【書評】「不毛地帯 (第1巻)」山崎 豊子
2011/01/08公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
■シベリア抑留11年、その後伊藤忠商事で
会長にまでなった瀬島隆三氏の物語です。
第1巻では、敗戦からシベリア抑留、
伊藤忠商事への就職初期までカバーしています。
11年のシベリア抑留のところでは、
生きて帰ったのは「運が良かった」ということが
実感としてわかります。
・ラーゲリの外柵には絶対に近寄らないこと、許可なく二メートル以内の距離に近付くと、無警告で射殺する、第三、便所へ行く時は番兵の許可を得ること、第四、入浴は十日に一度である・・(p102)
■私もカザフスタンで日本人墓地、
ロシアで日本人によって作られた建物を見る
機会がありました。
もし、事前に、この本を読んでいれば、
いかに抑留された日本人が苦労したのか、
万感の思いを持ったはず。
無知とは寂しいものです。
・地下の坑内作業に廻されてから、急速度に衰えて来ている自分の体調を知っていた。全身に何ともいえない倦怠感と関節の痛みに続いて、全く陽にあたらない皮膚が青白く乾燥し、歯茎から出血するとともに、歯根が腐ったように歯が一本、二本と抜け落ちて行く(p287)
■後半は、伊藤忠商事での瀬島隆三氏の
仕事の話となっていきます。
ここからは、組織内で働くビジネスマンのための
参考書として楽しめます。
山崎さん良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・女囚は胸にしがみついて来る少年を抱きしめて、泣いた。一体、何の罪で父親は二十年、母親は十年の刑を受け、強制収容所へ送られて行くのだろうか。人間の世界にこんなことが行われていいのだろうか。(p272)
・「壱岐さん、戦争に負けて、貧乏になった日本は、国力を取り戻すためには、われわれ商社マンが必死に外貨を稼がんとあかんのです」(p426)
・壱岐のような旧軍人の立場から見れば、自衛隊が出来た時点において憲法をしかるべく改正するのが、素直な考え方のように思われる。事実、ドイツでは、敗戦後、連合国の占領下におかれ、一切の軍備は否認されたが、共産圏の脅威が強まり、NATO(北大西洋条約機構)加盟が決定されると、憲法(ドイツ連邦共和国基本法)を改正し、軍備を持ったと聞いている(p460)
新潮社
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【私の評価】★★★★☆(84点)
著者経歴
山崎 豊子(やまざき とよこ)・・・1924年生まれ。毎日新聞社勤務しながら、小説を書き始め「暖簾」を刊行、「花のれん」で直木賞を受賞。新聞社を退職し作家生活に入る。著書多数。
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