【書評】「潜在意識マーケティング6つの心理戦略」フィル・バーデン
2019/06/18公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(71点)
要約と感想レビュー
デフォルトの値段を高めに設定
この本は、心理学的な手法を使って売り上げを上げる方法を紹介した一冊です。
例えば、顧客に選択肢から選ばせる場合、デフォルトの設定を高めにしておくという手法があります。アメリカでUberタクシーに乗った際、支払い後のチップ画面には3つの金額が表示され、その中から選ぶか、自分で金額を入力するかを選べる仕組みになっていました。
実際、2007年にニューヨーク市がタクシーのクレジットカード決済を義務づけ、タッチスクリーンシステムを導入した際、あらかじめ20%・25%・30%という3種類のチップ料金が表示される仕組みが採用されました。それまで平均10%程度だったチップは、このシステム導入後に22%まで上昇したといいます。
チップ画面に表示される金額をあらかじめ高めに設定しておけば、多くの人はその中から選んでくれるのです。
2007年、ニューヨーク市はタクシードライバーにクレジットカードによる料金支払いの受け入れを義務づけ、タッチスクリーンシステムが導入された。乗客は料金を支払うとき、あらかじめ設定された3種類のチップ料金、20%、25%、30%のいずれかのボタンを押さなければならない・・チップは平均10%程度だったが、このシステムの導入後は22%まで上昇した(p160)
データに基づくマーケティング最適化
この本を読むと、アメリカは結果の出るマーケティングが進んでいるとわかります。クーポンによる集客、お試しセットによる見込み客の獲得、広告のA/Bテストなど、データに基づいた施策が数多く紹介されています。
同じ予算を使うのであれば、成果が出る方法を選ぶべきだという発想が徹底されているのです。著者は、テレビCMの最後に表示するメッセージの字体について何時間も議論するよりも、購買行動に直結しやすいクーポンを導入するほうが、よほど売り上げや利益につながると指摘しています。
日本でも無料サンプルでの集客や、テレビでの認知拡大からカタログ送付につなげる手法など、同様の工夫は行われています。マーケティングに国境はなく、世界で一番効果的な方法を取り入れればよいのです。
テレビCMの最後のメッセージの字体について、何時間も意見を主張しあうよりも、購買行動につながりやすいクーポンを導入するほうが売り上げや利益につながる(p4)
小さな仕掛けが行動を変える
本書で特に興味深かったのは、ごく小さな環境の変化が、人の行動を大きく左右するという実例です。
アイスクリーム用冷蔵庫のふたを透明から半透明に変えただけで、アイスクリームを食べる学生の割合は30%から14%に減少したといいます。
逆に、壁際にあったサラダバーをレジ近くに移動させたところ、サラダの消費量は3倍近くに増加しました。見えやすさ、近づきやすさという些細な条件が、選択そのものを変えてしまうのです。
ピザのトッピングも「追加していく」方式と「全部のせから削っていく」方式を比較したところ、いずれの国でも、削っていく方式のほうが最終的なトッピングの種類が2倍になったといいます。
臓器提供の承諾率についても、国による差は倫理観や宗教観の違いではなく、登録方式が「加入」か「脱退」かというデフォルト設定の違いによるところが大きいと指摘されています。デフォルトの力がこれほど人の意思決定を左右するという事実は、マーケティングだけでなく社会制度の設計にも応用できる重要な知見だと感じました。
臓器提供のドナー・・ドナーの承諾率・・・きわめて高い国々もあれば(オーストリア、フランス)、逆に低い国々もある(イギリス、ドイツ)・・その差の原因は、倫理観や社会的風潮、宗教的立場の違いではなく・・イギリスの場合は主体的にドナーとして登録(「加入」)するが、オーストリアの場合は拒否(「脱退」)しなければドナーになるのがデフォルトになっている(p159)
価格と価値の心理学
価格設定も、重要です。スティーブ・ジョブズが初代iPadの発表会で見せた「アンカリング」の手法は、専門家の予想として「1000ドル以下」という数字を示した上で、「999ドルではなく、わずか499ドルで発売できる」と発表しました。--高い基準を先に示すことで、実際の価格を割安に感じさせる手法です。
また、フォルクスワーゲンのシャランとフォードのギャラクシーが同じ工場で作られる同一車種であるにもかかわらず、消費者はシャランが2000ユーロ高くても受け入れるという事例も紹介されています。「高品質であれば高価格である」という潜在的なルールが、ブランドの価値認識に大きく影響しているのです。
パッケージの形状ひとつにも工夫の余地があり、縦長のパッケージのほうが容量を多く感じさせ、価値認識を高められるといいます。価格や商品を取り巻くすべてが「価値」を決めているのだと思いました。
バーデンさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・オフィスの給湯室・・コーヒー、ミルクなどの代金箱・・ある実験で、箱のそばに目の切り抜きを貼っておくと、大幅に代金の回収率が高くなった(p28)
・オンラインショッピングの購入までのプロセスを少し変えただけで、売り上げが45%増加・・・変更前、初めての利用者はメールアドレスを登録しなければ支払いができず・・「登録」ボタンを削除・・「次へ」ボタンを導入し、「このサイトでの購入にはアカウントの開設は必要ありません・・・支払い時にアカウントを作成いただければ、次回の購入手続きはさらに簡単になります」というコメントを加えた(p67)
・フレーミング:背景によって前景のグレーの濃淡が違って見える(p35)
・高額な価格設定は、「高品質であれば高価格である」という誰もが知っている潜在的ルール・・(p59)
・どのような状況で自社ブランドを一番に想起してもらいたいかを明確にすることである(p75)
【私の評価】★★★☆☆(71点)
目次
序文 大転換の時代
はじめに 科学の目
第1部 意思決定 効果的なマーケティングのための科学的アプローチ
第1章 意思決定の科学 消費者行動の背景を理解する
第2部 真実の瞬間 購入判断はいかにして下るのか
第2章 購入判断の基本的原則 購入へと至る意思決定を解明する
第3部 インターフェースの解析 消費者の心に届くマーケティング活動とは
第3章 「知覚」の扉 自動的思考システムがシグナルを知覚する仕組み
第4部 行動への影響力 最適な意思決定のインターフェースを考える
第4章 購入プロセス 意思決定のイ接点ンターフェースが持つ影響力
第5章 目標 意思決定の高度な基準
第5章 原動力 購買行動のきっかけとなるもの
第6部 ポジショニングとインターフェース 有意義な価値を提案する
第6章 ギャップを乗り越える 目標と価値を結びつける
著者経歴
フィル・バーデン(Phil Barden)・・・ユニリーバ、ディアジオ、Tモバイルなど大手企業で25年以上にわたってマーケティング実務に携わり、統括責任者としても活躍。その後コンサルティング会社のデコードに移る。マーケティングと科学の融合を目指している。
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