【書評】「カウンセリングとは何か 変化するということ」 東畑 開人
2026/09/22公開 更新
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【私の評価】★★★★★(92点)
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要約と感想レビュー
カウンセリングの現場
カウンセラーである著者が、カウンセリングの実態を実例とともに説明してくれる一冊です。3つの事例が紹介されており、実際のカウンセリングがどのように進められるのか、その現場の雰囲気がわかる一冊でした。
カウンセリングの初回面談は60分間。最初の40分で情報を集め、その後の10分で仮説をユーザーに説明し、最後の10分でこれからどうしていくのかを話し合います。
現代のカウンセリングでは、ユーザーが語り、治療者が聞くことで、その人の心の中を理解していきます。著者は、その原点をフロイトの精神分析にあるとしています。
また、カウンセラーはプロですから、自分にできることは手助けし、できないことは他の専門家や関係機関につなぎます。例えば、学校でいじめがあれば学校側に情報提供し、投薬が必要だと判断すれば精神科を紹介するのです。
いじめがあるときに、いじめに負けない心を鍛える、となるときにはカウンセラーはいじめを看過し、いじめに加担することになります。必要なのは心を変えることではなく、環境を変えることです(p66)
生存のための作戦会議カウンセリング
カウンセリングには、大きく二つの目的があります。「生存」と「実存」です。
「生存」とは、困難な状況の中で、何とか生活を立て直していくこと。一方の「実存」とは、その人の心の奥を分析しながら、自分らしい生き方ができるようにしていくことです。
「生存」のために必要なのが、「作戦会議カウンセリング」です。日常生活を立て直し、毎日を維持し、ユーザーを破局の危機から守ることを目指します。
そのため、作戦会議カウンセリングでは、まず身体や環境を変えることから始めます。
身体でいえば、例えば筋トレです。筋トレをしていると「負け組感」を忘れることができる、という事例が紹介されています。体調が悪ければ、睡眠を取ったり、休職させたりします。
環境を変えるとは、例えばユーザーに借金があり返済が難しいのであれば、両親に相談するなどして、現実の環境を整えていくことです。
マッスルコーピング・・・ガチ筋トレしてると、負け組感を忘れることができて(p213)
実存のための冒険カウンセリング
「実存」のために行われるのが、「冒険カウンセリング」です。なぜ「冒険」なのかといえば、心の奥にあるものと向き合いながら、ユーザーが自分らしく生きていけるように対話していくからです。
この冒険カウンセリングは、まず生活が成り立っていることが前提です。そのうえで心の奥へと冒険に出ていくため、実際に行われるケースはそれほど多くないという。
冒険カウンセリングでは、心の硬い表層ではなく、その奥にあるドロドロとした深層まで入っていきます。そのため、信頼関係をつくるだけでも数か月かかるようです。
さらに心の深い部分まで入っていくと、「転移」といって、それまで他者との間で起きていた感情や関係性が、カウンセラーとの間にも生まれることがあります。
例えば、父親を憎んでいた人が、カウンセラーに対しても憎しみを感じるようになるのです。そうしてユーザーの感情が揺れ動くことで、その人の心の深層が見えてきます。そして、その関係性を通じて人は少しずつ変わっていくというのです。
心の歴史とは、いかなる人間関係に傷つき、いかなる人間関係に救われてきたかの集積です(p283)
カウンセリングは人を変える
著者は毎日6~7人ほどのユーザーと会い、深く関わっています。その中で、ユーザーの人生という「脚本」の登場人物の役を割り当てられ、自分でも知らなかった別の自分が引っ張り出されることがあるという。
そして著者は、カウンセリングの大きな意味の一つとして、「また来週」という次の約束があることを挙げています。それまで一人で孤独だった人が、「また来週、話を聞いてくれる人がいる」というつながりが生まれ、それこそが、カウンセリングの大きな力なのです。
確かに、カウンセリングは必要な仕事だと思いました。世の中には、お金を払わずに周囲の人へ愚痴や不満を延々と吐き出している人もいます。それなら、プロにお金を払って、きちんと話を聞いてもらったほうがよいのではないでしょうか。
東畑さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・なぜその不幸が生じたのか、それは何によって解決するのか。これを解析して、きちんとユーザーに説明する(p97)
・コーピングとは困った状態への対処法のことです・・落ち込んだときに、どうしたら我に返れるのか(p207)
・コグニティブな介入・・・「認知的」という意味で・・心が世界をどう捉えるかという「視点」のあり方のことです(p227)
・精神分析は、セックスしないと決めた二人が、たがいに何をはなすことが可能なのかを問うものである(p298)
▼引用は、この本からです

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東畑 開人、講談社
【私の評価】★★★★★(92点)
目的
まえがき ふしぎの国のカウンセリング
第1章 カウンセリングとは何か―心に突き当たる
第2章 謎解きとしてのカウンセリング―不幸を解析する
第3章 作戦会議としてのカウンセリング―現実を動かす
第4章 冒険としてのカウンセリング―心を揺らす
第5章 カウンセリングとは何だったのか―終わりながら考える
あとがき 運命と勇気、そして聞いてもらうこと
著者経歴
東畑 開人(とうはた かいと)・・・1983年生まれ。専門は臨床心理学・精神分析・医療人類学。京都大学教育学部卒業、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。白金高輪カウンセリングルーム主宰。博士(教育学)・臨床心理士・公認心理師。
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