「徴税権力―国税庁の研究」落合 博実
2010/11/14公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★☆☆(75点)
要約と感想レビュー
税金の監視役である国税庁についての一冊です。やはり国税庁の鬼門といえば、非課税の特権を持つ政治家と宗教法人です。政治家と宗教法人の事例をいくつか教えてくれます。
金丸信脱税事件では国税庁調査査察部が、金丸が日本債券信用銀行の割引金融債(ワリシン)を購入していることを突き止めます。こうした事例以外にも多くの実例が実名で記載されており、朝日新聞記者の著者に伝わっているということは、国税庁の人もある程度情報漏洩しているということなのでしょう。
・日債銀にむかった二人の捜査官・・・行員が席を外したすきを見計らって、営業部次長の机を開けると「金丸」の二文字が入った資料が見えた。もちろん行員にコピーは頼めない。ひとりがその「紙」を手に取って、麹町税務署へ走った。日債銀本店から直線距離で約六百メートル。(p27)
宗教法人については、やはり創価学会です。1990年の調査では、創価学会は墓石販売について6億円の修正申告しています。一般に知られているところでは、有名絵画の代理取引や、金庫がゴミ処理場で見つかるなど、話題を提供しています。
・三菱商事の税務申告には目をひく項目があった。ルノワールの名画「浴後の女」「読書をする女性」の購入である。・・・絵画が実は、創価学会から依頼されて三菱商事が代理購入をしたものであることが判明し、しかも購入先のフランス人二人は実在せず(p193)
私は、いっぱい稼いで、いっぱい納税するのが、自分にとっても国家にとっても良いことだと思っています。政治家と宗教法人はどう思っているのでしょうか。
落合さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・いったん査察が動き始めると、政治家が介入するケースはさすがに少ない。査察は検察も連動して動いており、政治家の方々も下手に動けばやけどすることを知っている(p70)
・新大阪駅前の支店で毎月多額の割引債を買う人物があやしいというので、マルサ三人で後を追ったら、新幹線で小倉まで行ってしまった。どうやら福岡のパチンコ業者が脱税のために割引債をわざわざ大阪まで買いに来ていたんです。(p21)
・読売テレビの元看板プロデューサー・・・「ダウンタウンDX]などの人気バラエティ番組を手掛け・・・弱い立場の下請け会社に「使ってやる」と持ちかけては、月に数百万ものリベートを受け取り、銀行口座に入金させていた(p215)
・帝国ホテルでの取引終了後、二点のルノワールは東京・八王子の東京富士美術館まで運ばれた。その運送をしたのが「日本図書輸送」で、三カ月後の「中西金庫事件」に絡み、一億七千万円入りの金庫を聖教新聞社地下倉庫から運び出しゴミ処理場に捨てたことから日本中を騒がせることになる。(p254)
文藝春秋
売り上げランキング: 58086
【私の評価】★★★☆☆(75点)
目次
第1章 金丸信摘発の舞台裏
第2章 介入する政治家
第3章 税の無法地帯
第4章 検察との確執と協力
第5章 資料調査課の凄みと危うさ
第6章 大企業との微妙な関係
第7章 マスコミとの攻防
第8章 国税対創価学会
著者経歴
落合 博実(おちあい ひろみつ)・・・1941年生まれ。1970年朝日新聞社入社。大蔵省と国税庁を担当。2003年退社。フリーランスとして活動。
読んでいただきありがとうございました!
この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングに投票する
メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」 40,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。 >>バックナンバー |
配信には『まぐまぐ』を使用しております。 |
お気に入りに追加|本のソムリエ公式サイト|
コメントする