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「中国・アジア外交秘話」谷野 作太郎

(2019年9月 9日)|本のソムリエ
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中国・アジア外交秘話

【私の評価】★★★☆☆(79点)


■外務省のチャイナスクールと言われる人は
 どのような考え方をするのかと
 手にした一冊です。


 著者は1979年の鄧小平の改革・開放時は、
 アジア局中国局長として中国へのODAを
 開始させています。


 1989年の天安門事件時には
 外務省アジア局長の職にあり、
 1992年の天皇、皇后陛下の中国訪問を
 宮沢喜一内閣で実現しています。


 さらに、1993年の宮沢内閣での「河野談話」、
 1995年の村山内閣での「村山談話」を
 内閣官房内閣外政審議室長として作成。
 その後1998年から中国大使。
 すばらしい実績です。


・ここですごいのは鄧小平さん。彼は天安門に大挙して集まった学生や知識人たちを人民解放軍の出動を命じて制圧した人ですが、その彼のすごいところは、そうするかたわら、この時保守的なムードにかたむきがちな中国国内に対して「改革・開放」は続けよ、とハッパをかけ続けたところです(p88)


■著者の主張を抜き出してみると
 次のとおりでした。


 中国は2020年代中頃には民主化するだろう。
 中韓の挑発には、日本は辛抱強く反発しないこと。
 共産党政権を支持するのは小異。経済が大同。
 AIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加すべき。
 米国とは距離を置くという長期的策謀が必要。
 慰安婦で朝日新聞を攻撃するのはいかがなものか。


 米国の凋落と中国の発展という視点から、
 米国から中国に乗り換えて、
 中国共産党に協力しようという
 考え方のように私には読めました。


・慰安婦報道をめぐって・・朝日新聞の罪はけっして小さなものではなかったにしても、これに対し、繰り返し繰り返し筆を揃えて執拗に襲いかかる一部のメディア、「社会の木鐸」というメディアの本来の仕事はどこへ行ってしまったのだろう、と思った次第でした(p321)


■全体の印象としては外務省の重責を
 担った人にしては発言が軽いというか
 引用・伝聞を活用し、自分の意見として
 言わない工夫をしています。


 また、もっともらしい理由をつけながら
 どこかに誘導しようとするところがあり、
 記載内容と本音とに表と裏を感じました。


 いずれにしろ決断するのは政治家なので
 過去の実績について官僚としての自分の責任、
 罪の意識はないのでしょう。


 谷野さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・外務省の先輩たちの中には、その後、政治家田中角栄氏を慕う人は少なくありませんでした。日中関係は往々にして日・日関係(もう一つの「日」は、同じ日本の自民党の強力な親台派の方々)と言われます。そこのところを「ここは君たちの仕事でなくて、ボクの出番。任せておけ!」とおっしゃって、きちんと対応してくださったということです(p71)


・私たち日本人は、中国が先に述べたような大きな網をかけて向かってくるのに対して、とかく細部の「問題点」ばかりをあげつらい、議論に耽り、一緒に考えてみようともしない。最近の例で言えば、あのAIIB・・(p293)


・ある在日の中国人学者は、今懸命に進めている「トラ・ハエ退治」にせよ、習近平のもとへの「権力一極集中」にせよ、それは、いずれは中国として取り組まなければならない政治改革、民主化への下準備であり、そしてそのことは、ポスト習近平政権、時期にして2020年代半ば頃から始まるだろうと予測しています(p112)


・大平総理の訪中では結局、日本政府は円借款についてはインフラ整備の6事業に対し、初年度として500億円の供与を約束しました・・・反対派の意見としては「共産党政権に、国民からいただいた、預かったお金を原資としたODAを貢ぐなど、とんでもないこと」・・・外務省の中も、これを進めた当時のアジア局を別とすれば、反対論、慎重論(円借款はダメ、技術協力ぐらいに止めておくべし)の方が多かった・・・(p125)


・当時、日本政府の中枢(大平総理、伊藤正義官房長官、大来佐武郎外務大臣、佐々木義武通産大臣)にあった方々は、「日本は鄧小平の改革・開放政策を官・民で支援する。それは、日中両国のため、アジアのため、そして世界のため」ということで考え方は一致していました(p126)


・天皇、皇后陛下の中国ご訪問・・・しかし結局、この件も時の総理(宮沢喜一氏)、官房長官(加藤紘一氏)、そしてなかんずく渡辺美智雄外務大臣の強い意思とご訪中に向けての周到な準備と根回しを経て、10月のご訪中となりました。(p132)


・中国と日本は、国柄・政治の仕組み・経済の発展段階・その他いろいろなところが違う。しかし、それらはいわば「小異」、それらをひとまず横に置いて、中日の平和・友好・協力関係という「大同」に就こう。それが、両国の利益であり、アジア・世界の利益ではないか、と(p170)


・「村山談話」をめぐるエピソード・・「談話」発表直前に内閣改造があり、官房長官が五十嵐広三さんから野坂浩賢さんに代わり、野坂長官が、これは閣議決定の手続きをとると言い出したこと・・閣議で紛糾して通らなかったどうしようと・・内閣参事官室の人たちが閣僚方に事前の根回しに参上しました。「案文はお見せしてもよいが、絶対に置いてくるな」というのが、総理、官房長官のご指示でした(p182)


・慰安婦問題についての例の「河野談話」・・・「発見された公文書等には、軍や官憲による慰安婦の組織的な強制連行を直接的に示すような記述は見られなかった」、それはそうでしょう・・そのようなヤバイ話を記録に残すようなことをするはずがない・・・「(慰安婦の)の任にあたる者」「業者」だった人たちからも聞き取り調査・・「自分たちは、軍服姿で、軍刀を吊ったいでたちで任にあたったものだ」と語る向きも少なくありませんでした。「河野談話」にいうところの「強圧」ですね・・・「官憲等」というのは、当時の朝鮮半島にあって、軍人、巡査(多くは朝鮮の人でした)、村の職員などを示すものです。慰安婦を集めるにあたってこういった人たちが立ち合う、これも「強圧」でしょう(p218)


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谷野 作太郎
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【私の評価】★★★☆☆(79点)


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■目次

第1章 日本と中国:国交正常化までの道程(1)
第2章 日本と中国:国交正常化までの道程(2)
第3章 最近の中国情勢と日中関係(1)
第4章 最近の中国情勢と日中関係(2)
第5章 尖閣問題、南シナ海問題とどう対峙すべきか
第6章 「歴史」の問題にいかに向き合うか
第7章 慰安婦問題:日韓間の決着を受けて
第8章 アジアの巨象インド-インド万華鏡
第9章 台湾、そして中国アラカルト
第10章 最近の中国、日中関係について思う



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