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「コンクリート崩壊 危機にどう備えるか」溝渕 利明

2019/05/16公開 更新
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コンクリート崩壊 危機にどう備えるか (PHP新書)


【私の評価】★★★☆☆(72点)


要約と感想レビュー

 コンクリートの寿命は永遠ではありません。特に、戦後のコンクリート構造物は海砂が使われていたり、アルカリ骨材反応への対応ができていなかったりして、寿命末期となっているものも多いという。問題なのは、コンクリートは補強はできるものの、鉄筋のサビやアルカリ骨材反応によるひび割れには、取替るしか抜本的な対策がないことなのです。


 そして今、東日本道路公団では、高速道路のリニューアルプロジェクトを実施中だという。アルカリ性のコンクリートの中の鉄筋は錆びないはずなのに、錆びて、コンクリートがぼろぼろになっているらしいのです。これは、融雪剤の塩素が影響している場合もあるし、かぶり厚さ不足もあるという。さらには、コンクリートのガンと言われるアルカリ骨材反応もあるらしいのです。


 著者が恐れるのは韓国のように、ビルや橋やダムが崩壊することです。日本ではコンクリート構造物の崩壊はあまり聞きませんが、コンクリートの一部が剥がれて落下する程度のことは頻繁に起きているのです。特にコンクリートは表面からはひび割れくらいしか見えませんので、内部がどの程度劣化しているのか評価しにくいことから、対策が後手後手となる恐れがあります。


 日本では、アルカリシリカ反応を起こさせないようにするための対策として、第一にアルカリシリカ反応を生じる可能性のある骨材を用いない、第二に、セメントから供給されるアルカリ総量を規制したセメント(低アルカリセメント)の使用、第三に、高炉スラグセメントやフライアッシュセメントの混合セメントの使用のいずれかを使うこととなっています。こうした対策の結果、アルカリシリカ反応によるコンクリートの劣化は大幅に減少しているものの、その後も「無害でない」骨材に近い「無害」な骨材を用いてアルカリシリカ反応による劣化が起こったという報告があるのです。


 外国だとアルカリ骨材反応が起こらないように、日本の第三の対策である高炉スラグやフライアッシュをコンクリートに入れるが常識なのに、日本ではあまり活用されていないらしいのです。これだけコンクリートを使っているのに、100年もたないコンクリートを使っているとは、ある意味驚きです。コンクリート、セメントについてはまだまだやるべきことが、残っているのかもしれません。


 著者の提案は、コンクリート技術継承のためダムなどのコンクリートを使った大型プロジェクトを計画的に実施すること。また、コンクリート診断士のような資格制度を強化することです。技術継承しながら人を育て、合わせてコンクリートの現場技術のレベルを上げていくことなのでしょう。未だにアルカリ骨材反応が起きているとの指摘もありますので、今後も調査していきたいと思います。溝渕さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・予防管理維持・・・NEXCOでは供用前の新東名拘束道路の橋梁で、全面に撥水剤を塗布する工事を数億円かけて行っている(p170)

・エコセメントは、都市ゴミや焼却灰や下水汚泥(この中にはセメント原料に用いる粘土の中に含まれるケイ素などが含まれている)を主原料として、普通セメントの製造技術を応用した方法により製造される・・実はエコセメントには一般に使用されているセメントに比べて10倍以上の塩素が含まれている(p86)


・エポキシ樹脂鉄筋を用いた実験では全塩分量が1%であっても15年間は腐食を防止できたという報告がある(p92)


・コンクリートは、1℃の温度変化に対して1m当たり約0.01㎜伸びたり縮んだりする・・コンクリートは約10×10^-6 m/Kだが、鉄は約12×10^-6 m/K(p61)


▼引用は下記の書籍からです。
コンクリート崩壊 危機にどう備えるか (PHP新書)
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【私の評価】★★★☆☆(72点)


目次

序章 現代社会に響くコンクリートの悲鳴
第1章 現代社会を支える鉄とコンクリート
第2章 コンクリートとは何なのか?
第3章 コンクリート構造物は本当に安全なのか
第4章 コンクリートの寿命
第5章 コンクリート構造物の人生設計
第6章 「コンクリートから人へ」がもたらした弊害
第7章 コンクリートの崩壊を防ぐには
第8章 コンクリートドクターが危機を救う



著者紹介

 溝渕利明(みぞぶち としあき)・・・1959年岐阜県生まれ。82年に名古屋大学工学部土木工学科を卒業。84年に同大学大学院工学研究科土木工学専攻博士前期課程を修了し、鹿島建設株式会社に就職。同社技術研究所土木部第2研究室、広島支店温井ダム工事事務所などを経て99年にLCE(Life Cycle Engineering)プロジェクトチームに配属。2001年、法政大学工学部土木工学科専任講師に着任し、03年助教授。04年より教授。博士(工学)。コンクリートの"寿命"や維持管理について研究を行っている


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