「りんごは赤じゃない―正しいプライドの育て方」山本 美芽
2005/10/24公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(91点)
●かつて神奈川県の中学校に、
美術のコンクールで入賞者を大量排出した
太田さんという教師がいました。
しかも、生徒が荒れているような中学校でしたが、
美術の授業だけは、生徒が姿勢を正して
集中して授業を受けていたそうです。
・太田は「ふざけ半分」の態度を、絶対に許さない。
そのような態度が見られるあいだは、授業をしないし、
大事なことも話さない。(p24)
●授業では、草をスケッチするならば、
外に出てよく観察させる。
「草の気持ちになってみて」とアドバイスする。
そうした授業の中から、子どもは草と対話をして、
考えていったそうです。
・草が一本一本すべて違うように、
人間もひとりひとり違っている。
みんなだってそうだよね。違うことって、なんて
すばらしいんだろうね。(p41)
●また、美術なのに「調査研究」を
取り入れていました。
・・・すばらしい。
・何を調べなさい、どこまで調べなさい、
先生はそういうことをいっさい言いません。
それはあなたたちが自己決断することなの。
自分が必要だと思ったところで決断するのよ・・・
「調査研究」(p57)
●しかし、太田さんは2001年に退職し、
教育システムの外に道を求めました。
・コンクールといった、目に見える形で優れた指導力を残しても、
教師社会の中で評価してもらえることはなかったのだ。
太田は、次第に教師社会に絶望感を
感じるようになっていた。(p192)
●そういえば社会人校長で、すぐに自殺なさった人もいましたね。
良いものが淘汰され、外にはじきだされるのであれば、
教育は学校の外に求めるしかないのかもしれません。
教育議論は別にして、
私も教わりたかったなとおもう美術の授業の
秘密が書かれた本として★5つとしました。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・「あなたたちには心がありますね。
それと同じように、先生にも、美術室にも、心がある。
それなのに、その態度は・・・!あなたたちは、美術室で
待っている先生の心を踏みにじったんですよ」(p19)
・生徒がいい加減な態度を見せたときに教師が
「だめ、やり直し」と命じるのは、よくあることだ。
しかし太田はそんなとき「だめ」ではなく
「イヤだ」という。(p22)
・二学期、三学期になっても、太田はいつも
授業の前には顔写真入りの名簿を確認して、
子どもの顔と名前がスラスラ出てくるように
努力する。(p181)
・太田は、美術でプロセスに没頭する体験をさせて、
結果だけを追い求めていては
決して到達できない領域まで、
生徒を踏み込ませるのだ。(p144)
新潮社 (2005/06)
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地道な実践の記録
新任教師に差し上げたいものです。
【私の評価】★★★★★(91点)
●著者経歴・・・山本 美芽(やまもと みめ)
1971年生まれ。大学卒業後、中学校の臨時教諭、養護学校教諭を
経て、執筆活動を始める。現在は主に音楽雑誌に寄稿している。
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トラックバックありがとう。これは有用な本でしたね。