【書評】「学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか」広田照幸
2026/02/23公開 更新
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【私の評価】★★☆☆☆(62点)
要約と感想レビュー
道徳教育は偏っているのか
前半は教育について一般論を論じているように見えましたが、後半は学校での道徳教育に反対を主張している一冊でした。どうやら、最初から著者は道徳の教科書「私たちの道徳 中学校」に文句を言いたいだけだったようです。
まず、「私たちの道徳 中学校」の内容は、社会のきまりや法律を守ること、公正で公平に接すること、社会や地域に貢献すること、国や郷土を愛し集団の一員として協力し合うことなどです。
著者は、この内容が「すでにできあがっている社会に参加していく」「社会に順応ななさい」というスタンスであり、偏っていると主張しています。
著者が主張する偏らない「道徳」は、権威に服従せず、悪を退け、もっとよりよい社会を作ることを教えるべきだというのです。「善人をつくる教育」だけを行っていれば、リベラルな「善い世界」は実現できないとまで著者は言うのです。
これは、リベラルを主張しながら、実は社会革命を目指す共産主義、権威を監視するという建前から偏向報道するマスコミのような主張に見えるのですが、どうなのでしょうか?
「私たちの道徳 中学校」が偏っていると思う点は、その社会像が「すでにできあがっている社会に新しい世代が加わっていく」という像である点です(p134)
道徳教育は日本人の常識
さらに著者の主張を分析していきましょう。
まず、道徳教育は内容の「偏向」よりも「画一化」の方こそ警戒すべきと著者は主張しています。つまり、道徳教育は「偏向」しており、国が道徳教育を「画一的」に教えるのが問題だというのです。なぜ「画一化」が問題なのかといえば、現在のリベラル社会では多様性が重要だからだというのです。
この主張はもっともらしいのですが、明確な間違いが二つあります。一つは道徳教育の内容は「偏向」していません。道徳教育を逆にすると、法律を守らないこと、公平に接しないこと、社会に貢献しないこと、国を愛さないこととなり、テロ組織のようなものになってしまいます。
道徳教育は日本人にとっての常識であり、著者が主張するような有害な古びた道徳論ではないのです。
道徳教育は、「有害な教育」になりやすい。「わしが考える道徳を学校で教えさせたい」という政治家の古びた道徳論なんかを目にすると、「おかしな道徳教育をやるぐらいなら、何もしない方がまし」と思ったりもします(p117)
相手はダメだが自分はいいは論理ではない
二つ目の間違いは、「画一的」に教えるのが問題だとすれば、従来の「偏向」した共産主義的な教育内容を日教組が画一的に教えようとしたことも問題だからです。
著者は、国が教育を使って徹底した思想教育を押しつけようとしていると主張しています。しかし、そもそも日本の左翼思想に染まった教師が、自衛隊は軍国主義の象徴で悪であるとか、国旗・国歌のボイコットを画一的に押しつけてきたのではないかという疑問です。
著者は、共感の範囲が狭いと、人はその範囲の外側に「敵」や「よそ者」をさがしてしまいがちです。それは、最も不道徳ななずの戦争や差別やテロを呼び込んでしまいます」と書いていますが、道徳の教科書への態度からわかるように、共感の範囲が狭いのは著者自身なのです。
敵はダメだが、自分はいいのだというのは、議論ではなく単なる論点ずらしと言えるのでしょう。
日本もリベラルな社会ですから、相互にせめぎ合っている多元的な価値の多様性を尊重しなければなりません・・・国が一律の道徳的な中身を定めて学校で教えさせるというやり方は果たして妥当なのか、その中身に問題はないのか(p123)
学校は権威への服従を重視しているのか
著者は本を読んだり情報を集めたりして、環境問題や貧困問題などまともな見解がどういうものかは、理解できるようになったと書いています。これも自分が正しいことを前提としており、多様性といいながら共感性が低いといえます。
さらに日本の学校は権威への服従や一律の集団行動などを重視しており、道徳教育をやっていたら、グレタさんは生まれないと主張しているのです。私に言わせれば、道徳教育をしても、日教組のような左翼活動家は生まれてきたし、今後も生まれると思います。
著者は、「自国の権益を守りたいからと、他国への高圧的な態度や好戦的な主張をするような人たち」や「「◯◯は反日だ!」とわめいている」などと記載しており、自分が反日の左翼の活動家と認識しているのではないかと感じました。
大学教授でありながら、論理的な主張が少なかったことが残念です。広田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・学校があることによって、勉強ができて高い教育を受ける子どもは、給料が多いとか、大きい権力を持つなど、社会の中の高いポジションに就いていきます・・・十分な教育を受けられなかった子どもたちは、いいチャンスから締め出されます。低賃金な所、危険な仕事へ行きます(p79)
・最左派の人たちのなかには、「道徳教育はいらない」という人もいます(p124)
・今の学校教育は「道徳教育の教科化」とかが進められてきたにもかかわらず、子どもたちが「善き世界の倫理」について考え、判断能力を磨く機会が欠落しているわけです(p132)
・集団に流されがちな日本の社会・・少し前には日本の国民がみんなで体制に同調して、あの無謀な戦争に突っ走っていったのでした(p142)
・「勝てば官軍」・・・「出る杭は打たれる」とか、「長いものには巻かれろ」・・・官僚が政治家におもねった事件で、「忖度」という語もはやりましたね(p143)
▼引用は、この本からです

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【私の評価】★★☆☆☆(62点)
目次
第1章 教育と社会化
第2章 学校の目的と機能
第3章 知識と経験
第4章 善人の道徳と善い世界の道徳
第5章 平等と卓越
第6章 人間とAI
第7章 身の回りの世界とグローバルな世界
著者経歴
広田照幸(ひろた てるゆき)・・・1959年生まれ。現在、日本大学文理学部教育学科教授。研究領域は、近現代の教育を広く社会科学的な視点から考察する教育社会学。1997年、『陸軍将校の教育社会史』(ちくま学芸文庫)で第19回サントリー学芸賞受賞
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