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【書評】「「味の素」の最強ブランディング  ファンの心をつかんで離さない知財戦略」 勝沼 依久

2026/09/02公開 更新
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「「味の素」の最強ブランディング  ファンの心をつかんで離さない知財戦略」 勝沼 依久


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー


ブランドを守る知財戦略

味の素株式会社の元知的財産部長が、味の素のブランド戦略と、それを支える知財戦略について解説した一冊です。


知財といえば、まず思い浮かぶのがブランドのライセンス契約でしょう。味の素は「クノール」ブランドについて、ユニリーバ社からライセンスを受けています。


ライセンス契約で恐ろしいのは、自社で長年育ててきたブランドが、契約終了となって使えなくなる可能性があることです。著者は、ライセンス契約では「守れない約束をしない」「不明確な契約条項を残さない」ことが重要だと指摘しています。


また、外国企業から「味の素が開発した配合を報告してほしい」と要求された際には、その場から「退席」し、毅然とした姿勢を示した事例を紹介しています。こうしたエピソードから、味の素がブランドだけでなく、その裏側にある技術やノウハウまで含めて知財を守ろうとしていることがわかります。


新幹線の技術を流出させた会社と比べると、「何を守るのか」を組織として明確にしているように感じました。


不明確な契約条項は・・・大きなリスク・・・ライセンス期間は永久とするが、一方の当事者が希望すれば、相手方は誠実に協議する(p254)

現地に合わせるグローバル戦略

味の素は、売上高1.5兆円の世界各国で事業展開するグローバル企業です。著者自身も南米ペルーに駐在し、味の素商品の偽物対策に奔走しています。


著者が強調しているのは、世界中で同じ商品を売るのではなく、その国の料理や食文化に合わせて商品を変えていることです。風味調味料では、現地の料理に合わせてエキスなどの風味を変え、国ごとにブランド名まで変えて、それぞれの市場に適した商品として展開しているという。


また、「味の素」の製造原料も国によって異なります。ブラジルやペルーではサトウキビの糖蜜を使い、タピオカ(キャッサバ芋)やビーツ(サトウダイコン)を原料にしている国もあります。


つまり、ブランドの核となる価値は守りながら、商品や売り方は現地の文化や市場に合わせて変えていくことが、味の素のグローバル戦略なのです。


海外において「値上げは顧客の期待に背くこと」という論調は決して強くありません・・ネスレやユニリーバのようなグローバル大手企業は、とにかくチャレンジし、価格改定の判断を速やかに行います(p205)

国内市場の流通とサプライヤー

国内市場で印象に残ったのは、味の素が流通やサプライヤーを単なる取引先ではなく、「ブランドの共創者」と考えていることです。


流通企業とは販売データを共有し、店舗側に棚割りの提案を行っています。その提案は、店舗全体の売り場を活性化する提案として信頼され、店舗側から棚割りの相談を受けることもあるというのです。


例えば、あるスーパーマーケットで鮭の売上が伸び始めたというデータがあれば、「鮭鍋に合う鍋用スープ」「タルタルソース」「鮭料理のレシピ」などを近くに陳列する。自社商品を売ることだけを考えるのではなく、「売り場全体をどう活性化するか」を考えているのです。


サプライヤーとの関係も同様に、両者が長期に利益を出せるように配慮しています。


例えば、リーマンショック後に円高が急速に進み、海外から輸入したほうが国内調達より安くなったときも、味の素は長年取引してきた国内サプライヤーとの関係を「終わらせない」という方針を貫いたといいます。


こうした流通やサプライヤーとの良好な関係も、味の素のブランドを支えているのでしょう。


クノール・・日本人の味覚に合わせてレシピを調整した・・・スーパーマーケットとの緊密な連携(p160)

ブランドは「信頼」の積み重ね

「味の素」といえば、私は冷凍食品の「ギョーザ」をひっくり返すと、きれいにフライパンから剥がれるテレビCMが頭に浮かびます。しかし、この本を読むと、「味の素」は海外展開する食品メーカーであり、知財、流通、調達まで含めて信頼を積み重ねてきたグローバル企業なのだと思いました。


また、日本で最初に公共施設のネーミングライツを導入したのが、2003年から東京都調布市の「味の素スタジアム」だったということも初めて知りました。ブランドとは売る力であり、それを知財で守り、流通やサプライヤーとともに長期間にわたって信頼を積み重ねていくものなのです。


一般的なブランディングの話と知財の話が多く、やや焦点がぼやけたように感じましたので★3としました。勝沼さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・「ピュアセレクト」・・・「素材にこだわる」という味の素マヨネーズに対する方針を詰め込んでいます(p39)


・「ほんだし」・・・顆粒化技術を磨き、使い勝手の良さを加えることで、支持を広げました(p120)


・「味の素」の普通名称化を防ぐ・・・かつては、「味の素」を「うま味調味料の一般的な呼称である」といったように説明する国語辞典も、存在していました(p235)


▼引用は、この本からです
「「味の素」の最強ブランディング  ファンの心をつかんで離さない知財戦略」 勝沼 依久
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勝沼 依久 (著)、朝日新聞出版


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次


プロローグ 最強のブランディングとは何か
第1章 ブランド化でめざす姿 ── 業界トップでなくてもブランドは築ける
第2章 ブランドの核 ── 〝違い〞を創出する「選んでもらう理由」
第3章 ブランドの共創者たち ── 「流通」「調達」との協働が消費者からの信頼を生む
第4章 ブランド維持の仕組み ── ブランドは「信頼継続」「困りごと解決」の連続
エピローグ 新たなブランド価値をどう創出するか ── 持続可能な事業を考える


著者経歴


勝沼 依久(かつぬま よりひさ)・・・株式会社RODEO DIVERS代表取締役。知財設計コンサルタント。ニューヨーク州弁護士。一橋大学卒業。味の素株式会社に入社、法務部門に配属。「クノール」事業の合弁契約を担当。その後、新興国・南米ペルーに駐在。帰国後は知的財産部門で技術開発に関連する契約の立案、審査を担当。知的財産部長。2024年に味の素株式会社を退職し、2025年より現職。


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