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【書評】「話が通じない相手と話をする方法―哲学者が教える不可能を可能にする対話術」ピーター・ボゴジアン

2025/09/16公開 更新
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「話が通じない相手と話をする方法―哲学者が教える不可能を可能にする対話術」ピーター・ボゴジアン


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー


相手のロジックを理解する

アメリカ人は議論して決めるイメージがありますが、日本と同じようにどうにも話が通じない話題はあるのです。


例えば、政治ならトランプについて、保守的な右翼とリベラルな左翼の会話、宗教なら人は神が作ったのか、猿から進化したのかの議論、医療ならワクチンは使うべきか、使ってはならないなどの議論です。


この本で紹介してくれる「話が通じない相手と話をする方法」とは残念ながら、ディベートで相手を論破する方法ではありません。相手の話に耳を傾け、理解し、そして徐々に相手に自分の信じていることに疑いをもたせるという日本的な方法なのです。自分と相手の敵対関係を捨てて、相手がどのような経緯で今の考えを抱くに至ったのかを理解しようとするのです。


具体的には、「あなたがどうしてそういうふうに考えるのかまだ理解できていないんです。私にも理解できるように、そのような結論に至ったのはどうしてなのか、もう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか?」と丁寧に訊ねるのです。


相手がどういう事柄を信じているかを理解するためだけでなく、どうしてその人がそう信じるに至ったのかを理解することを目的とする(p28)

相手に説明させ間違いに気づかせる

なぜ、相手が考えに至った経緯を知ろうとするのでしょうか。


その理由は、自分の考えが間違っていると説明されるのが好きな人はいないからです。また、こちらから証拠を示したとしてもすべての人が証拠によって結論を出そうなどと考えているわけではないからです。


だから自説を相手に説明するのではなく、相手に結論に至った経緯の説明を求めるのです。相手は自説の正しさを説明しようと待ち構えているのですから、どんどん話してくれるはずです。


説明しているうちに、実は根拠が薄いのではないか。情報源が怪しいのではないか。そもそも信頼できるデータを確認していないのではないか、など相手に気づかせるのです。つまり、相手に疑いを持たせ、自分から考えを変えることを促すのです。


外部の情報源を議論に持ち込む・・・次のように言ってみよう。「それはなんとも言えないですね。信頼できるデータを見せていただければ、考えを変える準備はあるのですが・・・」(p162)

理想の価値観に相手を誘う

さらにレベルの高い方法は、自ら手本を示すことです。


極論は言わないようにしましょう。例えば、「保守派はファシストだ」など、感情的な一方的な決めつけはやめましょう。相手を非難するのではなく、真実に至った要因を二人で協力して見つけようとしてみましょう。


例えば、なぜトランプ大統領が勝ったのかという議論であれば、自説を主張するのではなく、トランプ勝利の要因図を相手と一緒に検討するのです。


話し方も謙虚に丁寧に、「間違っているかもしれませんが、私の理解だと〇〇です」とこちらから手本を示すのです。


さらにレベルを高くすると、相手の意図をきちんと確認しつつ、共通のあるべき価値観を一緒に達成しようと相手を誘いましょう。先週テレビで渋谷駅の大規模改修工事を新プロジェクトXで放映していましたが、東急の担当者がJR東日本と東京メトロの担当者を「理想はどうあるべきか」という議論に引き込んでいった経緯が説明されていました。


協調的な言葉を使うこと・・「私たちで一緒に、公平な視点から、考えてみましょう」・・「私たち」を使っていこう(p147)

刑事コロンボになれ!

そういえば、刑事コロンボも何も知らないふりをしながが、容疑者にいろいろ質問をして、相手に説明させ、その矛盾を突いて容疑者を自供に追い込んでいました。


私もホンダの営業マンに、車の異音のクレームをしたときを思い出しました。営業マンは私の主張を否定せず、「では他の車と比較してみましょう」と試乗を提案。乗ってみると、私の車と音はあまり変わりません。つまり、私が異音とする音が、異音とはいえないレベルであることを私に気づかせようとしたのです。


この本では「相手の面子を保つ」ことを重視しています。


「あらゆることを知っている人なんていませんよ」とか、「私も〇〇だと考えていました。後にそれはすべて間違いだと分かったのですがね」など言ってみましょう。相手と自分の間に黄金の橋をかけるのです。ボゴジアンさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・他人の考えを訂正しようという試みがうまくいかない・・・誤った道徳観を持つに至ってしまったとしても、だからといってその人が悪人になるわけではない。ただ単に、その人の推論が誤っていたというだけだ(p135)


・反ワクチン派・・よき親でありたいというのが彼らにとっての最大の関心事であり・・「自然」はよくて「人工的」はよくない、というような発想である(p179)


・次のように言ってみるとよい・・「不法移民に対する大量強制送還がどのように遂行されているのかについて、私は詳細を良く知らないのです。利点もあれば難点もあるとは思うのですが・・誰がそのコストを負担しているのですか?(p71)


・例:もともとキリスト教徒だったが、聖書が奴隷制度を容認していたことを知り、信仰を捨てた人々がいる・・「出エジプト記」が父親に娘を奴隷として売り渡す方法を教示していることに気づくまではそうだった(p143)


▼引用は、この本からです
「話が通じない相手と話をする方法―哲学者が教える不可能を可能にする対話術」ピーター・ボゴジアン
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ピーター・ボゴジアン, ジェームズ・リンゼイ (著)、晶文社


【私の評価】★★★★★(93点)


目次


第1章 会話が不可能に思えるとき
第2章 入門:よい会話のための7つの基礎
第3章 初級:人の考えを変えるための9つの方法
第4章 中級:介入スキルを向上させる7つの方法
第5章 上級:揉める会話のための5つのスキル
第6章 超上級:心を閉ざした人と対話するための6つのスキル
第7章 達人:イデオローグと会話するための2つの鍵
第8章 結論


著者経歴


ピーター・ボゴジアン(Peter Boghossian)・・・1966年生まれ。アメリカ合衆国出身の哲学者。主たる関心は、批判的思考や道徳的推論の教育に関する理論とその実践。ソクラテス式問答法を活用した囚人教育プログラムの研究によってポートランド州立大学から博士号を取得し、2021年まで同大学哲学科で教員を務めた。意見を異にする人びとが 互いの信念や意見の根拠について理性的に話し合うためのテクニックである「路上の認識論」(Street Epistemology)を提唱。


ジェームズ・リンゼイ(James Lindsay)・・・1979年生まれ。アメリカ合衆国出身の文筆家、批評家。テネシー大学ノックスビル校で数学の博士号を取得。宗教やポストモダン思想の問題を分析・考察する論考を多数発表している。


対話術関連書籍


「話が通じない相手と話をする方法―哲学者が教える不可能を可能にする対話術」ピーター・ボゴジアン
「頭のいい人が話す前に考えていること」安達裕哉
「否定しない習慣」林 健太郎


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