人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「遺伝子の社会」イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー

2020/01/31公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「遺伝子の社会」イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

ヒトが生まれたアフリカは歴史が長いから変異が多い

ヒトの全ゲノムが解析されたのが2003年。今ではひとりの全ゲノム解析が20万円・3日でできてしまうという。ヒトのゲノムはほとんどが同じですが、細かいところに変異があり、人それぞれ違う多様性を持っているのです。


その多様性を分析すると、ヒトがアフリカで生まれてヨーロッパ、アジア、北アメリカと移動していったことがわかるという。特に、ヒトが生まれたアフリカでは歴史が長いぶんだけ変異が多く、遺伝的な多様性が桁違いに多いのです。


アフリカの外より中のほうが遺伝的多様性が豊かである・・能力云々の問題ではなくアフリカ人のほうが変異の種類が多いので、どんなことであっても、最高に優れた遺伝的要因を持つ人は、アフリカ大陸のどこかに住んでいる可能性が高いのだ(p123)

ヒトが生まれたアフリカは変異が多い

面白いのは、インフルエンザやコロナウイルスと同じようにヒトも変異していくということです。


様々な変異をしながら、環境に適したものが自然選択で増えていく。ウイルスも環境に適したものが爆発的に増えていくので、仕組みな同じことなのです。


ヒトのニュータイプが生まれて自然選択により増殖して、古いヒトと入れ替わるというのは夢物語ではないのです。


進化のタイムスケジュールで見ると、一万年前に起きた牧畜は、つい最近の出来事だ。現在では、ヨーロッパ人に乳糖耐性が生じたのは、過去3000年~4000年の間だという有力な証拠が挙がっている(p117)

遺伝子を操作できる時代

簡単に自分の遺伝子を調べ、遺伝子を操作できる時代に私たちは住んでいます。例えば、非アフリカ系のヒトのゲノムにネアンデルタール人のDNAが存在するので、10万年前に、ヒトとネアンデルタール人が生殖能力のある子どもを持てたことを示しているのです。


ヒトがどこから来たのかというのはナゾですが、これからも生物の仕組みの秘密はどんどん分かってくるのでしょう。良い時代に生まれました。ヤナイさん、良い本をありがとうございました。


無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信)
3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。

この本で私が共感した名言

・細胞がタンパク質を作るには、DNA配列(アルファベット4文字)をタンパク質配列(アルファベット20文字)に翻訳する必要がある。わずかな違いはあるが、この翻訳のルールは地球上の全生物に共通する。これが、地球上に生命が誕生したのは一度だけだとわたしたちが確信する理由だ(p57)


・キリンや人間など多細胞生物では、首(その他、あらゆる部位)の変化は、その部位の細胞に蓄積される情報にのみ影響する。その情報は、子宮や睾丸のゲノムには決して伝わらず、したがって、遺伝するはずもないのだ・・変化は環境との相互作用を通じて生じる・・(p67)


・皮膚がんを防ぎつつ、ビタミンDを十分に生成する。この療法の目的のために必要十分な紫外線を肌が通すように、肌の色素の量は調整されてきた。この「調整」を行ったのは、自然選択である(p112)


・ヒトの第二染色体は、チンパンジーのゲノムにある二本の短い染色体が組み合わさったもの・・両者の共通の祖先は(およそ600万年前に)チンパンジーのような染色体を持っていたが、ヒトが進化する過程で、そのうちの二つが偶然くっついた(p150)


・生物学者のリン・マーギュリスは、1970年に大胆な仮説を発表した。ミトコンドリアは、元は独立した真正最近だった、というのだ。真核生物の細胞が、その進化の初期に真正細菌を飲み込んだが、消化せず、細胞内でそれが生き、分裂し、増殖することを許した(p228)


「遺伝子の社会」イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー
イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー、NTT出版


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1章 八つの簡単なステップを経て進化するガン
第2章 敵はあなたをどう見ているか
第3章 有性生殖(セックス)の目的は何か?
第4章 クリントン・パラドックス
第5章 複雑な社会に暮らす放埒な遺伝子たち
第6章 チューマン・ショウ
第7章 問題は使い方にある
第8章 窃盗、模倣、革新の根
第9章 物陰の知られざる秘密
第10章 フリーローダーとの勝ち目のない戦い


著者経歴

イタイ・ヤナイ (ITAI YANAI)・・・ニューヨーク大学医学部教授(生化学・分子薬理学)・計算医学研究所所長。ハーバード大学、ワイツマン科学研究所(イスラエル)、イスラエル工科大学(テクニオン)准教授(生物学)・テクニオンゲノムセンター所長を経て現職。


マルティン・レルヒャー (MARTIN LERCHER)・・・ドイツ、デュッセルドルフのハインリッヒ・ハイネ大学教授(生物情報学)。ケンブリッジ大学でPhD(理論物理学)取得後、バース大学(イギリス)とハイデルベルクのヨーロッパ生物学研究センターでゲノムを研究。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村


この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 

人気ブログランキングへ



メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』]
3万人が読んでいる定番書評メルマガです。
>>バックナンバー
登録無料
 
<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本 ,


コメントする


同じカテゴリーの書籍: