「ノーフォールト」岡井 崇

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ノーフォールト

【私の評価】★★★★☆(88点)


■小説をあまり読まない私があっという間に
 読んでしまった強烈な一冊でした。


 産婦人科医の主人公を通して、
 現在の産婦人科医の現実に、
 自分が直面しているように感じました。


 ・「そうだよなあ、こんなに忙しくて・・・責任は重いし」
  「僕は当直を何とかしてもらいたいね」
  「君、先月何回?」
  「僕ですか?二十回くらいやりましたよ」
  「そんなにやったの!」・・(p277)


■産婦人科医が減少しているという
 ニュースを聞いたことがあります。


 その原因は、夜勤による時間外勤務の多さと、
 訴訟リスクの高さだと言われています。


 普通の人ならば、セブンイレブンのような勤務で、
 人の命を預かり、失敗すれば告訴されるような職場を
 選びたいとは思わないはずです。


 ・その病院の先生、よく手術を引き受けてくれたよ。
  最近は、何かあるとすぐ訴えられるから、
  皆、難しい手術は引き受け
  なくなってきているんだ。・・・(p198)


■産婦人科医が減少しているということは、
 新人よりも辞める産婦人科医が多いということ。


 ただでも悪い産婦人科医の労働条件は、
 どんどん悪い方向に進んでいるわけです。


 ・産婦人科に興味を持つ二十名ほどの学生を
  前に小演説を行なった時、産婦人科の
  学問としての幅広さと魅力、これからの
  社会における産婦人科医療の重要性を話した後、
  現状の人員不足を訴えているうちに
  口惜しさ込み上げて来て、恥ずかしさも忘れ、
  私は学生の前で号泣してしまいました。(p433)


■お産の場面では、人間が人間を生むという
 神秘的な活動と、それを支える産婦人科医の仕事の
 素晴らしさを感じることができます。


 しかし、その一方で、産婦人科医の労働環境は、
 どう見ても「悲惨」に近い状況としか
 言いようがありません。


 ・だいたい黒字の大学病院は若手医師に
  ほとんど給料を払っていないんですから、
  研修生みたいな扱いにして・・・
  研修医じゃないですよ、昨年から臨床研修の
  必須化で研修医は給料がもらえますから。
  その上、現場で日本の医療を支えている連中です。
  アルバイト収入だけで食っているんですよ。(p348)


■小説としても強烈に読ませてくれる一冊です。


 さらに、産婦人科の現状についても学べますので、
 一石二鳥ですね。


 ★4つとしました。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・私は先日、医療安全講習会に参加したが、
  弁護士の話を聞いてがっかりしたよ。
  "患者さんにはこういう話をしなさい、
  そうすれば訴えられない。
  カルテはこう書きなさい、
  こんな事を書いてはいけません、
  カルテはいつでも開示されます。
  治療法は患者さんに選択させなさい、
  そうすれば訴えられる事が少なくなります"、
  そんな話は医療安全ではない。(p326)


 ・理事長!大学病院はまだいいんですよ。
  三人も当直していて、
  その中にベテランが必ず一人いますから。
  一般の病院は二年目、
  三年目の医師が一人で当直しているんですよ。
  もし、今回のケース、
  一般の病院で起こったら・・・(p174)


 ・アメリカではお産一件で百万円くらいかかる、
  たった二日の入院でね。
  もちろん患者が払う。
  そのうちの一部、最近では平均約40%分、
  つまり40万円は医師が保険会社に
  払うほうに回されるってことだ。(p221)


 ・最近はなぜ術前検査で、"出血時間"をやらないのかね?」
  「そうですね、いつの間にか、やらなくなりました。
  精度が悪いからですかね?・・・
  「教授、それだけじゃありません。
  だいたい手間のかかる割に保険点数が低いんですよ。
  出血時間測定は十六点、百六十円ですよ、
  バカにしていると思いませんか?(p293)


▼引用は、この本からです。

ノーフォールト
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岡井 崇
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4 結末が、ちょっと...
4 現役産婦人科医による渾身の一撃
5 産婦人科医になる決意をさせてくれた本

【私の評価】★★★★☆(88点)



■著者紹介・・・岡井 崇(おかい たかし)

 1947年生まれ。医学博士。
 1973年東京大学医学部医学科卒業。
 東京大学医学部助教授、総合母子保健センター愛育病院副院長等を経て、
 昭和大学病院総合周産期母子医療センター長。


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