「クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国」若桑みどり
2019/11/29公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
キリスト教信者が九州全人口の30%をこえる
ローマ教皇来日のニュースを聞いて手にした一冊です。1550年頃イエズス会が日本に入り、少年使節をヨーロッパに送りました。キリシタンは九州の人口の30%にも達していたという。
面白いのは当時のカトリック教会は現在のカトリックのように金権主義と腐敗で宗教改革を招き、多くの信者を失っていました。そうした中で遠くアジア、アメリカに信者を獲得しようとしており、日本からの少年使節団は歓迎されたのです。
1583年に日本の宣教師が最高6クルザドスまで金を貸し付けることができるようイエズス会の総会長に、許可を願い出ているという。利息は年10%で、当時、日本人の金貸しの利息は年70から80%だったので、貧民の救済事業をイエズス会が行っていたことがわかります。
なぜ、伝道後数十年にして信者が九州の全人口の30%をこえる30万に達したのか・・キリスト教がまず貧民の救済事業を行ったことが大きく関係している(p33)
信者を失ったカトリック教会
ところが少年使節団が日本に帰ってきた1596年には、日本でキリスト教は迫害されていました。キリスト教受難の時代だったのです。時代は戦国時代。信長がキリシタンと連携して仏教を迫害した後に、秀吉がキリシタンを使って九州を平定し、その後キリシタンを迫害したのです。
また、宣教師の中にも軍人がおり、日本や中国についても、武力によって征服して、手っ取り早くカトリック信仰を宣布すべきだと、場合によっては軍事侵略を考える人もいたという。当時の日本の貧しさ、日本と海外の思想・科学技術の差などが頭の中に浮かびました。
異教徒を説き伏せる論点
イエズス会で異教徒を説き伏せる論点が、三つあったという。第一に、仏教や新道いずれの宗派でも救いが不可能であること。第二に、創造主である唯一の神が存在すること。第三に、魂は不滅であり、唯一の神を認め、その掟を遵守した者が永遠にわたって幸せを楽しめる別の世界に入れることです。
にわかには信じがたいかもしれませんが、九州の貧民はキリスト教を選んだのです。今のローマ教皇はバチカン初のイエズス会出身です。本書のイエズス会のザビエルが来日から、今回のローマ教皇来日が繋がりました。550ページはすごいボリュームで文献を読むようなもので楽しめました。若桑さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・信長が仏教勢力を屈服させる梃子としてキリスト教徒を用いた・・・キリシタンは、信長は仏教を滅ぼす神の手だと思っていた(p195)
・九州征伐は、キリシタンの武将たちにとって一種の十字軍となった。キリシタンだった有馬、大友の同志を救うための、キリスト教的信念に基づく戦争であるから、彼らにはたたかう理由があった(p394)
【私の評価】★★★★☆(83点)
目次
第1章 マカオから大きな船がやってくる
第2章 われわれは彼らの国に住んでいる
第3章 信長と世界帝国
第4章 遙かに海を行く四人の少年
第5章 ローマの栄光
第6章 運命の車輪
第7章 迫害
第8章 落日
著者経歴
若桑みどり(わかくわ みどり)・・・1935年、東京生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科卒業、1962‐1964年、ローマ大学留学。川村学園女子大学人間文化学部教授、千葉大学名誉教授。1980年サントリー学芸賞、1984年芸術選奨文部大臣賞、1996年イタリア共和国カヴァリエーレ章
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