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「無敗の男 中村喜四郎 全告白」常井 健一

2020/07/23公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

 茨城県に中村喜四郎という衆議院議員がいます。


 衆議院議員として連続当選14回。40歳で科学技術庁長官として初入閣。43歳で建設大臣。首相の可能性も見えていた。しかし一転、45歳でゼネコン汚職の罪で現職のまま起訴され、有罪判決。しかし、その後も選挙で勝ち続けいているのです。なぜ無所属でも、有罪判決を受けても選挙で勝ち続けられるのか。


・1992年に起こった経世会の分裂以降、派閥の力は衰退の一途を辿り、自民党は下野した。後に「国策捜査」という新語が生まれたように、検察が率先して時代のけじめをつけようとする動きが活発化した。その先駆けが、中村の逮捕劇であった(p180)


 中村は秘書も活用しながら選挙区の家をすべて個別訪問し、辻説法も続けています。選挙期間中には、自らオートバイを運転し、街頭演説する。中村は金がはないが、ひたすら自分の足で歩くことで地元に密着した支持層を維持しているのです。


 そしてその人たちの期待に応えるために講演の二日前から原稿を三回も推敲して、すべて数字まで暗記してしまう。言葉にすれば簡単ですが、そうした地道な活動を何十年でもやり続ける姿勢を大切にしているという。


・月に一回平均で・・・自分自身がマイクを握り街頭から国政報告を二十年間続けて参りました・・・ほとんど無反応ですよ・・・でも、それがやれるか。そういうことだって、一度止めたら、『ああ、中村はついに止めたな』と言われる。そこを崩さないように大切にしているのが私なんです(p108)


 この本に書かれた中村喜四郎さんの人生もすごいが、著者の常井さんの取材力がすごい。逮捕後、マスコミから一切取材を受けなかったという中村さんですが、徹底した取材に裏打ちされた本書を読むと、男冥利に尽きるのではないでしょうか。


 政治の裏側も垣間見える良書でした。常井 さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・国会議員の立場のままで最高裁まで戦う。その間、バッジは絶対に取らせない。『中村喜四郎は検察に潰された』と言われないように、絶対に選挙に落ちちゃいけないと執念を燃やした(p126)


・中村は、本当に完黙を貫いてしまった。当時、検察を取材した記者によると、ある検察官は「あれが、男の中の男だな」と漏らしたそうだ(p8)


・東京にいる平日はほぼ毎日、スポーツジムに通っている・・・ジムに『戦い』に行っているんです。趣味じゃなくて、自分で決めたことを実行できるかどうかを毎日試している。良かった、今日もできたと、そうやって一日をリセットしている。逆に、一日でも休んだらできなくなる。モチベーションも萎えてしまう。それが怖いから続ける(p121)


・国会議員は自分では動かず、地方議員にカネを配り、票集めを任せるのが選挙の常識だった。だが、先代はそうしなかった(p47)


・講演に当たっては二日前から資料を見て、勉強しますよ。休みを取って聞きに来てくれた人たちに適当な話はできない。気合を入れて望まないと失礼ですし、いい加減なことをやった瞬間に人は離れる・・・私の場合は無所属だからこそ、真面目に必死に政治を語らないと認めてもらえない(p131)


・中村は「建設族のプリンス」と見られていたが、角栄の秘蔵っ子として薫陶を受けた小沢よりはだいぶ格下の存在だった・・・小沢を持ち上げていた弟分の中村は、経世会の派閥内抗争で小沢との亀裂を深めると、建設省からの小沢色排除を期待された・・・「小沢つぶし」のため、それなりの顔ぶれを揃え、一定の勢力を形作るには巨額の活動資金が必要だった。実際、中村はその頃から・・・大企業や業界団体からの献金を受け付ける政治団体を立ち上げている(p166)


・国会という場所は、両院の議員運営委員会と各党の国会対策委員会があらゆる決め事のイニシャチブを握っている。総理大臣も、閣僚も、その長の意向を差し置いて、権力を行使することはできない。日本の議会政治を知悉(ちしつ)する経世会は議連と国対を牛耳り、国会運営のグリップを握ってきた(p180)


・公明党は1999年に小渕政権と連立を組んで以降、「下駄の雪」と揶揄されるほど自民党と歩調を合わせてきた。衆院選があれば、九割以上の自民党小選挙区候補に推薦を与え、一つの小選挙区当たり二万票程度と言われている創価学会員の票を捧げる。その代わり、自民党陣営は支援者に「比例区は公明党」と依頼し、数千規模の比例票を確実に公明党に渡さないといけない(p224)


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▼引用は、この本からです

常井 健一、文藝春秋


【私の評価】★★★★☆(87点)



目次

第1章 選挙の申し子
第2章 成り上がりのプリンス
第3章 完全黙秘とサバイバル
第4章 父帰る
最終章 メーク・ナカムラ・グレート・アゲイン


著者経歴

常井 健一(とこい けんいち)・・・ノンフィクションライター。1979年生まれ。ライブドア、朝日新聞出版を経て、オーストラリア国立大学に客員研究員として留学。帰国後、フリーのライターとなる。


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