「大相撲の不思議」内館 牧子
2019/01/28公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
テレビドラマなどの脚本家であり、横綱審議委員である内館さんによる大相撲の解説です。貴乃花が日本相撲協会を退職した頃に出版されており、日本相撲協会の闇が書かれているかな~と期待しましたが、普通の内容でした。
大相撲とは日本の国技であり神事であり、興行であります。大相撲が今後、どうあるべきかという問いに答えは出しずらいのでしょう。
・神事は神を祀る儀式であり、昔からのしきたりや方法にのっとって、厳かに進められる。一方、「興行」は料金を取って、スポーツなり芝居なりを見せるものだ(p19)
貴乃花が、相撲の取組みと同じように、日本相撲協会にもガチンコを持ち込み反発を受けていたような雰囲気は伝わってきました。変化を求める人は粛清され、敵を作らない人が出世するのは、組織ではよくあることです。よくあることが普通に起こると面白いというか、人とは変わらないものだなと納得したりしてしまいます。
・「貴の乱」・・大相撲改革を唱え、所属していた二所ノ関一門から離脱。破門された上で、貴乃花一門を結成した・・・平成22年のことである。さらに、理事選に立候補したのである・・無風で無投票で決まることになっていたのに、突然、立候補者がオーバーし、選挙に突入せざるをえなくなった・・・立浪一門(当時)から出た親方が落選してしまったのである(p71)
大相撲はガチンコのプロスポーツなのか、それともプロレス的な興行なのか。この本に答えはありませんでした。また、モンゴル勢が集まって飲んでいて、若い貴ノ岩が殴られたのに、結局、最後には、貴ノ岩と貴乃花が引退となっています。日本相撲協会の力はすごいと思いつつ、その力の秘密はこの本にありませんでした。もう少し調査したいと思います。
内館さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・相撲節会(すまいのせちえ)は奈良・平安時代の宮中行事だ。二十一世紀の会議で、何の違和感もなく八世紀のことを持ち出す社会が他にあるだろうか(p5)
・「男女平等」「男女共同参画」を叫ぶ声があるのは当然であり、また健全なことである。理不尽な不平等は断固として改革していかなくてはならない。問題は伝統文化の世界である(p5)
・かつて「勝ちゃ文句ねえだろ」と言った外国人力士もいたが、「伝統文化」の中には、精神文化も含まれる。日本の精神文化では、勝ち方が汚いと「勝っても文句がある」のだ(p19)
・各一門は「ひとつの単位」として、強固な絆で固く結束してきた。かつては巡業も協会主催ではなく、各一門単位で行われていたし、冠婚葬祭もすべて一門で仕切ってきた(p68)
・横綱審議委員の仕事は・・横綱推挙や引退勧告などの他、東京場所の前に稽古総見がある・・謝礼は一切ない。席を買うのも当然自分で支払う。交通費もない。年六回の委員会の後で食事会があり、帰りだけ車が用意される(p80)
・白鵬は63連勝を重ね、双葉山の69連勝を目前にしていた。ところが平成22(2010)年九州場所、稀勢の里がそれを阻止・・すると突然、観客から「バンザーイ!」という声があがった・・いくら大一番で日本人力士が勝ったからといって、万歳三唱は許されないと問題にした・・しかし、以来、白鳳は立ち合いに変化はするし、猫だましはするし、横綱としての威厳も格も自ら放棄したように見える。さらに、懸賞金を受け取った後、これ見よがしに祝儀袋の束を宙に振りかざすようになった(p103)
・茶屋制度は大相撲を支えてきた。たとえば、各茶屋は協会から決まった枚数のチケットを、常に買い取っている。茶屋やそのチケットを客に販売するわけだが、売れるアテがあろうとなかろうと、常に決まった枚数を返品なしで買い切る。相撲人気が低迷すれば客は入らないので、チケットは売れない。だが、茶屋は買い切りなので、売れない分はすべてかぶるのである・・・こういった茶屋制度によって、大相撲があらゆる冬の時代を乗り越えてきたことは否めない(p177)
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
1章 「神」と共にある世界
2章 人間社会とどう折り合う?
3章 くやしかったら強くなれ
4章 時代に応じた離れ技
著者経歴
内館 牧子(うちだて まきこ)・・・1948年生まれ。三菱重工業勤務を経て、脚本家に。NHK連続テレビ小説「ひらり」「私の青空」大河ドラマ「毛利元就」「義務と演技」「週末婚」など多数。