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【書評】「平和の発見 巣鴨の生と死の記録」花山信勝

2020/01/23公開 更新
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「平和の発見 巣鴨の生と死の記録」花山信勝


【私の評価】★★★☆☆(74点)


要約と感想レビュー


仕巣鴨拘置所の仏教僧

東京裁判で裁かれた戦犯が収容された巣鴨拘置所では、牧師と仏教僧が配置されていました。著者は巣鴨拘置所の仏教僧として死刑囚の最後に寄り添い、最後の言葉、遺書を預かったのです。


主に死刑囚の言葉を記録していますが、多くの死刑囚は自分の死に対してどういう意味を与えるのか、考えているように見えました。


人生は50年だ。早や、5年も過ぎた。父が、53歳でなくなったように記憶している。やっと、2年しか永く生きなかった。しかし、若くして死んだ部下のことを思えば、ぜいたくもいえまい。多くの部下は、新しい日本建設の礎石として死んだのだ。余も、その仲間入りをするのだ(尾家大佐)(p147)

うまくやった人が得をする

そもそも東京裁判が戦勝国が敗戦国を人道・平和への罪で裁くという取って付けたようなもの。裁判の中では、黙秘、否認した人が無罪となり、まじめな人が死刑となるという理不尽なこともあったようです。


巣鴨に収容された人の中でも死刑囚となった人もいれば、無罪となって戦後日本の実力者となった人もいるのです。うまくやった人が得をするというのはいつの時代でも変わらないのだな、と感じました。


裁判の判決については、この際いうことを避けたい。いずれ冷静な世界識者の批判によって日本の真意のあったところを了解してもらえる時代もくるであろう(東条英機)(p254)

相手を批判る図々しさがほしい

この本を読みながら、日本から逃亡したカルロス・ゴーンが頭の中に浮かびました。日本の司法制度を批判し、自分の潔白・無罪を主張し、逃亡したゴーン氏。


一方、戦勝国の一方的な東京裁判への反論をあまり行わず、主に自らの失態を反省する日本人には大きな差があるように感じました。無理筋でもルールを作って、自分の正当性を維持しつつ、相手を罰するくらいの図々しさが日本人には足りないのでしょう。


この本は「読書のすすめ」の清水さんのご紹介で読むことができましたので、ぜひ「読書のすすめ」で購入ください。


花山さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・所長や君は俘虜虐待の先導者であると僕は思う。君が収容所にいた時には大きな顔をして威張っていて、今日(いま)になって何も知らんといって知らぬ顔をするのはあまりに卑怯だ・・・われわれは所長、君、兵隊の罪までかぶさってしまったのだ。僕も武田も君をうらんでいる。僕らは君のヒキョウを呪いつつ死んで行くからそのつもりに思ってくれ(牟田松吉)(p113)


・敗戦後日本からは、「愛国心」という言葉は全く払拭されたような感がある・・換言すれば、国民が、民主主義や個人主義をいかに曲解しているかという証明であり、国家主義や全体主義にだけ愛国心があると誤解している証拠でもある。なぜならば、民主国家たるイギリスや、アメリカや、ロシアに愛国思想が欠如していたとだれがいえよう・・戦争中口角泡をとばして、国事を論じた連中は、敗戦とともに、愛する対象を喪失したかのように、口をかん(糸へんに減)してしまっている(p170)


・今次戦争の指導者たる英米側の指導者は、大きな失敗を犯した。第一は、日本の主とした赤化の防壁を破壊し去ったこと。第二は、満洲を赤化の根拠地たらしめたこと。第三は、朝鮮を二分して東亜紛争の因たらしめたことである(東条英機)(p346)


・無差別爆撃や原子爆弾の投下による悲惨な結果については、米軍側に於いても大いに同情と、憐愍(れんびん)と、悔悟あるべきである。最後に軍事的問題について一言する。我国従来の統帥権は間違っていた。あれでは陸海空軍一本の行動はとれない(東条英機)(p348)


▼引用は下記の書籍からです。
「平和の発見 巣鴨の生と死の記録」花山信勝
花山信勝、方丈堂出版


【私の評価】★★★☆☆(74点)


目次

序 章 巣鴨の門
第一章 文人の感起
第二章 花とローソク
第三章 東京裁判の二年間
第四章 二十七死刑囚の記録
第五章 巣鴨生活みたまま
第六章 東京裁判の終幕
第七章 七人との面談記録
第八章 昭和二十三年十二月二十三日午前零時一分
第九章 平和の発見
増補・東条元大将の遺言


著者経歴

花山 信勝(はなやま しんしょう)・・・ 明治31年12月3日、宗林寺住職花山時勝師の長男として生まれる。十一歳のとき父親に死別したため金沢市松ヶ枝町尋常小学校卒業と同時に、大谷光瑞師が直営をはじめた兵庫県武庫郡の武庫中学に選抜されて入学、大正四年四高にはいり、東大哲学科に在学中二十一歳で宗林寺住職になった。大正13年東大大学院修了後、二年間英、独、仏に留学、印度仏蹟を踏査して帰る。日大、洋大、国学院大、東京文理大、九州大、東大各講師及び教授を歴任して昭和14年東大助教授、昭和21年同教授となり、34年定年で退官。この間三十六歳で帝国学士院恩賜賞を受け、四十三歳で文学博士、日本印度学仏教学会理事、日本仏教学会理事等を兼ね、終戦後の昭和21年2月から巣鴨拘置所の戦犯教戒師を委嘱され、処刑されたA、B、C級の多くの人たちをただ一人で教戒に当たった。東条英機元大将らA級七人の戦争責任者の処刑に立ち会ったたった一人の日本人でもある。東大教授退官後、浄土真宗本願寺派門主から北米開教区開教総長に任命され約十年間滞在、この間米国の永住権を得た。著書は聖徳太子の研究を中心に日本仏教など多数にのぼる。平成7年3月没。享年九十六歳


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