【書評】「法務の現場でつかんだ「ビジネスがわかっていない」と言われたら読む本: 専門性を組織の力に変える思考法」宮崎 裕子
2026/09/21公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(83点)
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要約と感想レビュー
転職のために考えていたこと
著者は法律事務所や外資系企業の法務部門で働き、スリーエムジャパン代表取締役社長まで歴任しました。
転職の前に著者がやっていたのは、「仕事の棚卸し」です。自分の専門性を「どこでも活きる形」に文書化し、自分という人間を言葉で説明できるようにしておくのです。
次に、「3年後、どんな自分でありたいのか」を考えます。ポイントは、「自分が心からそうありたい」と思えるかどうかです。そして、「3年後のありたい姿に近づくために、今、足りないものは何か」を考え、その不足しているところを埋めていくのです。
転職先を考えるときは、単に待遇や会社のブランドだけではなく、「どの環境に身を置くのか」「どの役割で自分の専門性を使うのか」を考え、「なぜこの道を選ぶのか」自分の言葉で説明できるようにしているのがすばらしい。
転職にあたって・・どの環境に身を置くのか、どの役割で使うのか・・・「なぜこの道を選ぶのか」を自分の言葉で説明できる状態にしておくことが大切です(p39)
転職後にするべきこと
転職後にまずやるべきことは、誰がキーマンなのか。どこで実質的な決定がなされているのか。どんな順番で仕事が進み、どこで止まりやすいのか、「組織の実態」を知ることです。
例えば、各部署のキーマンと短時間の1on1(1対1のミーティング)を行い、相談できる社内の友人をつくります。また、会議だけでは人柄や価値観が見えにくいので、勉強会、ランチ、交流イベントなどにも積極的に参加します。
会社の仕組みとしても、経営陣が後ろ盾となり、精神的な支えとなるメンターを置き、横で支える伴走者(バディ)を決めておくとよいのでしょう。新しい組織で成果を出すためには、仕事の能力だけでなく、相談できる味方を作ることが大切なのです。
「組織の生の実態」が見えてくると、困ったときに即座に頼れる味方が増えていきます(p54)
提案が通りやすくする工夫
外から転入してきた人の価値の一つは、新しい視点で会社を良い方向に変えていくことでしょう。ただし、正しい提案をすれば、そのまま通るわけではありません。
著者は提案を通しやすくするために、提案を「小出し」にしていたという。「この部署だけでテストさせてください」と小さく提案すれば、承認する側のリスクが小さくなり、通りやすくなるのです。
また、会議の前には個別に根回しをします。特に、懸念を抱きそうな「影響力の強い人」を優先して事前に説明していたという。
そして、不満や懸念が出たときには、すぐに反論しません。「そう感じられたのですね」「どの場面でそう思われましたか」「次から何が変わるといいと思いますか」と一旦受け止めたうえで、「何があれば賛成できるのか」という条件を聞くのです。
つまり、反対意見を潰すのではなく、「その懸念が解消されるなら、進められますか」と、懸念をYesを引き出すための条件に変えていく。これは、仕事だけでなく、あらゆる合意形成で使える考え方だと思いました。
方針が決まっただけでは会社は動かない。次に誰が、どう動くのか(p73)
管理職としてやるべきこと
管理職の役割は、人を見て役割を考えること、組織としての優先順位を決めること、そして全体が前に進める流れをつくることです。
ただ、管理職として依頼された仕事への対応だけに力を注いでいると、経営層からは「提案が出てこない」という印象が残ってしまいます。著者のお勧めは、経営が気にしていることを拾い上げ、会社全体への影響を考えて、自分から提案していくことです。
また、法務のような間接部門は、仕事の価値を評価してもらいにくいので、法務部門の価値を「見える化」する努力をしています。例えば、活動の結果を定期的に報告したり、同業他社との比較や、外注した場合のコストと比較できるよう定量化したりするのです。
著者は法律事務所から外資系企業の日本法人社長まで上り詰めたといことで、専門性だけでなく、人間関係をつくることがうまい人なのだなと思いました。
宮崎さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・前例や上位者の方針で方向性が固まりかけている場面でも、懸念や違和感を抱いたら言語化する(p105)
・専門性を組織に残す・・育成する相手を決め、「実務」を共にする・・「判断の基準」を言葉にして残す(p204)
・積極的な提案が歓迎される組織もあれば、個人の提案をする人はあまりいないという組織もあるでしょう・・・どの程度の強さで、どの場面で切り出すのが最も受け入れやすいのかを探っていくしかありません(p69)
・「社内勉強会」という場をつくりました・・最初は私が部門の進行役を勤めましたが、すぐに担当を決める「持ち回り制」に変えました(p166)
▼引用は、この本からです

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宮崎 裕子、中央経済社
【私の評価】★★★★☆(83点)
目的
第1章 転機に立ったときに――自分の判断基準を持つための7つの質問
第2章 専門性を組織の力に変える半年
第3章 経営層・現場の声を活かす――専門性を組織を動かす力に変えるヒント
第4章 リーダーとして飛躍するために5つの壁を乗り越える
補章 経営層への補章――専門性を成果につなげる環境づくり
著者経歴
宮崎 裕子(みやざき ひろこ)・・・GIT法律事務所 弁護士。1992年慶應義塾大学卒業、2004年ワシントン大学LL.M.卒業。1996年から日本及び米国法律事務所にて約10年間、勤務。その後、デル法務本部長ジャパンリードリーガルカウンセル、日本アルコン法務コンプライアンス本部部長、スリーエムジャパン代表取締役社長を経て、現在の事務所へ入所。事務所所属後も日本ハム、丸紅、ドリームインキュベータで社外役員に就任。
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