昔のホンダは良かった「ホンダ-イノベーションの神髄」小林三郎
2021/02/24公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
■私はホンダ車を乗り継いで来ましたが、
最近のホンダ車は元気がないような
気がして手にした一冊です。
著者は1980年代に日本で初めて
エアバッグを実用化した実績を
残しています。
こうしたイノベーションができたのは
ワイガヤという徹底的に話し合う
仕組みと風土がホンダにあったから。
年締役と新入社員が激論を交わすのが
普通と言えるくらい、役職に関係なく
本質を議論する環境がホンダには
あったのだという。
・実際ホンダでは、若手社員と取締役が役職とは関係なく、一人の人間として激論を交わすことが普通にある・・・むしろだまっていることの方がダメだ、と。ところが、社会人の大学院生と話す中で、そんな企業はほとんどないことが分かってきた(p26)
■著者が開発したエアバッグといえば
それまで使っていた火薬が健康問題から
2000年に禁止され、硝酸アンモニウムに
切り替えたことが原因で、2008年頃から
暴発事故が発生。
硝酸アンモニウムは性能は良いものの
長期間に性質が変わっていく欠点があり、
硝酸アンモニウムを採用した企業は
タカタだけだったのです。
あれほど長期安全性を重要視していたタカタの
高田重一郎社長が、どうして判断を誤ったのか
不明ですが、結果してタカタは破綻し、
中国系企業に買収されてしまいました。
本書が執筆された2010年には暴発事故が
アメリカを中心に顕在化してきた頃であり、
著者のコメントは記載されていませんが、
後輩の失態を残念に思っているのでは
ないでしょうか。
・タカタの高田重一郎社長が、話があると言って著者を呼び出した・・・「エアバッグの部品で何かあったら、タカタが潰れる。そんな危険な橋は渡れない」と、きっぱりした口調で宣告された(p262)
■著者は当時の元気なホンダには
ユニークなリーダーと
若く、ろくでもない社員が
たくさんいたと言います。
1991年に本田宗一郎が亡くなり、
30年間が経ってリーダーは優秀になり、
経験豊かな年寄りと優秀な若者が
増えたホンダは元気がない。
「人は無能になるまで出世する」という
「ピーターの法則」が知られていますが、
会社も同じように無能になるまで
成長するのかもしれません。
著者と一緒にホンダの今後に
期待したいものです。
小林さん
良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・イノベーションは社内で常に大反対される(p4)
・ホンダは、利益を結果と考える。我々がすべきことは新しい価値を生み出し、それを顧客に提供して喜んでもらうこと・・・「目的は利益」と言っている経営者のおまえ、バカヤローだ(p61)
・おやじは、「本田技術研究所は技術の研究をする所ではない。人間の研究をする所だ」と語っているが・・・研究所の技術者が第一にすべきことは、お客様の心を研究し、お客様が求める将来価値を見つけることだ(p79)
・ワイガヤは社外でやる。基本は三日三晩の合宿だ・・・一日四時間ぐらいしか寝ないから、三日三晩が限度だ・・・一人が一年間に平均で四回くらいワイガヤに参加していた・・・参加者する人数は7~8人が多い(p65)
・ホンダの人間は、「あなたはどう思う?」としつこく問い掛ける(p142)
・失敗したことを知って「なぜこんなことをやったのか」と聞く。そのとき「あなたがやれと言ったからじゃないですか」と答えると・・・「・・それなら、俺が死ねと言ったなら、おまえは死ぬのか」と。なぜ怒鳴るのか。それは、上司が言ったことを無批判にそのままやるという姿勢が許せないからだ(p194)
・取締役の最も重要な仕事は、「大きな方針の決定」と「人材育成」である。ところがそれには一切関知せず、費用対効果の尺度に基づくルールを振りかざして、細かい数字に対して説明やその根拠などを執拗に問い詰めてくる経営幹部がいる(p139)
・「開発にどれくらいの時間とカネがかかり、どれほどの利益が見込めるのか。その根拠は」・・・自分が部外者的な安全圏にいながら、したり顔で問い詰める(p29)
・専務や常務クラスは本音と建前が大きく違うことが間々ある。中でも不愉快なのが、こっそり足を引っ張る輩だ・・・後で裏からこっそり妨害する(p197)
・「五秒で答えてください」と断ってから、必ず聞くことがある。(1)あなたの会社(組織)の存在意義は(2)愛とは何か(3)あなたの人生の目的は何か(p74)
▼引用は、この本からです
小林三郎、日経BP
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
1章 絶対価値 さあ、未踏の技術に挑もう
2章 イノベーション包囲網 なぜ上司や周囲は反対するのか
3章 本質的な目標 良い目標がイノベーションを導く
4章 哲学と独創性の加速装置 息づく本田宗一郎氏のDNA
5章 ワイガヤ1高貴な本性 三日三晩話すと何かが起こる
6章 ワイガヤ2心の座標軸 愛について、何をしっている
7章 三現主義 まずは現場・現物・現実と心得よ
8章 現実的とは エアバッグで子供を殺すな
9章 異質性と多様性 あなたは「どう思う」、そして「何がしたい」
10章 学歴無用 答えのない問題を解く
11章 ルールとホンダのしきたり ルールは最小限に、自律する組織をつくる
12章 コンセプトと本質1五代目シビック サンバで、クルマをつくる
13章 コンセプトと本質2アポロ計画 「キミの言うことは訳が分からん」
14章 コンセプトと本質3言葉の力 技術開発を始める前にすべきこと
15章 トップと上司の眼力 久米三代目社長の、魔の40分
16章 自律、平等、信頼 俺が死ねと言ったなら
17章 若者のポテンシャル 二階に上げて、はしごを外す
18章 説得 もうホンダを辞めるしかない
19章 やる気を引き出す おまえら、ボーナスは要らないな
20章 価値の見える化 マップを描いて新しい価値を探る
21章 開発から量産への壁1連携 「エアバッグはマムシぐらい大嫌いだ」
22章 開発から量産への壁2サプライヤー 自らが動かないと何も始まらない
23章 哲学と想い 人を動かす大きな力
24章 イノベーションに挑む 天才でなくともイノベーションを達成できる
著者経歴
小林三郎(こばやし さぶろう)・・・1945年東京都生まれ。1968年に早稲田大学理工学部卒業。1970年、米University of California,Barkeley工学部修士課程修了。1971年に本田技術研究所に入社。16年間の研究開発の成果として1987年、日本初のエアバッグの量産/市販に成功。小林氏の開発したエアバッグの構造/機構が他社も含め、その後の量産型エアバッグの基本になる。2000年にはホンダの経営企画部長に就任。2005年に退職後、2006年3月に一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授に就任
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