【書評】「衰退の法則 日本企業を蝕むサイレントキラーの正体」小城 武彦
2019/03/11公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
破綻企業の共通点
産業再生機構に勤務していた著者が、破綻企業の共通点を研究した一冊です。
破綻企業の特徴はよく言われるとおり、社内の対立を回避するために社内調整がたいへんなこと。官僚以上に官僚的だったりします。
そして何を言ったかではなく誰が言ったかが重要視されること。事実をベースにした議論や方針決定がされていないのです。
破綻企業には、1社内の対立を極力回避する、2役職や入社年次といった社内秩序を強く重んじる、といった二つの共通点が存在する(p52)
破綻企業の幹部は無能なのに偉い
破綻企業には負のスパイラルがあるという。それは、事実をベースにした議論ができなくなり、社内に派閥を持つ無能な人が出世する。そして無能な人が出世すると、さらに事実をベースにした議論が通らなくなっていく。これが破綻企業のスパイラルです。
破綻企業の人事評価は、好き嫌いだったりするという。何かをやったからではなく、人間関係が上手か下手かの基準だったりするのです。基準は、上司との折り合いの善し悪し。社内で嫌われてしまうと人事評価に悪い点がつきます。何か新しいことをやっても人事評価には良い点がつかないのです。
対照的に、よい企業では何を言っているのかが評価の基準です。そのため、年齢の若さ、経験の少なさがハンディとなりにくく、市場、顧客に接している最前線の人間、若手の意見が通りやすい風土が形成されていることが多いというのです。
結局は、だれを出世させるのか、というところに落ち着くのです。人事が大事なのですね。
(幹部は)無能なのに偉い。実務のことをわかっていない・・われわれ(再生機構等)が関与してから、その場で意見を出し合ってモノを決めるということをやり始めたため、彼らの無能さがあからさまになってしまった(p92)
どこが儲かっているかわかっていない
こうした危機感のない企業では、利益が出ているうちはよいのですが、環境が変わったときに何もできなくなってしまうようです。
そもそも会社のどこが儲かって、どこが損しているかがわかっていない。それを指摘する人もいないし、部外者が指摘しても動かないし、経営から指摘することもない。その逆を言っているのが優良企業なのでしょう。
小城(おぎ)さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・再生専門家の指摘・・
・「組織内に危機感がない」・・
・「社内では顧客の視点や競合の話がなく、内向きの話ばかり」・・
・「トップも社員も表層的な数字ばかりを追いかけ、議論が現場の実態に迫っていない」(p5)
・カルロス・ゴーンの見た日産・・・
1・・経営陣は数字を知りませんでした・・その車が利益をあげるのか、それとも損失をもたらすのか、よく知らないままに車を売っていたのです・・
2・・口で言うわりには、ユーザーについて考えていなかった・・
3・・『いつまでにできるか?』と尋ねると、私が思っているよりも10倍の時間が返ってきました・・
4「ヴィジョンがないこと」(p10)
・組織の<重さ>・・・
1過剰な「和」思考・・
2経済合理性から離れた内向きの合意形成・・
3・・「社内評論家」や・・当事者意識の低い人間、・自分の仕事を部下に「丸投げ」するような管理職・・
4経営リテラシー不足(p14)
・「〇〇さんが社長になっても何もできなかったのは、自分の派閥を持っていなかったから。その前の△△さんは、ビシッと派閥を持っていた。彼が夜、銀座で何かすると、系列が軍団として動く・・有力な部長でも派閥の役員が言うとしっかり動くが、派閥外の役員に言われても面従腹背(p60)
・事前調整・・・特に、いわゆる「声の大きい人」、すなわち政治的な集団に属し、大きな影響力を有する人物に対しては、会議の場で不規則発言を言わないように、周到に根回しが行われる(p75)
・破綻企業では「偉い人ほど暇になる」傾向があり、平日の夜と週末の予定だけが立て込んでいる・・平日の昼は何をしているのかというと、自らイニシアティブをとって戦略的に顧客先や提携候補先などに出向いたり、各事業所などの現場を訪問するというよりも、スタッフからの説明を受けたり、社内行事に参加したり、外部からの表敬訪問を受けるといった「受け身」の業務がポツポツと入っている程度のことが多い(p217)
・事業は縦割り。他人のことに口を差し挟まない・・横と話をするのは本部長のミッションではなく、上からそれを促進する人もいなかった。人事交流もなし。横串を刺す人もいなかった(p248)
・自分たち(再生機構等)が入って、月次の経営会議で競合の売上げデータをなぜ見ないのかと言ったら『あっ、そんなことやるんですか?』みたいな感じで、初めて競合の状態を見るようになった。それまでは、自社だけ見ていたということ(p256)
・優良企業の特徴・・・
1事実をベースとした議論を尊重する規範、
2人事部局の統制に基づく公正な人事登用プロセス(p236)
【私の評価】★★★★☆(83点)
目次
序章 破綻企業に共通する「衰退の法則」をあぶり出す
第1章 破綻企業の内側
第2章 日本企業への文化の影響
第3章 優良企業の内側
第4章 オーナー系企業の内側
終章 日本企業への警鐘
著者経歴
小城 武彦(おぎ たけひこ)・・・日本人材機構代表取締役社長。1961年東京都生まれ。1984年東京大学法学部卒業、通商産業省(現・経済産業省)入省。1991年プリンストン大学ウッドローウィルソン大学院修了(国際関係論専攻)。1997年カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社入社、代表取締役常務などを経て、2004年株式会社産業再生機構入社、カネボウ株式会社代表執行役社長(出向)。2007年丸善株式会社(現・丸善CHIホールディングス株式会社)代表取締役社長を経て、2015年より株式会社日本人材機構代表取締役社長。2016年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。株式会社西武ホールディングスと株式会社ミスミグループ本社の社外取締役、金融庁参与を兼務。
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