【書評】「実用企業小説プロジェクトマネジメント」近藤 哲生
2014/05/19公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
日立製作所の情報通信部門で数多くのプロジェクトを手がけた著者のノウハウ小説です。「最初から失敗しているプロジェクト」があることを始めて知りました。実情がわからずに契約すると、最初から赤字のプロジェクトとなるのです。そういえば海外のプロジェクトで巨額の赤字を出すケースがありますね。
この本で学ぶのは、プロジェクト管理の基本です。自らコミットできる計画をつくる。チームの人間関係を良くする。必要な人材を集める。基本方針を明確にする。進捗状況を把握できる指標を(複数)決める。お客様の喜ぶ姿をイメージするといったノウハウは、やった人にしかわからないのでしょうね。
・今回の製品は「明快な機能と操作」「患者に優しいシステム」という考え方に基づいている。「この二つの考え方に合わない問題が出れば、仕様を変更してもよいと考えています(p225)
実際の現場を疑似体験できました。チームと仕組みを作って、メンバーが働きやすい状況を作ることが大事だと理解しました。いくら優秀な人を集めても、人間関係がうまくいかないとトラブルになるのは経験上よくわかります。あとは、経験することですね。
近藤さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・すべての問題は、人と人との関係性で解決できる。技術は後からついてくる。(p88)
・検討対象の範囲は、お客が我々のつくったシステムをニコニコと使っているところまで頼むよ。そこまで想定しておくと、保守や維持管理のしかたまで考えられるからね(p99)
・問題処理票には、整理番号、問題内容、解決策、結論の欄がある。問題提起した人材が整理番号をつけ、問題を検討した人間が書くようにする。結論は、双方のとりまとめ責任者が記入し、最後に日付とサインを入れる(p131)
・計画があれば、プロジェクトが終了した時に、その計画と実績を比較することができる(p158)
・基本設計と機能設計の工程では、チームごとに三つの進捗尺度を提案してください。たとえば、設計項目、成果物、検討項目などです。複数の指標から見ることによって、本当の進捗が把握できると思います(p174)
・気になったり、心配になったりしたことは、早くオープンにして、前倒しで解決していこう(p241)
・棟梁は、常に全体の完成した形を一分の狂いもなくイメージして、それぞれの部分が正しくつくられているかを見ているんだ・・・僕は『全体最適が部分最適を促進する』と呼んでいます(p251)
・プロジェクトの「ふり返り」・・・このプロジェクトを通して感じたこと、よかったこと、改善したほうがよいと思っていることなどを一人ひとりに話してもらい、耳を傾け合う(p271)
日本経済新聞社
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【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第1章 空転――新たなる失敗の始まり
第2章 悲願――絶対成功させてやる
第3章 再生――挽回への青写真
第4章 交感――絆が壁を打ち砕く
第5章 宣言――成功するべくして成功する
第6章 変身――問題発見を喜ぶ風土
第7章 前進――リズミカルに、スピーディーに
第8章 突破――学習するプロジェクトの底力
第9章 成功――この二文字の大きさと重さ
第10章 伝承――新たなる成功の始まり
著者経歴
近藤 哲生(こんどう てつお)・・・ウィン アンド ウィン代表取締役/スコラ・コンサルト シニアパートナー。1946年愛媛県生まれ。日立製作所の情報通信部門に入社。2002年、コンサルタント会社ウィン アンド ウィンを設立。現在、スコラ・コンサルトと協働して、「自律的に学習するチームづくり」を促進するプロジェクトマネジメントの技術コンサルタントとして活躍している。
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