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「加賀屋の流儀 極上のおもてなしとは」細川 勝

2006/10/17公開 更新
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加賀屋の流儀 極上のおもてなしとは

【私の評価】★★★★☆(86点)


●長崎県の尾崎さん(65歳)は、旅行好きの妻と一緒に
 石川県にある有名旅館「加賀屋」に
 ツアー客として宿泊しました。


 宿の設備だけではなく、客室係の行き届いた心配りと対応に
 驚いた尾崎さん夫妻は、今度はツアーではなく二人でもう一度
 「加賀屋」に泊まろうと話し合いました。


●ところが、尾崎さんの妻は
 2004年12月、末期ガンで他界。


 ベッドに寝ているときも「旅行がしたい」
 「加賀屋に行きたい」と言い続けた末の無念の死でした。


●尾崎さんは、妻の供養になればと、
 妻の遺影を胸に抱き、「加賀屋」に
 宿泊する北陸旅行を計画しました。


 自分の心の整理にもなると考えたのです。
 尾崎さんは、石川県和倉温泉「加賀屋」に到着しました。
 七尾湾と沖に浮かぶ能登島の景色が心を落ち着かせます。


 部屋に案内されて浴衣に着替え、風呂から上り
 食事がテーブルに並べられているとき、
 尾崎さんはカバンから妻の遺影を出し、
 テーブルに置きました。


●こぼれるような笑顔を浮かべた尾崎さんの妻芳子さんの写真に
 ハッと気づいた客室係の女性は、
 「少々お待ちくださいませ。いま、陰膳を用意させていただきます」
 と部屋を出て行きました。


 数分後、その客室係の女性は、
 丸い漆塗りのお盆と、料理を盛った小鉢を持って現れると、
 テーブルの上に見事な陰膳を作りました。


 そして最後に彼女は美しい花を陰膳に添えたのです。


 妻の微笑みと一緒に、客室係の女性と一緒に乾杯し、
 尾崎さんは心温まる時間を過ごしました。


●翌朝、客室係の女性は和倉温泉駅のホームまで同行し、
 尾崎さんを見送りました。


 列車が発車する直前、客室係が手を振ってお辞儀をすると、
 尾崎さんの目からは涙があふれ、
 次の駅に着くまで止まることはありませんでした。


●石川県和倉温泉の加賀屋は、
 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で
 26年間も日本一の座を守っています。


 2006年に創業100年を迎えた加賀屋には、
 今も感動の数だけ、感謝の手紙が届いているそうです。


ディズニーランド、ザ・リッツ・カールトン大阪とはまた違った
 一流を感じることができましたので、★4つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・私は中学しか出ていませんが、加賀屋で人のご恩を知り、
 感謝することを知り、生きがいを持って
 働くことの尊さを教わりました・・・
 「それは、日本一の誇りを抱いて働ける喜びでしょう」(p98)


・禅語に「随所に主となる」という言葉がある。
 これは、場面、場面で一人ひとりが主役になる、
 といった意味の言葉だが、仲島さんは
 「まさしく加賀屋の客室係の女性たちは、その言葉が
 当てはまる存在です」と話す。(p200)


▼引用は、この本からです。

【私の評価】★★★★☆(86点)


■著者経歴・・・細川 勝

 1954年生まれ。20年間の新聞記者生活を経て、
 2001年フリーとして独立。歴史文化や産業の分野を中心に
 取材執筆する。


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