●世の中には、「悪は栄える」「イヤなやつほど出世する」ということが
よくあります。
例えば、ひどくいい加減な人間でもヒモとして女性に貢がせること
うまい人がいるかと思えば、人間的にまじめでも女性の前にくると
モジモジしてうまくいかない人もいるでしょう。
●どうして、こういうことがあるのかというと、ヒモは悪意から技術を
使っているのに対し、よい人は善意から技術を使おうとはしないから
です。
上の女性への対応の例でいえば、冷たく叱るような状況をわざと作って
おきながら、しばらくして実は君のためを思って厳しいことを言ったの
だよと優しくするのも一つの技術として知られています。
●つまり、ヒモは生活がかかっていますから、必死に技術を学び、それ
を活用するのですが、よい人はそれができないのです。
・マルチ商法まがいの方法による商品の、販売説明会に、さそわれて出席し
た。つぎつぎに、人がまえに立って話をする。「十日で、百万円もうけた」
・・・会場は、しだいに、もりあがっていく。・・・一種の集団催眠に
かかったようなものである。(p126)
●この本は、「説得」悪く言うと洗脳の技術をまとめた一冊です。
ですから、私は、ぜひ良い人に読んでいただきたい。そして、
社会として良い方向に向かうように活用していただきたいのです。
・イメージを、何べんも何べんも思いうかべさせて、ある考え方、ある思想
を、潜在意識にまで徹底的に植えつけることが可能である。・・・しかし、
「この宗教から逃げだすと、あの世で地獄に行く」というイメージ教育
になると、カルト的になる。(p45)
●実際には、悪意を持った人がよく学び、活用するのでしょうが、それに
負けてはいけない、そういう思いで読んでいただきたい危険な一冊です。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・洗脳を含めて、広い意味でのマインドコントロールは、一般的に、
つぎの三つの手順をとる。
(1)外部情報を遮断する。
(2)一定情報を注入する。
(3)生理的に不安定な状況におく。(p21)
・自分自身の努力では、酒をやめられなかった人が、新しくはいった人に、
「酒をやめよう。酒は害毒があるから」と説明しているうちに、本人の
酒がやめられるという現象がある。(p27)
・相手を説得するとき、その恥ずかしい部分をつく。「お前は、こういう
恥ずかしいことをしただろう」と、繰りかえしつつく。すると、つつか
れた人は、心理的に不安定になる。罪責感をもち、暗示や説得をうけや
すくなる。(p33)
・極度な難行苦行を続けていると、目のまえに、まっ白な光が見えたり、
身体全体が光で包まれたような感覚を覚えたり、なんともいえない恍惚
感を味わうというようなことが起きる。・・・オウム真理教のばあいは、
かなり無茶な難行苦行をさせている。(p36)
・「集団的暗示」は、もともとは、ナチスが使った。たくさんの人を集めて
みんなに、一定の方向、ある思想などに、「賛成だ」と、意思表明させ
る。すると、みんなが、そちらの方向に歩きはじめる。(p125)
・ヒットラーは、『わが闘争』の中で述べている。「宣伝は、語るべき思想
を少数にとどめて、それをうまずたゆくまでくり返すことが必要である。
大衆はなん百ぺんとなくくり返さないと、もともと簡単な思想でも、覚え
込まないものである」(p129)
・どんな人でも・・・心の中に、必ずある種の不安定感をもっている。・・
・自分の存在の意味は、しばしば、自分が属する集団から与えられる。
(p132)
「説得の科学」安本 美典、PHP研究所(1997/03)¥581
(評価:★★★★★)90点
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