「エネルギーは「買う」のか「作る」のか―脱原発ができない理由」森谷 正規
2014/01/20公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)
要約と感想レビュー
国家の重要問題であるエネルギーについて取り上げる本が少ないので、手にした一冊です。電力関係の出版社からの本ですので、エネルギー安全保障における原子力発電の重要性について説いています。
つまり、原子力は石油やガスの輸入に依存する日本のエネルギー安全保障のために、国家として推進してきたものであるということは知っておいてもらいたい。国産エネルギーがほとんどないという現実に対し、電力については水力、石油、ガス、原子力と分散することで、安定供給を目指してきたのです。
・原発の燃料であるウランは、国内に資源はなく輸入するのだが、発電コストに対してその金額はとても小さくて、原発への投資のほとんどは発電プラントであり、これは国内で作るので、原発は「作るエネルギー」として見ることができる。(p18)
歴史をさかのぼれば、太平洋戦争もアメリカの石油禁輸からはじまりました。日本という国家は、エネルギーを輸入せねばならず、そのために外貨を稼がなければならない運命にあるのです。
だからこそ、リスクはあるものの、燃料費のほとんどかからない原子力発電を推進してきたのです。ただ、福島第一の原子力事故により、原子力をどうするのか、国家として判断する時期に来ています。フランスはほとんどが原子力発電所ですが、ヨーロッパには地震がない点が強みです。アメリカも西海外に地震はありますが、日本ほどではありません。
・1941年になって・・・8月に米国政府は、日本に対して石油の全面的な輸出禁止という経済制裁を発令して、英国とオランダもただちに同調した。それが、太平洋戦争に日本が踏み切った大きな原因の一つである(p46)
まず、第一の論点として原子力維持と脱原子力をどうするのか。脱原子力により電気料金が上がり、エネルギーの多様性が損なわれるのは事実ですが、それを許容する選択肢はあると思います。それは国家が若干貧乏になるということを、国家の意思で決めることだと思います。
また、第二の論点は、再稼働について。これは、安全性が確認できれば、すぐ再稼働したほうがいいと思います。
なぜなら、原子力は稼働していても、していなくても燃料を冷却できなくなればアウトですから、どうせなら万全の安全対策を施して、運転したほうがいい。チェルノブイリも事故後も、他のユニットは運転を継続していたくらいなのですから、安全対策に万全を期しながら運転して、原子力についてはじっくり考えれば良いのではないか。私はそう感じました。
森谷さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・円安がさらに進んでいくと、輸入額を大きく増やすことになる・・国内のエネルギー価格、電気料金がジリジリと上がっていけば、各産業の国際競争力の低下をもたらして、輸出が減り、さらに、いっそう海外生産への移行が進んで、輸出を減少させる・・・このように考えると、貿易収支で大幅は赤字が基調になる恐れが強いのである(p150)
・この太陽光発電は、・・導入できるのは、一戸建の大きな家に住んでいる裕福な家庭である。・・一般の電気代が上がって、負担するのは、小さなアパート、狭いマンションに住んでいて導入できない、裕福ではない家庭である(p100)
・朝日新聞は、55年の8月6日の社説で、・・・「原子力は、悪魔と神の二面を持っている。それは、残虐きわまる大量殺人兵器ともなるし、またそれは、人類に無限の幸福をもたらす建設的なエネルギーである(p57)
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)
目次
序章 エネルギー確保について深く考えよう
第1章 日本のエネルギーは、これまでどうであったのか
第2章 これからのエネルギー需要をどのように見通すか
第3章 再生可能なエネルギーにどれほど期待できるのか
第4章 膨大な量の化石燃料の購入が可能であるか
第5章 原発はいかに怖いのか
終章 ご自分で現実を見て考える努力を
著者経歴
森谷正規(もりたに まさのり)・・・・1935年、旧朝鮮生まれ。東京大学工学部卒業。日立造船、野村総合研究所、東京大学先端科学技術研究センター客員教授、放送大学教授、LCA大学院大学副学長などを歴任後、現在、技術・産業評論家。主な著書に、『日本・中国・韓国産業技術比較』(大平正芳記念賞受賞)などがある
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