「ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン」ポール・トーディ
2017/11/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
■物語は主人公がレストランで
1982年物のペトリュス2本を
がぶのみすることからはじまります。
彼は相当の金持ちなのですが、
一人で高級ワインをがぶ飲みし、
歌を口ずさんで他の客から
白い目で見られている。
家に帰っても
別荘から持ってきた高級ワインを
朝から飲んでいる。
彼の飲んだくれの生活は、
事故で死んでしまった妻を
思い出しているからなのでしょうか。
・1982年物のペトリュスをワインリストで
見つけるのは、地面にダイヤが落ちているのを
発見するようなものだ。(p10)
■物語はだんだんと過去にさかのぼり、
妻が死ぬ前の結婚生活に戻ります。
事業を売却し、大量の高級ワインを
手に入れ、新規事業を考える主人公。
妻が不安に思うのは、
昼からワインを飲んでいる主人公が、
それをやめられないことです。
そして、妻の死。
ワインに支配された主人公は、
金も家庭も失ってしまったのです。
・アル中の人間は紫色の液体をグラスのなかで
そっと回して、ワインの芳香を捉え、
ついて一口すすってワインを構成する
複雑な物質を舌に放ちはしない。
ワインの味わいを、ワイン鑑定の際に
認められている語彙でもって説明しようとは
しないだろう。甘いブラックチェリー。
奥のほうにオークの香ばしさ(p87)
■ワインの本ではなく、
ワインに魅せられ、アル中になった
ベンチャー起業家の話でした。
階級社会といわれるイギリス社会の
雰囲気も伝わってきました。
ブラックユーモアなのでしょうか。
トーディさん
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・フランシスから聞いたのだが、
彼は若い頃、自分の買うワインの葡萄園は
ほとんど訪れていたのだ。
この葡萄の栽培者の固い握手を、
あのワインの貯蔵所を、
思い出したりするのかもしれなかった(p210)
・ブラック一族は事務管理をあまり
うまくやってこなかった。
どちらかというとワイン蒐集(しゅうしゅう)に
夢中になりすぎてしまってね。
それと、父の場合はそれを飲むことに。
父も祖父も、二人ともワインを飲むのが好きだった。
二人はこのセラーを築き上げるのに大金を費やした。
そして、ワインを飲むことにも。(p217)
・今や僕は、人生とソフトウエア開発を
同じ尺度で考えることはできないと
わかり始めたのだった。人生はそれ自体、
解くことができない方程式のような
ものではないかと思えてきた。
その方程式の真ん中には、理解せねばならない、
そして数値で表すことのできない
「X」があるのではないかと(p324)
・
・僕はお茶を飲んで、義母を見守った。
彼女は次に何を言おうか考えている。
メアリは、母親ならこうあるべしという
正しい反応をすべて心得ている母親だった。
彼女はそれをほかの母親たちについて
読むことによって知ったのだ。
本のなかで。そのうちどのくらいが
彼女の感情から出たものだったのか、
僕にはわからなかった(p278)
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【私の評価】★★★☆☆(77点)