「スティグリッツ教授の経済教室―グローバル経済のトピックスを読み解く」 ジョセフ・E・スティグリッツ
2012/01/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(74点)
要約と感想レビュー
ノーベル経済学賞受賞者による経済エッセー
ノーベル経済学賞受賞者による2003年~2007年のエッセーです。大学教授→大統領経済諮問委員会委員長→世界銀行エコノミスト→大学教授という経歴。著者は経済学者なのです。
同じ国連関係機関として世界銀行にいたせいか、国際通貨基金(IMF)の経済政策への批判が多いような気がしました。IMFが主導する資本市場の自由化は、経済の不安定さを拡大するのです。つまり、自由化によって資金が流れ込んで、あっという間にカネが出て行って、大混乱を引き起こすのです。
ラテンアメリカでは・・・歳出削減と高金利という、とるべき政策とは正反対のIMFの財政金融政策は、予想されたとおり、景気停滞を景気後退や不況に追いやり、大量の失業や倒産を生じさせたのである(p8)
グローバリゼーションの罠
あとは、グローバリゼーションへの批判です。今、経済の自由化、資本の自由化によって、お金と物が世界を飛び回っています。そのおかげで私たちは安いユニクロを着ることができるのですが、同時に私たちの職が失われているということです。
つまり世界の大部分でインフレ率が低く抑えられてきたのは、中国から安い物を輸入していたのですが、短期的には時給の安い中国人に仕事を奪われることなのです。長期的・世界的には経済が活性化していくのでしょうが、その富はグローバル化を進める一部の人のものになるだけなのです。
グローバリゼーションは、世界のほとんどの国に見られる格差の拡大を生んだ・・・辛抱強く待っていれば、長期的には皆がより豊かな暮らしができるようになると主張してきた向きもある。だが、ケインズが痛烈に言い放ったように、長期的には我々は皆死んでいる(p30)
サブプライム住宅ローン問題
2008年のサブプライム住宅ローン問題についても、著者は2005年から指摘しています。アメリカ経済の成長は、個人が住宅ローンを借り換えて浮いたカネの一部を支出に回したり、住宅価格の上昇が住宅建設を促進したりと、不動産部門によって牽引されてきたのですが、不動産価格はおそらく急上昇が止まり、下落するかもしれないと予想しています。不動産価格が下がれば、逆に成長が止まることになるわけです。
スティグリッツさんは未来が見える人のようです。スティグリッツさん、よい本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・世界銀行の総裁はアメリカによって、IMFの専務理事はヨーロッパによって選ばれるという取り決めは、これらの機関の有効性と正当性を大きく損なっている(p4)
・不均衡の大元の原因は、2006年には8500億ドルにのぼったアメリカの巨額の貿易赤字である・・・アメリカは、1980年代の世界的不均衡について日本を不当に非難したように、いま中国を不当に非難している。(p19)
・危機は必ず終わるが、次の危機を防ぐための改革を実行できるのは危機の間だけだ(p54)
・アメリカの綿花補助金・・・この補助金を廃止することは、サハラ以南アフリカの1000万個の貧しい綿花栽培農家のためになるし、アメリカの納税者の得にもなるはずだ。損をするのは、現在、毎年30億~40億ドルもの補助金を分け合っている2万5000戸の豊かな農家だけなのだ(p140)
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【私の評価】★★★☆☆(74点)
目次
第1章 書き下ろし論文 21世紀初めの日本と世界
第2章 グローバル経済の通説を疑え
第3章 ブッシュ大統領の深刻な誤り
第4章 地球を守るための処方箋
第5章 経済格差をいかに解消するか
第6章 いま直面する課題に立ち向かう
著者経歴
ジョセフ・E・スティグリッツ(Joseph Eugene Stiglitz)・・・2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。エール大学はじめオックスフォード、プリンストン、スタンフォード大学で教鞭をとる。1993年クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加、1995年より委員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。1997年に辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを2000年1月まで務める。行動する経済学者として、世界を巡りながら経済の現状を取材し、市場万能の考え方を強く批判している。
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