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「逝きし世の面影」渡辺 京二

2011/03/22公開 更新
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逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

【私の評価】★★★★☆(86点)


■江戸時代とは、
 どのような社会だったのか。


 日本を訪れた外国人の記録から、
 江戸の生活と日本人を
 解説してくれる一冊です。


 外国人には、貧乏人であっても
 清潔で幸せそうに生きる日本人に、
 驚きを感じたようです。


・1856(安政三)年八月日本に着任したばかりのハリスは、
 下田近郊の柿崎を訪れ次のような印象を持った。
 「柿崎は小さくて貧寒な漁村であるが、
 住民の身なりはさっぱりしていて、態度は丁重である。
 世界のあらゆる国で貧乏にいつも付き物になっている
 不潔さというものが、少しも見られない。(p100)


■さらに、江戸時代にも
 地震、津波といった
 自然災害がありました。


 しかし、私たちの祖先は、
 それからも笑顔で立ち上がり、
 幸せそうに生活していたのです。


・ペリーの四年後に下田を訪れたオズボーンは、
 町を壊滅させた大津波のあとにもかかわらず、
 再建された下田の住民は「誰もがいかなる人びとが
 そうありうるよりも、幸せで煩いから解放されて
 いるように見えた」(p74)


■江戸という時代を通じて、
 日本人というものを再発見できる
 ような気がしました。


 挿絵もたくさん入っているので、
 絵を見るだけでも楽しめると思います。


 渡辺さん、
 よい本をありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・アリス・ベーコンは言う。「どうして、日本人は
 こんな安物をこんなに美しく作れるのかわかりません。
 ・・・アメリカ人にとっては「安価」と「粗悪」は
 同意語なのだが、日本ではもっとも低廉な品物に優美で
 芸術的なデザインが見出される(p223)


・「日本人は酒に酔うと、アングロサクソンやアイルランド人、
 ことに後者が一般的に喧嘩がしたくなるのと違って、
 歌いたくなるらしい」というのはむろんユーモアであろうが、
 モースは本気でそう感じたようである(p164)


・W・G・ディクソンは維新前と維新後、二度にわたって
 日本を訪問した英国人であるが、こう述べている。
 「私の日本旅行のすべてにおいて、二人の男が本当に
 腹を立てたり、大声で言い争ったりしたのを見たおぼえがない。
 また、中国では毎日おめにかかる名物、つまり二人の女が
 口論したり、たがいにいかがわしい言葉を投げつけあったり
 しているのも一度も見たことがない」(p168)


・「日本の上層階級は下層の人々を大変大事に扱う」と
 スエンソンは言う。「主人と召使の間には通常、
 友好的で親密な関係が成り立っており、これは西洋
 自由諸国にあってはまず未知の関係といってよい(p279)


・英国商船の船長ヘンリー・ホームズは1859(安政六)年
 交易を求めて長崎に来航したが、早朝町へ出かけて、人びとが
 寝ている家へあがりこんだ。「家へ入るには裏戸を押すだけで
 よかった。ロックもボルトもなかった」。(p156)


逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
渡辺 京二
平凡社
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【私の評価】★★★★☆(86点)



■著者経歴・・・渡辺 京二(わたなべ きょうじ)

 1930年生まれ。日本近代史家。
 書評紙編集者などを経て、河合文化教育研究所特別研究員。


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