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【書評】「地元がヤバい...と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」木下 斉

2019/09/10公開 更新
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地元がヤバい...と思ったら読む 凡人のための地域再生入門


【私の評価】★★★★★(96点)


要約と感想レビュー


独自の商品をつくり出す

著者は高校時代から商店街活性化に取り組み、各地で出資、共同経営に取り組んでいる地域再生のプロフェッショナルです。実際の現場では、やる気のない既存の商店街オーナーの面々、国からの補助金だよりの役人など簡単にうまくいく世界ではありません。


その一方で、小さくても立地が悪くても顧客がやってくるような魅力のあるサービス・商品を提供できれば事業は成り立つという。うまくやっている人は、大型店舗が狙ってこれない、規格化されていない独自の商品をつくり出しつつ、規模は徹底して小さく、粗利率60~80%を狙えるような商売をしているというのです。


商店街の活性化・・・実際には新たな取り組みを潰そうとする地方の権力者、他人の成功を妬む住民、補助金情報だけで生活する名ばかりコンサル、手柄を横取りしようとすり寄る役人など、様々な欲望が渦巻いています(p4)

国の予算は地方にとっては毒

面白いのは、国や自治体の交付金、補助金は百害あって一利なしと断定しているところでしょう。まず参加者が身銭を切っていないから、だれも本気にならないので大きな成果が出ないというわけです。


著者なら民間として自分でやりきりますが、地方自治体は国がわざわざ予算をつけるので、外注先に任せてばかりで成果が出ることはないのです。国の予算は地方にとっては毒、麻薬にも等しいのです。


さらには、民間の事業に国が金を出すと市場が歪み、事業環境が激変し、民間事業者が右往左往してしまうという。最悪なのは、国の交付金、補助金で稼ぐどころか維持費だけで赤字となる箱物が作られることだというのです。


最初の頃は信念持って自立して事業やっとったはずでも、いつの間にか補助金がどうやとか、役所と付き合っておいしい話はないかと画策し始めて、転落していくやるはようけおる。自分で市場と向き合うより楽な道を選んだら最後、戻ってくられへんぞ(p282)

国の予算は地方にとっては毒

新しいことをやるなら、今の構造を変えるより、自分でゼロから立ち上げることだという。既存の取り組みを変えることへの抵抗はすさまじく、政治家が出てきたり、地元のヤバい人が大暴れしたり、脅迫を受けたり、怪文書が流れたりするという。


つまり地方で新しいことを起業するということは、誰かに反対されたり、悪口を言われるってことはなのです。成功すれば文句を言われるし、失敗してもほらみたことかと言われることを想定しなてくはいけないのです。


地方のスモールビジネスの現場を仮想体験できる一冊でした。そして、「人間は失敗したあとにどう行動するかで価値が決まる」という言葉に勇気をもらいました。こんなリアルな地域再生本ははじめてだ!木下さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・人通りがない路地裏であろうと山の上だろうと、しっかりと顧客を絞って、いいサービスを提供する店は経営が成り立っている・・自分の店を目指して来てくれる人がいるような商売をしなくてはならない(p46)


・何かに失敗したときにこそ本当に評価してくれていた人と、そうでない人がよくわかる(p211)


・「会議をやるだけなら時間と金の無駄遣いやぞ。その場で結論出すんが一番や」が、佐田の口癖だ。僕は10年間、結論の出ないダラダラした会議をして給料をもらってきた(p163)


・役所が予算なんか出してやってもあかん。誰も身銭切ってないから本気にならへんねん。儲かりもせんことにみんなで時間つかってりゃ、そりゃ活性化どころか衰退するわ。だから、おれは一切役所の予算頼みのイベントなんか付き合わんことに決めとる(p49)


・ここに3000万円の予算があるんだからわざわざ安くやる必要はないんだよ。これは公共的な事業だから、全部つ・か・い・き・るの。そういうもんなんだ(p202)


地元がヤバい...と思ったら読む 凡人のための地域再生入門
木下 斉
ダイヤモンド社
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【私の評価】★★★★★(96点)


目次


第一章 シャッター街へようこそ
第二章 たった一人の覚悟
第三章 見捨てられていた場所
第四章 批評家たちの遠吠え
第五章 稼ぐ金、貰う金
第六章 第六章 失敗、失敗、また失敗
第七章 地域を超えろ
第八章 本当の「仲間」は誰だ
最終章 新しいことを、新しいやり方で、新しい人に



著者紹介


木下斉(きのした ひとし)・・・1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを東北芸術工科大学、公民連携事業機構等と設立し、既に350名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。


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