「夏田冬蔵―新米杜氏の酒造り日記」森谷 康市
2016/08/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(89点)
■夏田冬蔵(なつたふゆぞう)
という酒がある。
この酒は、20年前に出版された
今日の本「夏田冬蔵」を記念して
酒造りの基本に戻って造られた酒。
いったい20年前に
何があったのでしょうか。
・「天の戸」では旧式の二つの機械で
二日かかって搾っている・・
「いい酒さえ造っていれば・・」
これが社長の口癖である(p113)
■当時、秋田の酒蔵「天の戸」では
吟醸酒を作っていませんでした。
吟醸酒は高価な酒米を使い、
手間もかかるのです。
ところが、酒の消費量が減り、
ブランドのない酒蔵は
淘汰される時代になった。
杜氏が辞め、若くして
杜氏のような立場になった著者は
吟醸酒を作ることに
なってしまったのです。
教科書を読み、指導員の助言をもらいながら
機械化されていない小さな酒蔵で
しろうとがはじめて作った吟醸酒は、
"吟醸"とは言えないものでした。
・清酒鑑評会というコンクールは
純然たる目隠しテストである。・・
それまでの実績でシードされることもないし、
もちろん蔵の規模も関係ない(p82)
■吟醸酒を造りはじめて三年目。
「天の戸」の吟醸酒が、
全国清酒鑑評会で
金賞を取りました。
機械化されていない
小さな酒蔵での酒造りが
いかに厳しいのか
よくわかりました。
そして著者の
吟醸酒への熱い思いも。
森谷さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・吟醸酒では、十度以下という、
生かさず殺さずという極限状態で管理する
のだから、酵母もたまったものじゃない。
酵母も人の子、いや、生き物だから嘆き苦しむ。
ストレスが溜る。つまり、タンクという湖の
中に溜まった酵母の青色吐息というストレスが
香りの成分ということになる(p88)
・AK-1酵母(のちに秋田流花酵母と命名)・・
「Aは(麹室が)暑いのA,Kは(仕事が)きついのK,
1は(吟醸酒造りでいくら頑張っても
給料が上がるわけでもないから)
一文にもならないの1」と言って、
すてばちな気持ちをみんなで
笑いにまぎらしていた(p129)
・朝六時から仕事を始めて、夜、麹の
切り返しを終わって家につくのは八時を過ぎる。
毎日がその繰り返しである。・・・
しかも、一カ月の手取りの賃金が多く思えるのは
日曜も休まずに働いているから・・(p133)
・技術的にツーカーであると同時に、
ひと冬寝食を共にする家族同様の
生活のできるメンバーでなければならない(p150)
・農業の機械化は重労働からの解放だと
生意気にも思う・・
ただ一つだけ気にかかることがあった。
じいちゃんは裸足で田圃に入る・・
私などには気づかないことを
素足で感じるのだ(p154)
【私の評価】★★★★☆(89点)
読んでいただきありがとうございました!
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■目次
第1章 酒屋若勢になる
第2章 なんにも知らなかった
第3章 住み込み釜屋一年生
第4章 いとしの吟醸酒
第5章 藤田杜氏とラッセル車
第6章 迷走吟醸造り
第7章 米研ぎ唄が聴こえる
第8章 酒米はアンチ山田錦で
第9章 三人娘たちの酒
第10章 蔵人と裏ラベル
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