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【書評】「やさしいダンテ「神曲」」阿刀田 高

2020/11/03公開 更新
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「やさしいダンテ「神曲」」阿刀田 高


【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

神曲が書かれたのは鎌倉時代

ダンテといえば神曲。神曲って何?ということで手にした一冊です。ダンテは1321年に亡くなる前の15年ほどかけて、神曲を書いています。日本でいえば、鎌倉時代です。


トスカーナ方言で書かれてあり、神曲がイタリア語の基礎となったのだという。日本の夏目漱石の「ぼっちゃん」のように分かりやすい口語で書かれてあるのです。


「ダンテって、そんなに偉かったの?何をしたの?」「明晰で、美しいイタリア語を使って作品を書いた」(p29)

森で古代ローマ人に案内される

神曲のあらすじは、ダンテが森に迷い込み地獄、煉獄、天国を古代ローマの詩人に案内されるというものです。煉獄(れんごく)とは天国と地獄の間にあり、小さな罪を犯したものがその罪をつぐなう山なのだという。


ギリシャ神話の神様が地獄に落ちていたり、ダンテの政敵が焼け苦しんでいたり、マホメットが八つ裂きにされたりしている。ダンテは敬虔なキリスト教徒であり、神曲はキリスト教の世界の道徳観を表現しているのです。


キリスト教徒にしてみれば、マホメットの召命このかたダンテの時代まで(その後も同じだが)イスラムとの抗争はヨーロッパとその周辺でとみに際立つ悩みだった。マホメットとアリーを八つ裂きにしたいのは心情としてはわからないでもない(p129)

道徳から足を踏み外すと地獄行き

「神学」を楽しむにはギリシャ神話からキリスト教の話まで、他に多くの知識が必要なようです。道徳から足を踏み外すと地獄に落ちるということで、ダンテの嫌いな人は地獄行きです。


神曲はキリスト教が当時ヨーロッパを支配していたことを示しており、キリスト教はさらに広がり1549年には日本に伝来することになるのです。阿刀田さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・「ローマ教会が世俗的支配と宗教的権威と二つの権力を欲深く一つの腹に埋め込もうとして、すべてをけがしてしまったのよ、昨今の乱れは」「よくわかります」とダンテは深く頷く(p192)


・ダンテは敬虔なキリスト教徒でありながら、ふんだんにギリシャ・ローマ神話を引用し、もってルネッサンスの前触れを暗示している。ルネッサンス運動は略言すれば"ギリシャ文明を見直そう"ということであった(p82)


・ダンテが冥界めぐりをした時期(フィクションではあるが1300年の春)と<神曲>の実際の執筆の時期(主な部分は1308年以降)にはずれがあり、この間の数年の出来事については、史実を知ったうえで日時をさかのぼり予言的に記すことができる(p128)


・アテネの英雄テセウスが人質となってクレタ島に送られ、ミノタウロスの餌にと迷宮に送りこまれた。王女のアリアドネ(血筋としてはミノタウロスの妹)がテセウスに加勢して糸玉を持たせ、これをほどきながら入り、たぐって迷宮から帰る方策を教えてくれた(p70)


▼引用は、この本からです
「やさしいダンテ「神曲」」阿刀田 高
阿刀田 高、角川書店


【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

第一話 崇高な片思い
第二話 地獄の門を抜けて
第三話 ギリシャ神話を交えて
第四話 亡者がウジャウジャ
第五話 予言のからくり
第六話 三人の極悪人
第七話 煉獄の丘を越えて
第八話 愛と自由な意思
第九話 ベアトリーチェの怒り
第十話 魂は輪になって踊る
第十一話 神学の見た宇宙
最終話 薔薇の円形劇場へ



著者経歴

阿刀田 高(あとうだ たかし)・・・1935年東京生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒。国立国会図書館に司書として勤務するかたわらコラムを執筆、1978年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。著作に第32回日本推理作家協会賞短編賞「来訪者」、第81回直木賞『ナポレオン狂』、第29回吉川英治文学賞『新トロイア物語』など多数。


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