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「プロ野球・二軍の謎」田口 壮

2017/11/14公開 更新
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プロ野球・二軍の謎 (幻冬舎新書)


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

オリックスから米メジャーリーグに移籍し、ワールドシリーズに三回出場した出口壮(そう)さんの一冊です。現在は、オリックス・バファローズの二軍監督を務めています。この本では日米のプロ野球の差を教えてもらえます。


アメリカはメジャーが一軍だとすれば、二軍にあたる「3A」、三軍にあたる「2A」、さらにその下に「アドバンスドA」「クラスA」「ショートシーズンA」(この3つを合わせて「1A」)、「ルーキー・アドバンスド」「ルーキーリーグ」(この2つを合わせて「ルーキーリーグ」)と7つもの下部クラスが存在するという。


球団側は「ダメならいらない」「クビにしてもまだまだほかの選手がいる」という使い捨て感覚なので、マイナーの選手はクビに備えて、普段から「次の仕事」の準備をしているという。アメリカのスポーツビジネスには、情け無用なのです。


そして日米でもっとも大きい差は、選手の待遇でしょう。弱肉強食の米メジャー、選手を大事にする日本というイメージです。米国ではメジャーの選手は何十億円も稼ぎますが、それ以外のマイナーの選手は、その日食えるかどうかという待遇なのです。


・日米の精神性の違いもあるでしょうが、アメリカの野球選手で「道具に魂が宿っている」と感じているのは、ごくごくわずかでしょう。おおよその選手にとっては、バットやグラブは単なる道具でしかなく、メジャーならクラブハウスの用具係がすべて手入れをしてくれます(p70)


一方の日本では、二軍でもコーチが選手をきめ細かく指導するため、逆に選手の良さを潰してしまうこともあるという。つまり早く1軍に上がりたいという焦りから、周囲に言われたことのすべてが正しいと思い込み、あれもこれもやってみようと試行錯誤するうちに、もともと持っている自分の打撃の形をどんどん崩してしまう選手がいるというのです。


だから著者は、ルーキーに対してよほどのことがない限りは、微調整以外何も言わないという。つまり、びっくりするような投げ方をしようが、バッティングフォームが変わっていようが、グラブさばきが不思議な感じであろうが、プロなのですから、様子を見守るのです。


競争と貧富の差を見ると、日米の考え方の差にびっくりしました。世界一の成功した社会主義国家日本ではここまで貧富の差を容認しないのでしょう。田口さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・悔しさを発奮材料に変えられるかどうか。そこが分かれ道です。(p148)


・日本人選手は、体調管理に神経質です。投手の中には、利き腕をかばい、我が子を抱き上げることすらしない人も大勢います(p79)


・新たな契約の場ではよく「ずっと見てきたよ」という言葉をかけられました。マイナー暮らしをしたり、代走や守備固めなどで出場機会が限られたりしても、「一瞬たりとも手を抜いてはいけない」と強く実感したものです(p169)


・「報告プリント」・・誰が、誰に、何を教えたか・・この情報を監督・コーチが共有し、選手全員と確認し合うことで、教える側のスタンスも統一され、選手の戸惑いも少なくなることでしょう(p52)


・武士道の精神性をよしとする日本では、退路を断って勝負に臨むべきであり、負けたときのことを考えて準備を万全にしておく・・わけにはいかないのでしょう。したがって日本では多くの選手が、野球にすべてを賭け、野球だけを追い求めた挙句、突然、なんの備えもなく人生の岐路に立たされることになります(p31)


・日本でプレーする外国人選手、特にアメリカ人が一番気にしているのは、一緒に来日している奥さんの機嫌だと僕は思っています・・彼女たちの愚痴の相手やはけ口は、夫である選手たち以外にありません。そのストレスから、選手の成績が著しく落ちる、という状況を何度も目の当たりにしました(p66)


プロ野球・二軍の謎 (幻冬舎新書)
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田口 壮
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【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

第1章 プロ野球の二軍は何をしているのか?
第2章 日本の二軍とアメリカのマイナー
第3章 二軍の試合が100倍面白くなる!?観戦ガイド
第4章 新人監督のマンスリー・ダイアリー
第5章 二軍監督という仕事



著者経歴

田口壮(たぐち そう)・・・1969年生まれ、兵庫県西宮市出身。関西学院大学時代に通算123安打のリーグ記録を樹立。91年、ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団し、95年、96年のリーグ連覇(96年は日本一)に貢献した。ゴールデン・グラブ賞5度、ベストナイン1度を獲得。2002年FA宣言でメジャーリーグ、セントルイス・カージナルスに入団。6年間在籍したのち、フィラデルフィア・フィリーズ、シカゴ・カブスでプレーした。メジャー通算8年間で、ワールドシリーズに3度出場し、06年(セントルイス)、08年(フィラデルフィア)にはワールドチャンピオンに輝く。10年、日本球界に復帰後、肩の手術を経て12年に引退を表明。NHKの野球解説者として3年間を過ごしたのち、16年から古巣オリックス・バファローズで二軍監督を務めている


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