「米中戦争前夜―新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ」グレアム・アリソン
2020/01/02公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(91点)
要約と感想レビュー
覇権国と新興国の主導権争い
レーガン政権からオバマ政権まで国防長官の顧問であった著者が教える、米中戦争のシナリオとその可能性です。まず、新興国と覇権国が軍事衝突するという「トゥキディデスの罠」を紹介し、その構造を明らかにします。
新興国は実力に応じた地位を求め、覇権国は新興国を生意気に感じ、厳しく対応しがちになります。家族で言えば嫁と姑の主導権争いと同じ構造であり、一方が妥協しなければ争いは避けられないのです。
例えば、新興国と覇権国との競争がヒートアップすると、それぞれの国内で強硬派の声が大きくなるのです。すると必然的に、新興国と覇権国とで脅威論が高まり、平和を唱える指導者は軟弱として批判され少数派となってしまうのです。
新興国シンドロームは、新興国が自分自身やその国益に対する意識を強め、他国からの承認と敬意を得たがるという特徴がある。覇権国シンドロームはその反対で、既存の大国が「衰退」の気配を感じて、恐怖や不安を高めることを特徴とする(p66)
アメリカと中国共産党は経済戦争中
覇権国家であるアメリカと中華帝国を自認する中国共産党は、すでに経済戦争に突入しています。この本では、いかに小さい火種から過去に本格的な戦争に突入した例が、数多く示されています。
経済的な結びつきが強くなると戦争にならないとか、経済戦争が実際の戦争に発展するはずがないと主張する人もいます。しかし、過去の歴史は日本とアメリカが戦争をしたように、いかに経済的な依存が大きくても、経済戦争から実際の戦争に突入した例は多いのです。
また、核兵器を持った国家同士が本格的な戦争に突入すれば、お互いの国家が消滅するということはそれぞれの指導者は理解しています。それでも実際の国際政治においては対立がエスカレートし、相互不信から核兵器使用直前の事態が何度もあったという。
「ナンバーワン」を自負する二つの国がぶつかれば、痛みを伴う調整が必要になる。中国が、宇宙には二つの「太陽」があることを受け入れるほうが難しいのか、それともアメリカが、自分たちとは違う超大国、ひょっとすると自分たちよりも上の超大国と共存しなければならいない現実を受け入れるほうが難しいのか(p192)
シナリオを事前に作り検討
もちろん世界大戦を避ける可能性は存在しますが、いかに小さな判断が、国家と人類を破滅に向かわせるのかがわかりました。自衛のためにとった措置や、定例的な軍事訓練を、相手国が脅しと受け止めることは多いのです。
対立する国家は、より正しい判断をするために多くのシナリオを事前に作り検討しています。そうした周到な準備にもかかわらず過去に全面戦争は起こっており、その結果多くの人命が失われ多くの国家が衰退してきたのです。「桜を見る会」や「モリカケ」を問題にする国会のレベルの低さが悲しくなりました。
アリソンさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・米中、もし戦わば・・そのとき、世界のどの国よりも影響を受けるのは日本である・・日本は中国が太平洋に進出するのを阻むバリケードのような形でユーラシアの東のオフショアに位置する(p7)
・中国の対外観は、「天に二つの太陽は存在しない。地に二人の皇帝は存在しない」・・・「『私は孫たちに、中国の支配する世界で暮らすことになってほしくない』」というヒラリー・クリントンの言葉はほとんどのアメリカ人の思いを代弁・・(p11)
・中国は影響力を拡大して、近隣諸国とアメリカの関係を弱めようとするだろう。中国に対して統一戦線が張られるのを防ぐため、「野蛮人同士を対立させる」可能性もある。たとえば、日本と韓国を対立させたり、ロシアとアメリカを対立させたりするのだ(p208)
・中国政府は"ソフトパワー"という武器を使うことにも長けている。相手が現実を理解していないか、現実に抵抗する姿勢を見せると、経済的なアメとムチ(貿易、制裁、投資、賄賂、盗み)を駆使して、言うことを聞かせるのだ(p37)
・国家運営で最も難しいのは、「自国の国家安全保障を傷つける可能性が極めて高い、国際環境の変化」に気がつくこと、とされていきた。それも、「脅威がどのような形をとり、表面的にはいかにそれが正当に見えようとも抵抗すべき」変化だ。中国がアメリカよりも強大になることは、そうした変化なのか(p291)
・この10年、私は、国家安全保障戦略に関する公的文書をまともに読んでいる国家安全保障チームの高官に会ったことがない・・・本当のところ、アメリカには戦略など存在せす、あるのは希望にすぎない(p317)
・核兵器と核物質の増加・・とりわけ北朝鮮とパキスタン・・核拡散の脅威を解決すれば、核テロリズムだけでなく、韓国や日本などの国に核が拡散する危険も削減できる。だが、それに失敗すれば、私たちが生きている間にムンバイやジャカルタ、ロサンゼルス、あるいは上海の上空で、核兵器が爆発する危険を覚悟しなければならない(p305)
▼引用は下記の書籍からです。
グレアム・アリソン、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★★(91点)
目次
序章:人見知りの少年が「無敗営業」になったきっかけ
第1章:営業とお客さまの「ズレ」は、情報ギャップから生まれる
第2章:情報ギャップを乗り越えて接戦を制する「3つの質問」
第3章:お客さまとのズレを解消する「4つの力」
第4章:お客さまを深く理解する「質問力」
第5章:お客さまに必要とされるための「価値訴求力」
第6章:お客さまの意思決定を助ける「提案ロジック構築力」
第7章:お客さまと共に段取りを進める「提案行動力」
第8章:「ルート型」「アカウント型」で4つの力を発揮する
著者経歴
グレアム・アリソン(Graham Allison)・・・マサチューセッツ州ベルモント在住、1940年生まれ。政治学者。ハーバード大学教授。同大ケネディ行政大学院初代学長、同大ベルファー科学・国際問題研究所長(本書刊行時)を務めた。専門は政策決定論、核戦略論。レーガン政権からオバマ政権まで歴代国防長官の顧問を、クリントン政権では国防次官補を務めた。
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