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「ノーフォールト」岡井 崇

2008/02/01公開 更新
本のソムリエ
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【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

■小説をあまり読まない私があっという間に
 読んでしまった強烈な一冊でした。


 産婦人科医の主人公を通して、
 現在の産婦人科医の現実に、
 自分が直面しているように感じました。


・「そうだよなあ、こんなに忙しくて・・・責任は重いし」「僕は当直を何とかしてもらいたいね」「君、先月何回?」「僕ですか?二十回くらいやりましたよ」「そんなにやったの!」・・(p277)


■産婦人科医が減少しているという
 ニュースを聞いたことがあります。


 その原因は、夜勤による時間外勤務の多さと、
 訴訟リスクの高さだと言われています。


 普通の人ならば、セブンイレブンのような勤務で、
 人の命を預かり、失敗すれば告訴されるような職場を
 選びたいとは思わないはずです。


・その病院の先生、よく手術を引き受けてくれたよ。最近は、何かあるとすぐ訴えられるから、皆、難しい手術は引き受けなくなってきているんだ。・・・(p198)


■産婦人科医が減少しているということは、
 新人よりも辞める産婦人科医が多いということ。


 ただでも悪い産婦人科医の労働条件は、
 どんどん悪い方向に進んでいるわけです。


・産婦人科に興味を持つ二十名ほどの学生を前に小演説を行なった時、産婦人科の学問としての幅広さと魅力、これからの社会における産婦人科医療の重要性を話した後、現状の人員不足を訴えているうちに口惜しさ込み上げて来て、恥ずかしさも忘れ、私は学生の前で号泣してしまいました。(p433)


■お産の場面では、人間が人間を生むという
 神秘的な活動と、それを支える産婦人科医の仕事の
 素晴らしさを感じることができます。


 しかし、その一方で、産婦人科医の労働環境は、
 どう見ても「悲惨」に近い状況としか
 言いようがありません。


・だいたい黒字の大学病院は若手医師にほとんど給料を払っていないんですから、研修生みたいな扱いにして・・・研修医じゃないですよ、昨年から臨床研修の必須化で研修医は給料がもらえますから。その上、現場で日本の医療を支えている連中です。アルバイト収入だけで食っているんですよ。(p348)


■小説としても強烈に
 読ませてくれる一冊です。


 さらに、産婦人科の現状についても
 学べますので、一石二鳥ですね。
 ★4つとしました。


この本で私が共感した名言

・私は先日、医療安全講習会に参加したが、弁護士の話を聞いてがっかりしたよ。"患者さんにはこういう話をしなさい、そうすれば訴えられない。カルテはこう書きなさい、こんな事を書いてはいけません、カルテはいつでも開示されます。治療法は患者さんに選択させなさい、そうすれば訴えられる事が少なくなります"、そんな話は医療安全ではない。(p326)


・理事長!大学病院はまだいいんですよ。三人も当直していて、その中にベテランが必ず一人いますから。一般の病院は二年目、三年目の医師が一人で当直しているんですよ。もし、今回のケース、一般の病院で起こったら・・・(p174)


・アメリカではお産一件で百万円くらいかかる、たった二日の入院でね。もちろん患者が払う。そのうちの一部、最近では平均約40%分、つまり40万円は医師が保険会社に払うほうに回されるってことだ。(p221)


・最近はなぜ術前検査で、"出血時間"をやらないのかね?」「そうですね、いつの間にか、やらなくなりました。精度が悪いからですかね?・・・「教授、それだけじゃありません。だいたい手間のかかる割に保険点数が低いんですよ。出血時間測定は十六点、百六十円ですよ、バカにしていると思いませんか?(p293)


▼引用は、この本からです。


【私の評価】★★★★☆(88点)



著者経歴

 岡井 崇(おかい たかし)1947年生まれ。医学博士。1973年東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部助教授、総合母子保健センター愛育病院副院長等を経て、昭和大学病院総合周産期母子医療センター長。


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