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「小水力発電が地域を救う 日本を明るくする広大なフロンティア」中島 大

2020/02/15公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

再生可能エネルギー固定価格買取制度(fit)が整備される前から、水力発電を開発してきた著者が教える小水力の真実です。再エネが注目されるまで、なかなか小水力発電所は建設されませんでした。 ヨーロッパでは、小水力発電所多いのですが、日本の小水力が少ないのは電力会社が原因だという。


つまり、きな電力会社にとっては戦前から引き継いだ小水力発電所は、高く設定されている電力価格でメンテナンスすると利益が出ないように見えるため、だんだんと廃止されていったというのです。例えば山梨県内では、300kW以下の発電所は廃止するよう指示されていたという話を東京電力OBから聞いたという。


また、電力会社以外で水力発電をやろうとしても、安い水力発電設備を作っている会社がない。役所に相談すると、電力会社並みの資料を要求されるし、そもそも良い地点を探すデータがないというのです。例えば農業用水路で小水力発電を計画し、県庁に許可を取りに行ったとき、県庁から船の交通に迷惑がかからないことを書類で証明しろと要求されたという。ところが、その川では誰も船など使っていないので、照明しょうがなかったという。役人は人のクズと言われますが、自己保身しか考えていないわけです。


そして実際に水力発電所を作ろうとすれば、それまで電力会社から補償金を取っていた地元の人々が金を要求してきます。電力会社が水力発電所をつくるときには、土地や農林漁業への補償を行っています。川を利用する権利や、迷惑料も加えて、地元の人たちに補償金を支払っていたのです。金をもらってうれしいはずですが、著者の印象では大金を手にした多くの人が、「ベンツを買って、家を立派にして、博打に手を出して、女を囲って、一家離散」と多くの人を不幸にしたという。


著者の提案は、農業用水の余り(空き断面)を使って発電する方式です。余りを使うので実現可能性は高く、大きな可能性を持っているように感じます。本来は山間部に小水力を作ることが王道なのでしょうが、水利権や地元の協力が必要など壁は高そうです。


安定した水量と安い設備、地元の人の了解を取る政治力が小水力のポイントだと思いました。中島さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本の中小水力発電のポテンシャルについて、たとえば環境省の『再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報』では約900万kWとなっています。経済性を考慮したシナリオでその半分以下、百数十~4百数十万kW程度が開発可能ではないかとされています(p21)


・2016年6月に、農協営の石徹白番場清流発電所(125kW)が運転開始した。この発電所は総工費2億3000万円(p46)


・小水力発電所の建設費はケースバイケースですが、大体、出力200kWの場合で3億円、1000kWで十数億円といった金額が目安になります。これを上回ると収益が上がらないおそれがでてきます(p126)



中島 大、東洋経済新報社


【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

プロローグ 小水力発電が山村を復活させ日本社会を強靭にする
第1章 小水力発電で岐阜の山村が復活
第2章 農業用水路に眠る電力
第3章 山村の土建会社は小水力発電で生き残れ
第4章 実現する意志と川への理解があれば規制の壁は越えられる
第5章 ガラス張りの発電所計画
第6章 小水力発電の具体的なイメージ
第7章 成功のコツがわかる様々な実例
第8章 歴史の中の小水力発電
第9章 山村と小水力の文化論
おわりに 山村はこれからの日本のフロンティア


著者経歴

中島 大(なかじま まさる)・・・全国小水力利用推進協議会事務局長、一般社団法人小水力開発支援協会代表理事。1961年生まれ。1985年、東京大学理学部物理学科卒業。株式会社ヴァイアブルテクノロジー取締役などを経て現職。その間、分散型エネルギー研究会事務局長、気候ネットワーク運営委員などを歴任し、小水力利用推進協議会、小水力開発支援協会の設立にも参画する。現在、全国各地の小水力発電事業のサポート、コンサルティングなどを行っている。


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