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「0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方」星崎尚彦

2020/01/15公開 更新
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「0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方」星崎尚彦


【私の評価】★★★★★(95点)


要約と感想レビュー

宮城県の仙台ではあまり目立たないメガネスーパーですが、2015年まで8年連続赤字。2011年には債務超過となり、投資ファンドが創業者から経営権を引き継ぎました。著者の星崎さんが社長に就任したのが2013年です。まずやったのは、現場を知るために直轄店を作って、前職の仲間を直轄店に配属しました。そして社長自らも店舗に出向いて現場で何を起きているのか、確認していったのです。


また、社員200人を集めて10時間議論する「アクション会議」を週1回開催し、打ち手を決めて、実行する。他の日は「ホシキャラバン」として社長がバスを運転して全国390店舗を回り、うまくいった施策を各店舗に反映させる。フタッフとの対話の時間を作って、社長自らが話を聞き、現場を把握し、スタッフの心を掌握していったのです。現場に足を運び、社員と直接話して、やる気を引き出すのが著者のスタイルのようです。


・「本当に、そんなことしていいんですか?」その頃のスタッフたちの口癖がコレだった(p72)


メガネスーパーは赤字続きで債務超過。じっくり検討している時間はなく、走りながら対策を打っていったことがわかります。本社にいるのは、月曜日の全社会議「アクション会議」のみで、あとは全国の店舗を飛び回っていたという。社長がアポなしで店舗を訪れ、全社会議に参加できない若手のスタッフとも話をして、酒を飲んでいたのです。


具体的には、1店あたり所要時間は約2時間15分で、1日4~5店舗を回っていたとい。店舗では、改装したり、商品の陳列を直したり、ポスターを貼り替えたり、ノボリを立てたりしていたという。店外では、別の班が、お客さまの呼び込みやチラシ配りにあたるのです。そして社長は、全スタッフと個別天領ミーティングを行い、その後に1人ずつ個別の面談をしていたという。


会社を変えようと思えば、どんなによい変化であろうと必ず反発されるのです。例えば、10%だった社員割引を50%まで引き上げたときには、「そんなに安くするとブランドに傷がつく」「ズルをして、友人に売る社員が出てきたら、どうするんだ」などの批判が出たという。まったく笑ってしまう。こうした反発を応援に変えるにもまた、社長の熱なのです。現場で動くから、本社も協力してくれるようになったというのです。


・「今すぐやれ」といえば、「今、忙しいからできません」と返してくるのも、現場の常套句だった(p80)


なぜ、メガネスーパーが赤字になったかといえば、高コスト体質のままに、値段だけを下げてしまったからなのです。安いけどセンスが悪いから売れないし、仮に売れたところで利益が出ないのです。だからメガネスーパーの業績が急回復したのは、安売りをやめ、高付加価値サービス提供に戦略を転換してからです。こうした戦略転換ができたのも星崎社長が現場に出て、社員の声を聞き、実績を積み上げていたからなのでしょう。


理論だけでなく社員の信頼があったから戦略転換を現場に徹底できたのだと感じました。星崎さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・ダメな会社の会議には共通点がある・・誰も決めようとせず、誰も責任を取ろうとしない。仕切る人間がいないので、場当たり的な議論に終始する・・・経営陣の発言で戦略が朝令暮改状態で、結果として戦略の一貫性がなくなる(p58)


・味方といえば、クレッジから連れてきた人材で構成した「天領チーム」のみ。要は「全部自分たちでやる」のである。商品調達も販売も、ラッピングの紙を買うのも、店内に音楽をかけるラジカセを買うのも、自分たちで動いた。本社サイドの人間は、誰も協力してくれなかった。・・・その気持ちはよくわかる(p99)


・魔法のような施策など一つもない・・地道にしつこく、当たり前に、やるべいことをやり続ける。だが、それだけのことを誰もやろうとはしないから、やれば際立って見える(p135)


・メガネスーパーの強みは何か・・・私はずっと考え続け、社員にもそう問いかけ続けていた・・・メガネスーパーはメガネに関する専門学校を運営していたこともあり、伝統的にこうした技術力は高いのだ・・私が受けたような専門的なアドバイスを、お客さまに提供するべきではないのか。安売りをやめ、「お客さまの眼の健康」を本気で考える高付加価値企業へと、舵を切った瞬間だった(p151)


・「値段を安くするのは、相手に失礼だ」という話は、自分でも高付加価値のサービスを受ける体験をしていないとわからないかもしれない(p182)


・あくまで一般的にだが、多くのコンサルは、どれほど弁が立つといっても、机上の空論を振り回しているだけ。「現場はこうなっている」という話からロジックを組み立てることができれば、空回りする議論は止められる。「そんな議論はいいから、ほかにやるべきことがあるから」といえる。それができない社長は、いつまでもコンサルに振り回されるだろう(p193)


「0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方」星崎尚彦
星崎尚彦、KADOKAWA


【私の評価】★★★★★(95点)


目次

第1章 「0秒経営」基本その1 業界知識がなくても経済合理性は追求できる
第2章 「0秒経営」基本その2 まやかしの忙しさと決別せよ(とくに赤字企業!)
第3章 実践「0秒経営」その1 すべての仕事は「YES」から始めよ
第4章 実践「0秒経営」その2 業界と真逆に走れ
第5章 実践「0秒経営」その3 1秒悩んで、立ち上がれ



著者経歴

星崎尚彦(ほしざき なおひこ)・・・1966年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、三井物産(株)に入社。主に繊維事業、ファッション事業に携わった後、スイスのビジネススクールIMDへ留学。MBA取得後の2000年、スイスの宝飾メーカー「フラー・ジャコー」日本法人の経営者に就任、短期間で同社業績の飛躍的向上に成功。その後、婦人靴で名高いイタリアの皮革製品メーカー「ブルーノマリ」や、米国のスノーボード用品ブランド「バートン」で日本法人の経営者を務め、2012年にアドバンテッジパートナーズからの要請により、アパレルメーカー「クレッジ」の経営再建を担い、1年半でV字回復を達成。2013年6月、メガネスーパーの再建を任され、2016年に同社9年ぶりの黒字化を果たす。2017年11月には株式会社ビジョナリーホールディングスの代表取締役社長に就任


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