「科学的論理思考のレッスン」高木敏行, 荒川 哲
2022/07/17公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(69点)
要約と感想レビュー
仮説思考
世の中ではデータに基づかない議論を見ることがありますが、データに基づく議論こそが、真実に近づくことだと思います。この本では科学的論理思考を説明してくれます。
まずは、仮説思考でしょう。この本ではアブダクション(仮説形成法、仮説推論)として説明しています。コンサルタントがよく使う方法です。仮説ですので本当に正しいのか、正確性は低いのですが、驚くべき結論を短時間に見つけ出す可能性を持っている方法なのです。
データ科学推論
2つ目はデータ科学推論です。コンピューター、デジタル技術の発達によりビッグデータから推論する方法です。特に新型コロナウイルスへの対応では、感染者数の分析で使われています。ワクチンのリスクとメリットの分析にも使われている考え方です。
特にうれしいのは「ベイス推定」をPCR検査を例として説明してくれているところでしょう。例えばPCR検査の精度が70%だとすると、陽性者の中の本当の陽性者はたったの40%ということもあるのです。これは陽性者でも陰性となってしまう人が非常に多いからです。PCR検査が意味がないと主張する人の根拠は、ここにあるのです。
ベイズ推定を用いたPCR検査の評価・・・特異度が高いことも重要です。そうでないと、陽性と判断されたものに誤りの検査が多く含まれることになります(p161)
統計の知識が不可欠
データ分析のためには統計の知識が不可欠だと感じました。統計分析の考え方をビッグデータと組み合わせることで、見えないことが見えるようになることがあるとわかりました。
データに基づく議論と考え方を学ぶために大切な本だと思いました。高木さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・値に影響を与える要因が明確にある場合は、それを分離してヒストグラムを作成しないと、状況を正しく把握することはでできません(p125)
・マンモグラフィでの利益リスク分析・・・乳がん検診における必要条件は検診によって生ずる利益が検診マンモグラフィのリスクを上回ることである(p165)
・一定時間内にランダムなイベントが何回起こるかを示す分布をポアソン分布といいます・・・誤差は・・相対標準偏差(p173)
【私の評価】★★☆☆☆(69点)
目次
1 論理の基礎
2 基本の推論
3 統計学的論理思考の基礎とツール
著者経歴
高木敏行(たかぎ としゆき)・・・1954年生。愛知県立旭丘高校、東京大学工学部原子力工学科卒、同大学院工学系研究科原子力工学専攻博士課程修了(工学博士)。日立製作所エネルギー研究所研究員、東京大学助教授 工学部原子力工学研究施設、東北大学助教授 流体科学研究所を経て、1998年東北大学教授 流体科学研究所。2020年より東北大学名誉教授。東北大学研究推進・支援機構知の創出センター特任教授、副センター長。
荒川 哲(あらかわ さとし)・・・1954年生。愛知県立旭丘高校、東京工業大学理学部応用物理学科卒、同大学院総合理工学研究科物理情報工学専攻修士課程修了(工学修士)。富士フイルム宮台研究開発センター研究員として、世界初の実用デジタルX 線システムの研究・開発、関連特許約200件出願。2001年には同研究部長としてX 線医用機器の研究・開発、2007年Fuji Film Europe GmbH Vice Presidentとして、主にデジタルマンモグラフィーに関して欧州各国の医師、医用物理士と共同研究。2013年- 2019年、国際医療福祉大学准教授 保健医療学部放射線・情報科学科(放射線物理学、画像情報学担当)。
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