「史料検証 日本の領土」百瀬 孝
2011/05/01公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
中国は沖縄まで自分の領土と考える
領土問題がいろいろ取りざたされていますが、やはり専門書を紐解かなければ、議論はできません。資料や相手の主張、そして日本の主張を網羅する必要があるのでしょう。
極端に言えば、中国は沖縄まで自分の領土にしようと考えているのかもしれません。
中国は結局琉球王国が日本に吸収されたことを承認することはなく、それは辛亥革命後の中華民国にまで持ち越され、対日平和条約で日本の潜在主権が確認され沖縄返還協定で施政権が日本に返還された時点でも不快感を表明していた(p50)
領土問題は武力で決着する
しかし、こうしてみると、領土問題というのは、あいまいな部分が多いと感じました。
そして、過去には領土問題は、武力で決着するケースが多いのです。例えば、1419年に朝鮮国は倭寇撃滅の目的で対馬に侵攻しましたが、目的を果たさずに退散しました。15世紀までの侵攻事件は、すべて中国・朝鮮からのものであるという。
さて、尖閣諸島はどうなるのでしょうか。百瀬さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・第二次世界大戦終了まで、内地とは北海道(千島を含む)から沖縄県までの都道府県にわけられた部分をいい、植民地、租借地、委任統治領を外地といった。(p14)
・領海は現在国連海洋法条約(1982年)に基づいて各国で定める。通常領土の基線(海岸の低潮線)から12海里の幅である。領海には国の統治権(主権)が及ぶが、外国船の無害通航権が認められる。領海法によって宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、大隈海峡のみは三海里としている(p15)
・排他的経済水域(Exclusive Economic Zone)とは基線から200海里をいい、沿岸国はこの内側の漁業、鉱産物、油田などすべての経済資源を管理する権利を有する。ここには他国は通航、上空飛行、海底電線・海底パイプラインの敷設ができる(p15)
・国内問題としての最終処理が琉球処分といわれ、1879年の廃藩置県、すなわち他地域の廃藩置県に遅れること八年で、琉球藩を廃して沖縄県を置いたことである。沖縄の廃藩置県は琉球藩側の強い抵抗と、軍および警察を伴って乗り込んだ内務省側の強圧的方法で実行されたことが、平和的に行われた他の廃藩置県とまったく異なる点である。(p48)
・日本は三国干渉によって遼東半島を還付せざるを得なくなったことに新聞、議会、一般世論等あらゆる分野から怒りの声があがった。中国故事による臥薪嘗胆という言葉がスローガンになって来るべき戦争に備えることになったといわれるが、臥薪嘗胆はマスコミ用語であって政府軍軍事予算を計上するにあたってこの言葉を使ったのではなく、政府は反対言論を取り締まる立場であった。(p79)
・ロシア革命に際し、日本は欧米各国とともに干渉に乗り出し、いわゆるシベリア出兵を行った。この出兵時の付随的事件として尼港事件なるものが起こって日本人多数が虐殺され、これの事件解決のため、責任政府ができるまでの保障料として尼港対岸の北樺太を占領し軍政を布いた(p141)
・ポツダム宣言はポツダム会談の一方の主役であるスターリン首相には極秘に立案されたのであり、発する直前察知して激怒したソ連から抗議された・・・のちソ連は対日宣戦に際して同宣言に加入した(p166)
【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
第1章 領土と統治区域
第2章 幕末
第3章 明治初期
第4章 明治中期
第5章 明治後期
第6章 大正期
第7章 昭和初期
第8章 昭和中期
第9章 昭和後期
著者経歴
伊藤隆(いとう たかし)・・・1932(昭和7)年、東京都生まれ。東京大学文学部国史学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京都立大学法学部助教授、東京大学文学部教授、政策研究大学院大学教授等を経て、現在、近代日本史料研究会代表、東京大学名誉教授、政策研究大学院大学名誉教授
百瀬孝(ももせ たかし)・・・1938(昭和13)年、栃木県生まれ。東京大学教育学部教育学科卒業。八幡製鉄(現新日本製鉄)株式会社、仙台大学教授を経て群馬医療福祉大学大学院教授兼早稲田大学現代政治経済研究所特別研究員
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