「魔術師(上・下)」ジョン・ファウルズ
2017/01/16|

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【私の評価】★★★★☆(82点)
■翻訳が硬いこともありますが、
難解で読み切るまで
2週間かかった小説です。
彼女と別れてギリシャに
英語の補助教師としてやってきた
主人公は、一人の富豪と出会います。
その富豪は第一次世界大戦で
戦列から逃亡した経験のある
謎の人物。
そして、富豪のところには
老婆と美女がいた。
主人公は美女に引き付けられ、
イギリスの彼女とは
分かれることにします。
・あなたはそのひとのことを思っている、遭いたいと思っている・・だったらまた手紙を書かなければいけません・・あなたは運を天に任せている。運を天に任せているだけでは、必ず溺れて死にます・・泳ぐのです!(上p213)
■富豪の家では不思議なことが
起こります。
彼女をくどいていると
黒人がそれを邪魔する。
ドイツ軍の兵士が進軍をしてきて、
取り囲まれ、縛り上げられる。
これは現実なのか?
芝居なのか?
だとすれば目的は?
・もちろんこれがトリックで、妹が手伝っているお芝居だってことを、あなたは知っている。それは私にもわかっているわ。でも何から何までお芝居なのかどうかは分からないわよ(上p455)
■どこからどこまでが
富豪のしかけたお芝居なのか、
まったく分からない不思議。
芝居の中で、戦争も自殺も色恋も
精神の病気であるという
メッセージがあるように感じました。
ファイルズさん、
良い本をありがとうございました。
───────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・小説は芸術ジャンルとしての生命を終えたと思いますか・・・たかだか五つ六つのちっぽけな真理を掴むために、なぜ苦労して作り事の文章を何百頁も読まなきゃならんのです・・言葉は真理のためにあるのです。事実のために。フィクションのためにではない(上p137)
・どちらかといえば、私は幸運だったのでしょうね。普通の金持には決して発見できぬことを、たった五年間で発見したのですから。つまり、私たちはだれでも幸福または不幸になる能力を或る程度持っているということ。そして経済的な運不運はそれとは根本的に無関係であるということです(下p121)
・自殺は立派な行為ではありません。絶望は疾病です。ウィンメルの疾病に負けず劣らず邪悪な病気です(下p161)
・男と女は一緒に寝るか寝ないか最初の十分間で分かるというのが、かねてからの私の考えだった。その最初の十分間に続く時間はいわば税金のようなものであり、それは本当に楽しめる相手ならば払う価値があるが、まず十のうち九までは法外に高いものにつくのだ(上p350)
・リリーが通訳した。「飢えは多くのことを教える」「死は私たちから生命を奪います。だから私たちは自分たちの不死をでっちあげることを学ぶのです(上p445)
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【私の評価】★★★★☆(82点)
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