「公務員の給与はなぜ民間より4割高いのか」北見 昌朗
2009/01/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(94点)
要約と感想レビュー
賃金コンサルタントが、公務員の賃金について分析した一冊です。著者の分析の結果、わかったことは、まず、公務員の退職金が、民間に比べて異常に高いこと。公務員には、優良大企業並の退職金が準備されているのです。
・民間企業の従業員がもらった退職金・・・総額8兆2056億円÷2048千人=1人あたり401万円
公務員がもらった退職金・・・総額2兆8700億円÷223千人=1人あたり1287万円(公的年金財政状況報告 平成17年度)(p40)
そして、年金も民間よりもかなり高い。
・厚生年金の場合、平均額は16万円だが、国家公務員(20万円)は4万円ほど高く、地方公務員(22万円)も6万円ほど高くなっている(p49)
さらに給与については、民間より4割高く、これは時給の分析からも同じ結論が出てくるようです。中小企業の1.8倍というのは、盛りすぎかもしれません。
・時給を比較すると、名古屋市役所は中小企業の1.8倍・・・
名古屋市役所 49万0952円÷157時間=時給3127円(同1.8倍)
トヨタ自動車 47万1000円÷163時間=時給2890円(中小企業の1.6倍)
中小企業 31万0000円÷174時間=時給1782円(p110)
さらに象徴的な例としては、名古屋市職員の給与がトヨタ社員とほぼ同等ということです。一度、職場を入れかえてみるとおもしろいかもしれません。
・名古屋市職員の給与もトヨタ社員を抜いていた・・・住民課の窓口で座っている高卒の50代のヒラ職員の給与がまさか49万円もするという事実を市民は知っているのだろうか(p82)
国家公務員の給与は、人事院が毎年勧告しているではないか、と思う方も多いと思いますが、この本では、人事院の統計データ操作のからくりまで教えてくれます。人事院が民間の給与を調査する時には、給与が安い人を対象から外して、給与の高いホワイトカラーに限定するなどの対策をしているようなのです。
・人事院の民間給与調査・・・からくり その1 調査対象を50人以上の事業所に限定する・・・からくり その3 調査対象を「事務及び技術関係」に絞る・・いわゆるホワイトカラー(p135)
公務員がどのように民間より給与を高くしようと画策しているのか明確に説明してくれる一冊でした。巻末に、エリート官僚にはそれなりの処遇が必要などと、具体的な公務員給与の改革案を提示しており、建設的な一冊です。文句なく★5つとしました。
この本で私が共感した名言
・公務員は上位15%以内の高額所得者・・・国家公務員の平均年齢は40歳である。その所定内給与は40万円だ。そのほかに平均的に月間20時間程度の時間外手当が付く。その上で賞与を加えれば700万円を優に超す。(p103)
・リストラ不安のない公務員に、民間企業並みの給与は必要ない(p185)
・国家公務員は・・「30歳ぐらいまでの給与は民間とあまり変わらない」「40歳過ぎからもどんどん上昇するので、50代に入るとビックリするくらい高額になる」・・「高卒でもぐんぐん昇給するので、50代に入ると民間の大卒をはるかに上回っている(p60)
・国及び地方を合計した人件費は実際には合計37兆円ぐらいではないか・・・国の税収は平成19年度予算で53兆円、地方の税収は40兆円で、合計すれば93兆円だった。・・・実に4割が人件費で消えていることになる(p177)
・独立行政法人に移行させることで、"隠れ公務員"が急増(p166)
▼引用は、この本からです。
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【私の評価】★★★★★(94点)
著者経歴
北見 昌朗(きたの まさお)・・・1959年生まれ。1999年独立して、北見式賃金研究所を設立。オーナー会社を対象にした賃金・人事コンサルタント戦国に学ぶ中小企業経営という視点で研究を続けている。著書多数。
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