「コミュニティ・オーガナイジング―ほしい未来をみんなで創る5つのステップ」鎌田華乃子
2022/03/09公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
「コミュニティ・オーガナイジング」とは仲間を集め、その輪を広げ、多くの人が行動することで社会変化を起こすことです。例えば、ウクライナへのロシア侵攻に反対するデモや女性の地位向上運動もそうですし、極端に考えれば社会の転覆を狙う人も活用している手法かもしれません。この本では、環境コンサルタントとなった著者が、社会運動に興味を持ち、アメリカのハーバード大学ケネディスクールのマーシャル・ガンツ先生に学んだことを教えてもらいます。
まず最初に行なうのは、同志を作ることです。一人でできることは限られます。まず最初に4人くらい自分に賛同してくれて、手伝ってくれる人を探すのです。これを雪の結晶(スノーフレークリーダーシップ)を表現しています。そして私のストーリー(想い)を伝えていくのです。それは、困難→選択→結果(希望)という構成となったストーリーであり、今、行動する理由を感じてもらうものでなくてはなりません。
・一人で頑張るのでもなく、バラバラでもなく、つながりを徐々に広げていくスノーフレークリーダーシップ(p68)
最初は数人から10人程度のチームを作り、それを繰り返して、大きくしていくことが有効でしょう。組織化していく中では、共有できる目的があって、メンバーとなる条件があって、人それぞれの特性に合わせて役割を決めていきます。
さらに、強いチームを作るためには、強い関係を作らなくてはなりません。それは一対一で話をすること。そして、相手の価値観、関心がどこにあるのか知ること。そして相互に価値観を共有できて、一緒に関心を持てることを探すことで関係は強くなっていくのです。ただ、こうしたコミュニティ活動は必ずしも成功するわけではありません。著者がアメリカで学んだのは、仮に失敗したとしても、コミュニティ作りは、人々の間につながりを生み、次の活動の基礎になるということです。
・探りながら、二人がやりたいこと(共通の関心)を見つけていく・・・たとえば『秘密基地を一緒に作る』みたいにね(p114)
この本を読んでいて倫理法人会にしろ、読書普及協会にしろ、この本の内容とほぼ同じ取り組みをしていると感じました。小さい核となるメンバーを作って、そこから一定規模のチームを作る。そして、それを繰り返していくのです。「コミュニティ・オーガナイジング」は使い方を間違えば悪いことにも活用できますが、あくまでも手法であり、誰もが学ぶべきものだと感じました。私個人としては読書会のコミュニティ作りに活用していきたいと思います。
コミュニティづくりを大学で教えているということ自体素晴らしいことですが、こうして日本でも学べるのはありがたいことです。鎌田さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・強いチームをつくる・・・参加する条件、チームを辞めなければならない人の条件が明確・・・定期的に会う・・多様性に富んでいること(p129)
・入るための決まりを作っておく・・・新しいメンバーは基礎から練習できるようにチーム分けされるけど、同じくらいプレイできるようになったら経験者と一緒に練習・・(p126)
・役割を決める・・・「仕事をふる」のと「役割をふる」のは違います(p142)
・アクションをしたあとには必ず振り返りをする(p100)
・意見を言うように事前に言っておく(p217)
・日本では官僚が法案を作り、パブリックコメントは募集するものの法案の解説はほとんどなく、ただコメントを型どおり募集するのみです・・・審議会のメンバーは・・言いたいことを言うだけです・・・どのような方向で法案をまとめるか予め決まっている(p27)
【私の評価】★★★★☆(88点)
目次
序章「仕方がない」から「仕方がある」へ
(PART1 METHOD 変革の起こし方)
第1章 コミュニティ・オーガナイジングとは何か
第2章 パブリックナラティブ――ストーリーを語り、勇気を育む
第3章 関係構築――価値観でつながる
第4章 チーム構築――三つの成果、三つの条件、三つの決めごと
第5章 戦略作り――みんなの資源をパワーに変える
第6章 アクション――リーダーシップを育てる
(PART2 CASE 実践!コミュニティ・オーガナイジング)
第7章 人々の力を引き出す
第8章 身近なことから変化を起こす
第9章 政治を動かし、法を変える
著者経歴
鎌田華乃子(かまた かのこ)・・・特定非営利活動法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン理事/共同創設者。神奈川県横浜市生まれ。11年間の会社員生活の中で人々の生活を良くするためには市民社会が重要であることを痛感しハーバード大学ケネディスクールに留学しMaster in Public Administration(行政学修士)のプログラムを修了。卒業後ニューヨークにあるコミュニティ・オーガナイジング(CO)を実践する地域組織の現場で学んだ後、2013年9月に帰国。特定非営利活動法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)を2014年1月に仲間達と立ち上げ、ワークショップやコーチングを通じて、COの実践を広める活動を全国で行っている。ジェンダー・性暴力防止の運動にも携わる。現在ピッツバーグ大学社会学部博士課程にて社会運動に人々がなぜ参加しないのか、何が参加を促すか研究を行っている。
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