大砲隊小銃200挺、合計2550挺を購入した(p225)


・『ザ・タイムズ』紙では、イギリス下院議員のチャールズ・パクストンなる人物が、「鹿児島の火災」について、非武装の一般人の家を破壊することが今後の戦争における先例となるならば、人類にとって恐ろしいことになるだろうと指摘し、キューパー提督のとった措置は、「大英帝国の名声を汚す恥ずべき犯罪行為」だと糾弾した(p194)


・「・・俺はモンブランと合弁商社をつくって、鉱山も開き、まず京坂間に鉄道も敷き、電信も架設し、九州と大阪間に快速蒸気船による飛脚船航路も開きたかとじゃ」(p303)


・明治4(1871)年2月15日、大阪造幣寮の開所式が盛大におこなわれた・・・7月、廃藩置県が断行された・・・この夏、友厚は堀孝之に編集させた英和辞書の改訂版を刊行した・・・10月、友厚は3年前に発見された大和国吉野郡の天和銅山の採掘権を入手して、いよいよ鉱山業にも乗り出した(p360)


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▼引用は、この本からです

佐江衆一、角川春樹事務所


【私の評価】★★★★☆(84点)


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目次

長崎海軍伝習所
鹿児島
朝顔とグラバー
上海の風
薩英戦争
逃亡の日々
才助とモンブラン伯爵
パリ万国博覧会
転機
明治新政府
商都大阪
後 記


著者紹介

 佐江衆一(さえ しゅういち)・・・1934年、東京・浅草生まれ。日本橋の丸善に勤め、その後コピーライターとなる。1960年、短篇「背」で新潮社同人雑誌賞を受賞し、作家デビュー。1990年、『北の海明け』で新田次郎文学賞、1995年、『黄落』でドゥ・マゴ文学賞を受賞。TVドラマ化、舞台上演される。1996年、『江戸職人綺譚』で中山義秀文学賞を受賞。古武道杖術師範、剣道5段


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