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「ドナルド・キーンの東京下町日記」ドナルド・キーン

2021/02/25本のソムリエ メルマガ登録
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「ドナルド・キーンの東京下町日記」ドナルド・キーン


【私の評価】★★★★☆(81点)


内容と感想

 2年前に亡くなった日本文学者ドナルド・キーン(怒鳴門鬼韻)さんの本があったので手にしてみました。日記なので、重複があるもののなぜ日本に興味を持ったのか、なぜ日本が好きなのか、よくわかります。


 アメリカ海軍の日本語通訳官として働いていたとき、日本軍人の日記を読んで、その苦しみ、家族と故郷への純粋な思いに衝撃を受け、戦争に勝つべきは日本ではないのかとさえ思ったという。その後、大学で日本の研究を続け、2011年震災後には日本国籍を取得しています。2019年97歳で没しました。


・米兵は日記を書くことを禁じられていた。日記が敵に渡れば、軍事情報が漏れるかもしれないからだ。逆に、日本兵には、書くことが義務付けられた。日記は上官が検閲して、兵士の愛国心を確認する手段だったという・・・最後の苦悩、家族への思い、望郷の念。私は耐えられないほど胸を打たれた(p105)


 驚くのはドナルド・キーンさんの三島由紀夫との交流でしょう。親友と表現できるほど交流し、頻繁に手紙をやりとりしていました。1968年のノーベル賞は川端康成が受賞していますが、この受賞が三島由紀夫の自衛隊での割腹自決に少なからず影響を与えていたという。


 三島由紀夫の自殺する直前に書かれた手紙を受けとっており、「魅死魔幽鬼夫(みしまゆきお)」というドナルド・キーンさんの当て字のとおりになったと書いてあったという。


・三島とは、手紙で頻繁にやりとりしたが、ある時から「怒鳴門鬼韻(どなるどきいん)様」と当て字で書いてきた。そこで、私は仕返しに「魅死魔幽鬼夫(みしまゆきお)様」と書いたりもした(p22)


 真の「国際化」とは日本文化を知り、誇りを持って日本文化を説明し、外国人に理解してもらうこと、と喝破していることが印象的でした。


 また、慎み深い日本人を愛しながらも上からの命令や支配に依存する傾向に警告を発しています。日本の良さを維持しつつ、修正すべき点は修正することで日本はより良い国となるのでしょう。キーンさん、 良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・4年前の震災直後、被災地では暴動が起こるでもなく秩序は保たれ、避難所では少ない食料を分け合い、子どもが高齢者の手を取って支え合った。その光景に世界は涙した。私も高見と同じ心境だった。「日本人と一緒に生きたい」と(p102)


・頭に浮かんだのは、芭蕉の『笈(おい)の小文(こぶみ)』の一節。「つひに無芸無能にして只此(この)一筋に繋(つなが)る」。私には日本研究しかないのだと・・・私は芭蕉と同じ体験をしようと「おくのほそ道」を巡る旅をしたことがある。私をその旅に導いてくれた芭蕉は、私にとっての「人生の旅」の師でもあった(p40)


・デンマーク人作家ケルビン・リンデマンが「私が川端に勝たせた」と言い出したのだ・・・真偽は分からない。だが、川端の受賞で次に日本人が受賞するには20年は待たなければならない と落胆した三島は『豊饒(ほうじょう)の海』を集大成として書き残し、70年11月に自決した・・・川端は、疑いなくノーベル賞に値する大作家である。だが、受賞後は思ったような作品が書けず、72年4月に自殺が報じられた(p52)


・私は日本を「超一流の二流芸術国」と評している。もちろん一流芸術もあるが、特筆すべきは誰もが俳句や短歌、生け花や書道といった芸術を気軽に楽しんでいることだ。これほど教養レベルの高い国は他にない(p125)


・「日本人が上からの命令に頼る性質を精算しなければ、ある一つの独裁政権から別の独裁政権に移行する可能性がある・・・72年も前の忠告なのだが、日本国民は自立できたのか。5年前に日本人になった私には確信が持てない(p191)


・私は日本の古典の専門家として「日本の学校教育は間違っている」と主張している。外国語でも教えるかのように、最初に原文で文法を暗記させるのでは味気ない。まずは文学としての面白さを教えるべきだ(p122)


・甲子園・・・日本と比べて合理主義的な米国なら、こうはならない・・・補欠選手のための試合を組むだろうし、エースの連投には「将来ある高校生。けがしたらどうする」「試合日程に無理がある」と批判が湧き起こるはずだ。そもそも、高校レベルの競技会をメディアが大きく取り上げないし、大観衆も集まらない。高校野球は、善しあしを別に実に日本的である(p218)


・私は冗談半分で「米国の食文化は日独伊という戦時中の枢軸国に占領された」と話すことがある。どこへ行ってもすし屋、ハンバーガー店、ピザ屋がある(p96)


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▼引用は、この本からです
「ドナルド・キーンの東京下町日記」ドナルド・キーン
ドナルド・キーン、東京新聞出版局


【私の評価】★★★★☆(81点)



目次

世界に誇れる文楽
住めば都
三島由紀夫からの手紙
富士山に導かれ
小田実の『玉砕』
被災地を思い続ける
私の「センセイ」
日本兵の日記
ケンブリッジ大学での講義
古浄瑠璃の地、柏崎になぜ原発
ほか


著者紹介

 ドナルド・キーン・・・1922年、米ニューヨーク生まれ。米コロンビア大で日本文学を専攻し、同大助教授、教授を経て、名誉教授。日本の文化や文学の研究で世界的な権威。2012年に日本国籍取得。2019年逝去。文化勲章を受章したほか、菊池寛賞、山片蟠桃賞、日本文学大賞、全米文芸評論家賞など受賞は多数。松尾芭蕉の『おくのほそ道』から、三島由紀夫の『宴のあと』などまで、古典から近現代まで日本文学を幅広く英訳した。


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