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「それでも日本人は「戦争」を選んだ」加藤 陽子

2010/03/12公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

第二次世界大戦を中心として、当時の日本、そして国際関係を高校生に講義するという内容の一冊です。各国がなぜ植民地を作ったのか。各国はどう考えて、同盟をしたのか。当時の社会や民衆はどうだったのか。高校生に講義しているせいか、わかりやすいというのが印象的でした。


第一次世界大戦の後、イギリスは国際的な利害調整機関として国際連盟を作りました。国際連盟の権威と、単なる言葉や理論によってドイツ、イタリア、日本を抑止できると考えたイギリスはまちがっていたという、イギリスの歴史家エドワード・ハレット・カーの言葉を紹介しています。国連がロシアのウクライナ侵攻を抑止できると考えるのが間違いなのと同じなのでしょう。


・日本が獲得した植民地を考えてみると、ほぼすべて安全保障上の利益に合致する場所と言えます・・・欧米の帝国主義・・・まず重要なのは商業的なもの・・・キリスト教の布教・・・国内の失業問題(p193)


英米に圧迫される日本は1941年、松岡洋右外相がソ連と中立条約を結んでいます。日本は、ドイツと1940年と三国同盟を結んでおり、日独伊ソという四国同盟に近いものを作って、これで英米などの資本主義国と対抗できると考えていたのです。今思えば、日本がいかに国際情勢にオンチであったのかということで、それは現在も変わらないのかもしれません。


そして、日本の南方進出によってABCD包囲網によって日本の石油の備蓄量は日ごとに減ってゆく中で、英米相手の武力戦は可能なのか、この点を恐れて開戦に後ろ向きの昭和天皇を、軍は説得して対米戦争に突入することになるのです。


私が一番印象的だったのは、日本国憲法の中にリンカーンのof the people, by the people, for the peopleが入っているということです。こうしたちょっとした「へー」が歴史を面白くしてくれるのかもしれません。


・「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し」までが"of the people"ですね。「その権力は国民の代表者がこれを行使し」という部分が"by the people"・・・「その福利は国民がこれを享受する」、つまり、国民のため、が"for the people"(p32)


特に主張があるわけではなく、戦争当時の歴史を学ぶ授業ですが、「あの戦争はなんだったのか」ということを考える一助となるはずです。加藤さん、よい本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・日清戦争が近づいてきた頃の人々・・・『自由燈』という、絵の間に文字がありますというような新聞を発行して、自由党の考え方を下層階級・民衆に広めようとしました・・・このようなだらしのない人々では、日本がたとえロシアの属国とされてしまっても、おとなしくいうことを聞くに違いない(p116)


・終戦時、満州にいた日本人・・・約200万人・・・そのうちソ連侵攻後の死者数・・・約24万5400人(p393)


▼引用は下記の書籍からです。


【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

序章 日本近現代史を考える
1章 日清戦争―「侵略・被侵略」では見えてこないもの
2章 日露戦争―朝鮮か満州か、それが問題
3章 第一次世界大戦―日本が抱いた主観的な挫折
4章 満州事変と日中戦争―日本切腹、中国介錯論
5章 太平洋戦争―戦死者の死に場所を教えられなかった国



著者経歴

加藤 陽子(かとう ようこ)・・・1960年埼玉県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は日本近現代史。


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この著者の本


コメント(1)

知っているのと知らないのとでは、
結果が違うということをしみじみ感じました。

そういう意味でも、正しい情報を入手するすべ、
正しい判断ができる力、他人に依存することなく、
自分でってことがとても大切で、難しいことですね。

過去も今も、変わっていないことが、
戦争も起こりうる懸念を起こさせ、
身が引き締まる思いです。

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