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「奴隷のしつけ方」マルクス シドニウス・ファルクス、ジェリー・トナー

2018/06/14公開 更新
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奴隷のしつけ方


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

ローマ貴族の家に生まれたマルクス シドニウス・ファルクスが書き残したと言われる奴隷管理法です。実は、マルクス シドニウス・ファルクスというのは架空の人物で、リアル感を出しているのです。内容は紀元後1~2二世紀の帝政期の奴隷の管理法を想定しています。当時の奴隷は、戦争の戦果としてローマに連れてこられたものであり、日本人のシベリア抑留を思い出させます。


奴隷は戦争の代償としてローマ人へ奉仕しなくてはならなかったのです。奴隷を制御していたのは厳しい罰則でした。過ちを起こせば鞭打ちや土牢に入れ、食事を与えない。主人を殺せば、奴隷は全員が死刑です。ただ、鞭に頼りすぎると奴隷が疲弊するだけであり、適切な労働管理が大事だと書いてあります。


・奴隷は主人を殺した。このような場合・・古来の法に則って家内奴隷全員が処刑される(p180)


奴隷が奴隷を管理することもあり、奴隷が奴隷をいじめることもあったようです。だから下の奴隷を痛めつけてばかりいる奴隷には目を光らせ、自制を促さなければならないという。また、同じ出身地ないし同じ部族の奴隷を増やさないようにし、仲間内で協力して逃亡したり、主人に反抗しないようにしていたというのです。


奴隷はおおよそ20年あるいは30年で解放されていたという。また、奴隷が窃盗、売春、その他の行為で儲けた金で自由を買い取り、ローマ市民の仲間入りをする例もあるという。ただ、解放されても、かつて奴隷であった者が不遜な態度をとれば罰せられるし、場合によってはある期間追放されたという。


現代のサラリーマンとは見方を変えれば奴隷のようなものだと思いました。定年で解放される奴隷なのです。トナーさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・奴隷を置くということは、こちらを憎んでいるかもしれない人間を使うということだ。つまり出費であると同時に重荷である(p45)


・わたしの場合、奴隷に体罰を与えるときは請負人に頼んでいる。地元の評議会がそういうサービスを提供していて、一定の料金で鞭打ちを代行してくれる(p128)


・わたしの田舎の領地には土牢があり、奴隷が過ちを犯したらしばらく独りでそこに入れておく・・食事もほんの少ししか与えない。今日では厳密に言えば違法だが、とりわけ粗暴で頑固な奴隷にわからせるには、こうした方法もやむをえないのではないだろうか(p129)


・役割分担を明確にするといい。分担が明確になれば責任の所在も明らかになる(p59)


・主人が若い奴隷たちから性的快楽を得るのはごく普通のことで、わたしにも今かわいがっている少年奴隷が一人いる(p87)


・わたしが会ったことがある裕福なキリスト教徒はいずれも奴隷を所有していて、しかもその扱い方はほかのローマ人と変わらない。また個人ではなくキリスト教の教会も、評議会と同じように奴隷を所有している(p232)


・ズボンはもともとローマにはなく、ゲルマン民族から普及した(p10)


▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

序文 主人であれ
第Ⅰ章 奴隷の買い方
第Ⅱ章 奴隷の活用法
第Ⅲ章 奴隷と性
第Ⅳ章奴隷は劣った存在か
第Ⅴ章 奴隷の罰し方
第Ⅵ章 なぜ拷問が必要か
第Ⅶ章 奴隷の楽しみ
第Ⅷ章 スパルタクスを忘れるな!
第Ⅸ章 奴隷の解放
第Ⅹ章 解放奴隷の問題
第ⅩⅠ章 キリスト教徒と奴隷
あとがき さらばだ!



著者経歴

マルクス・シドニウス・ファルクス(MARCUS SIDONIUS FALX)・・・何代にもわたって奴隷を使い続けてきた、ローマ貴族の家に生まれる。第六軍団フェッラタを退役したあとは領地の運営に専念し、現在ではカンパニア地方とアフリカ属州、そしてローマ市を見下ろすエスキリーノの丘にある豪奢な別荘を行き来しながら過ごしている。
本書の執筆にあたっては、現代人の理解を助けるため、ケンブリッジ大学の古典学研究者であるジェリー・トナーに監修と解説を命じた。


ジェリー・トナー( JERRY TONER)・・・ケンブリッジ大学チャーチルカレッジの古典学研究者。著書にHomer's Turk(2013)、Roman Disasters(2013)、A Cultural History of the Senses in Antiquity(2014)がある。


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