「学校が教えてくれない戦争の真実 ─日本は本当に「悪い国」だったのか」丸谷 元人
2016/06/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
大東亜戦争の意味を考える一冊です。それぞれの国には、それぞれの歴史があります。日本は戦前、台湾を清朝から割譲し、朝鮮を併合しました。こうした歴史を侵略の歴史として糾弾する流れがあります。
一方でアメリカの歴史を見てみると、北米東海岸で独立したアメリカは領土を広げ、ハワイまで支配地域を拡大してきました。アメリカは日韓併合と同じように、ハワイを併合したのです。それまで住んでいた人にとっては、アメリカが侵略してきたということになるのでしょう。またアメリカは、植民地としたフィリピンで、反対する地元民を20万人以上も殺害しています。これをやったのは、日本を占領したダグラス・マッカーサーの父、アーサー・マッカーサーでした。
・アジアは、すでに数百年も前からイギリスやオランダを始めとする欧米諸国が占領し、現地人を奴隷のように扱って、それらの地域で採れる様々な資源(食品や石油、鉱物資源など)を一方的に収奪していたのです(p45)
外的からの侵略を防止するため、多くの国は周囲に自国に友好的な緩衝地域を作ろうとします。ロシアであれば、東欧地域。アメリカであれば、カリブ海。中国であれば、自治区。戦前の日本も同じように周辺に支配地域を拡大し、緩衝地域として朝鮮、台湾を獲得し、大日本帝国を作ったのです。
周囲の国から見れば、日本が侵略してきたということになるのでしょうし、日本に言わせればアメリカに学んだということです。戦前の日本が、「世界征服のために、いきなり攻撃を仕掛けてきた」というような主張は、単純なプロパガンダ(宣伝)なのです。
・私たちは、アメリカから多くのこと、特に、隣接する地域の不安定な政権にどう対処するかを学んできた。しかし、学んだことを実行すると、先生から激しく叱られるのである(新渡戸稲造)(p49)
最終的に日本は、ABCD包囲網により石油などの「戦略物資」を封鎖され、日本は勝てない戦争に打って出ざるをえない状況となりました。極東国際軍事裁判インド代表のパール判事は、「欧米こそ憎むべきアジア侵略の張本人である。それなのに、あなたがたは自分の子孫に、「日本は犯罪を犯したのだ」と教えている。あやまられた歴史は、書き換えなければならない」と言っています。
日本はアメリカに敗戦しましたが、アジアの視点で見れば、太平洋戦争によって欧米諸国はアジアの植民地を失うことになりました。日本は欧米の植民地をなくするという犯罪を犯したのです。タイ国王のククリット・ブラモード元首相は、「今日、東南アジア諸国民が、アメリカやイギリスと対等に話ができるのは、『身を殺して仁をなした』日本というお母さんがいたからである」と述べています。歴史は見方によって、大きく変わるのです。
丸谷さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・歴史的に見るならば、日本ほどアジアを白人支配から離脱させることに貢献した国はない。しかしまたその解放を助けたり、あるいは多くの事柄に対して範を示してやったりした諸国民そのものから、日本ほど誤解を受けている国はないバー・モウ元首相(ビルマ)(p149)
・20年以上前は、この「従軍慰安婦の強制連行」ということが、学校でも教師たちによって「真実」として教えられており、朝日新聞を始めとする新聞メディアやテレビでも、それが当たり前のように語られていました(p108)
・1997年10月17日、『週刊朝日』という雑誌が・・日本軍がニューギニア戦線で現地人を大量に殺して食べたばかりか、一万2000人しかいない日本軍が、現地の女性1万6000人を慰安婦にした、とまで書かれているのです。つまり、飢え死に寸前で人肉食が頻発するような「極限の飢餓状態」にあるガリガリの兵士たちが、・・「若い女性」を捕まえにいったというわけです(p120)
・戦後GHQは、・・戦前の陸海軍幹部と政府関係者の合計28人を「A級戦犯」に指定し、わざわざ昭和天皇の誕生日である4月29日に起訴しました。そして彼らを「平和に対する罪・人道に対する罪」という、それまで存在しなかった事後法で裁き、そのうち七人を、今上陛下の誕生日である12月23日に処刑(p132)
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
第一章:なぜ日本は戦争を始めたのか
第二章:なぜアジアの人々ではなく、西欧の国々と戦ったのか
第三章:日本は本当に「悪いこと」をしたのか
第四章:日本による戦争犯罪の真実
第五章:靖国と戦犯と同志たち
第六章:物事の本質を見抜き、しっかりと主張する
著者経歴
丸谷元人(まるたに はじめ)・・・1974年生まれ。オーストラリア国立大学卒業。同大学院修士課程中退。オーストラリア国立戦争記念館の通訳翻訳者を皮切りに、長年、通訳翻訳業務に従事。現在は、講演や執筆活動、テレビ出演などもこなす国際派ジャーナリスト、海外セキュリティ・コンサルタントとしても活動しつつ、「日本戦略研究フォーラム」政策提言委員として、テロ対策や安全保障に関する複数の論文を発表している。
読んでいただきありがとうございました!
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