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「「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ」谷岡 一郎

2007/02/08公開 更新
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「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

 私も常々感じていますが、省庁の行う調査、マスコミの行う社会調査については、かなりのものが信用できないそうです。その原因は、サンプリングのまずさ、誘導質問、いいとこ取り、印象操作、相関関係の誤解などいろいろなものがあります。恐ろしいのは、そうした事実を知らないで社会調査の結果とその分析を見て、多くの人がそれを信じ、世論が作られてしまうことでしょう。


・中立を標榜しながら特定意見を押しつけたり、いいとこ取りをして勝手な解釈を加えるという点では、朝日も読売もいまだに誘導的な手法が多い。(p49)


 調査での情報操作を防ぐために著者が提案しているのは、
 1 データの公開
 2 チェック機関の創設
です。しかし、データを公開してメリットはありませんので、自分から公開することはないでしょう。そのためデータ公開はもちろん、チェック機関の実現には、かなりの時間がかかるでしょう。


・公官庁や政府関連団体が集めたデータは一般に公開されない・・・仮に一部の学者に分析を依頼する場合でも、「批判はしません」という念書をとった上でしかデータを見せない(p31)


 社会調査の結果は操作できる、という事実知るために必読の一冊です。情報があふれる現代だからこそ、一読いただきたいと思います。★4つとしました。


この本で私が共感した名言

・自分たちの気に入らない法案は、いつも決まって「十分な審議がなされていない」状態であり、もっと議論を尽くすべきだと主張するが、与党議員による数をたのんだ採決は、常に「数の暴力によるゴリ押し」というわけである。(p74)


・「週刊朝日」(1999年11月19日号/山口一臣、江畠俊彦)によれば、『買ってはいけない』の三人の著者のうち少なくとも二人が、自分の関係する会社の製品を売るために他社の製品を批判していたという(p85)


・お役人というのは、一度予算がついたものを撤廃しようとはまず考えない。昨今は研究費に上限が設けられるようになってきたが、そうなると、新しい分野を増やすには他の分野を削らねばならない。それがお役人には、どうしてもできないのだ。結果として、いくら重要な学問分野であっても、新しいコードは作られない(p98)


・日本の社会科学(だけとは限らないが)の世界では、論文は「質より量」が重視される。・・・なぜ日本に「サイテーション・インデックス」がないのであろうか。(p101)


・アメリカで採用している方法の一つに、研究者はその所属する機関の許可を得なければ、機関名を名乗って調査はできない、というものがある。(p194)


▼引用は、この本からです。


【私の評価】★★★★☆(84点)



著者経歴

 谷岡 一郎(たにおか いちろう)・・・大阪商業大学教授、学長。1956年生まれ。慶應義塾大学卒業後、南カルフォルニア大学行政管理学修士課程修了、同大学社会学部博士課程修了。専門は犯罪学、ギャンブル社会学、社会調査論。
 

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