「灘中 奇跡の国語教室 - 橋本武の超スロー・リーディング」黒岩 祐治
2012/02/24公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(94点)
要約と感想レビュー
灘中、灘高といえば、東大合格数トップの常連として有名ですが、このような国語の授業が行われていたとは驚きました。中勘助作の「銀の匙」という小説を3年かけて読むというものです。
それも単に読むのではなく、百人一首が出てくれば、百人一首を暗記して大会に出る。凧が出てくれば、凧を自分で作って、凧揚げをする。「銀の匙」を切り口に実際に体験したり、調べたり、覚えたりするのです。
・丑紅の牛も大切であった・・・まずは「丑紅」という言葉が入り口になる。研究ノートの「語句の意味」の欄には「寒の丑の日に売る紅で、口の中のあれを防ぐという」という解説がつけられている・・・そもそもこの「丑の日」とはなんぞやということになる(p86)
それも、そうした解説書は、橋本武先生が毎回、ガリ版で作ってくる。つまり、「銀の匙」を切り口に、毎回、手作りの教科書を使っているということです。こうして物事を掘り下げていくと楽しいよ、ということを橋本先生自身が生徒に示しているということなのでしょう。
興味をもったものを掘り下げていくと、それが自分の財産になるという。これこそ、物事を掘り下げ、本質に迫るのことを教える授業なのでしょう。
・「すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる」ということです。何でも興味をもったことをどんどん自分で掘り下げていってほしい。・・そうして自分で調べて見つけたことは一生の財産になるかと。(p215)
私も歴史の勉強をしていて、もっと一つひとつの歴史的事件を掘り下げていくと、もっと楽しいんだろうな・・・と思いながら、年代を暗記していたことを思い出しました。本来、勉強とは楽しいものなんだ、ということなのでしょう。
私も十年、一日一冊読書感想をしてきましたが、子どもにも一月一冊読書感想をしてもらいましょう。そして読書の楽しさを知ってほしい。黒岩さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・たくさんの文章を書かされたということである・・「"百聞は一見に如かず"という。書くことにおいては"百論は一作に如かず"(p161)
・中学の三年間は毎月毎月、橋本先生が決めた課題図書があってその感想文を提出しなければなかった。(p166)
・もともとかるた遊びが百人一首の本来のあり方なのだから、みんなだ暗誦してかるた大会に臨むことこそ、本来の百人一首の勉強法だと先生は考えたのであった(p71)
・徹底的に調べればやる気と自信が生まれる(p209)
・気になることは追体験・・自分の記憶に強く残す・・たとえば、駄菓子屋に行く場面では、実際に教室で駄菓子を配って食べさせる。凧揚げをする場面になれば、美術の時間も使って、それぞれが好きな凧を手作り(p213)
・答えは後回しでもいい。疑問をもつことが第一歩(p219)
▼引用は下記の書籍からです。
中央公論新社
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【私の評価】★★★★★(94点)
目次
第1章 手作り教材にかけたある教師の思い
第2章 自由奔放な授業
第3章 「銀の匙研究ノート」から学んだこと
第4章 驚異の趣味人先生
第5章 橋本流文章鍛錬法
第6章 私の教育改革論
特別授業 人生を充実させる8つの学び
著者経歴
黒岩祐治(くろいわ ゆうじ)・・・1954年生まれ。神戸市出身。神奈川県知事。灘中、灘高校出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、1980年フジテレビジョン入社。報道局解説委員・『報道2001』キャスター、国際医療福祉大学客員教授などを経て2011年4月から現職。
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